スチュアート・ホームズ反跳現象の詳細

はじめに

スチュアート・ホームズ反跳現象(Stewart – Holmes rebound phenomenon)について詳しく解説します。

スチュアート・ホームズ反跳現象とは

スチュアート・ホームズ反跳現象は,筋緊張の異常と関連した現象で,協調運動障害(失調症)の検査として利用されます。

等尺性の抵抗運動において抵抗が突然なくなった時の反応です。

肘関節屈曲に対する抵抗がなくなった時で説明します。
正常であれば,わずかに屈曲してがくんと止まるか,屈曲の後に跳ね返るように少し伸展します。

痙縮があれば,跳ね返る動き(伸展)が過剰になります。

協調運動障害があれば,屈曲が過剰となり,ときに手が自分の胸にあたるまで止まりません。
跳ね返る動きは起こりません。

この過剰な屈曲や跳ね返る動きの消失は,拮抗筋である上腕三頭筋の筋緊張低下によるものと考えられています。

検査方法の詳細

どの関節でも行えますが,普通は肘関節で行います(図 1)

スチュアート・ホームズ反跳現象
図 1: スチュアート・ホームズ反跳現象

肘関節屈曲に抵抗をかけ,できるだけ強く屈曲してもらいます。
被検者の肘はテーブル等で固定します。
抵抗をかける部位は手関節です。

そして,急に抵抗を外します。

抵抗を外すタイミングは被検者には分からないようにします。
ただし,抵抗を外すことは事前に説明しておいたほうがいいと思います。
被検者を驚かすような操作は不信感につながります。

開眼が行うのが普通です。
閉眼の方が異常は出やすいでしょうが,開眼にしても,視覚代償は難しい動きですので,異常が観察できなくなることはないでしょう。

顔面や胸部を強打しないよう,手を添えます。
検者の手で受け止めようとするより,図 1 のようにした方が止めやすいと思います。
原著2)では,自分の口に向かって手を引く動きに抵抗をかけることになっていますが,これではわざわざ危険な方法を選ぶことになります。
肩関節の角度や抵抗の方向を調節すれば,顔にはあたりにくくなります。

別の関節で行えばより安全です。
例えば,肩関節屈曲に抵抗をかけるという方法がありえます。
肘の屈曲ではなく,伸展に抵抗をかけるという方法もあります。

後ろにのけぞって転倒するリスクがあります。
背もたれのある椅子で行います。
立位だと,転倒のリスクはかなり高まります。

肘関節に痛みなどの問題がある場合は,この検査は行えません。

この検査を連続して行うと,特に痛みがある場合に,随意的な努力で屈曲を止められるようになることがあります。

上腕三頭筋の触診ができれば,より多くの情報を得ることができますが,検者の両手はふさがっていますので,触診はできません。
検者が二人であれば,触診ができます。

判定

屈曲が過剰であれば,スチュアート・ホームズ徴候陽性とします。

理学療法ならではの意義

抵抗が急になくなった時のバランスの制御ができなければ,日常生活での転倒のリスクが高くなります。
例えば,靴を履くときに,靴を引っ張っていた指が外れて,後ろに転倒するというようなことが起こります。
スチュアート・ホームズ反跳現象によって転倒リスクを評価することができます。

転倒リスクの評価につなげるためには,体幹の動きを評価します。
図 1 のように被検者の肩に触れていれば,体幹の動きを手で感じることができます。

関連のある検査

以下の 2 つの操作は,スチュアート・ホームズ反跳現象と同じ意味があります。

1)被検者の肘を他動的にランダムに動かし,途中で放り投げるように手を離します。
正常であればすぐに止まりますが,協調運動障害ではすぐに止まりません。
乱暴な印象を与える操作ですので,十分な説明のうえで行う必要があります。

2)肘関節の屈伸を自動でできるだけ速く反復してもらいます。
協調運動障害では,運動方向を変えるときに拮抗筋の収縮で運動を止めることができず,可動範囲の最終域で止まるまで勢いよく動いてしまいます。
最終域で強制的に止まることになりますので,痛みが生じることもあります。

名称について

スチュアート・ホームズ反跳現象あるいは Stewart – Holmes 試験といった呼び方は多くの文献3-6)で使われています。

ホームズ・スチュアート現象 Holmes – Stewart phenomenon と逆にする場合もあります7,8)

スチュアートとホームズは二人の医師の名前です。
原著2)では rebound phenomenon と呼んでいて,自身の名前をつけていません。
日本語だと跳ね返り試験9)と呼びます。

Wikipedia では,Holmes rebound phenomenon となっていて,検査名に Stewart が入っていません。
Stewart と Holmes の共著の論文1)では,この現象に名前がついておらず,後の Holmes 一人での論文2)で rebound phenomenon と呼ぶようになっていますので,Holmes が主になるのかもしれません。

他に,The arm-pulling test10)や,抵抗検査11)という呼び方もあります。

「rebound phenomenon」は,狭い意味では,抵抗をかけた運動とは逆方向の運動のことで,肘関節屈曲への抵抗を外した後の肘関節伸展のことです。
協調運動障害の場合はこの rebound phenomenon が起こらず,痙縮であれば過剰になります。
そして,rebound phenomenon が過剰になったり消失したりすることも rebound phenomenon と呼びます。
広い意味での rebound phenomenon といえます。
文献を読む際には,どちらの意味で使われているのかに気をつける必要があります。

おわりに

原著論文はスチュアートの死後に発表されたようなのですが,確証は得られませんでした。
臨床的にはどうでもいいことですが,スチュアートとホームズのどちらを前に出すのかということとも関連して,興味深い物語があるのかもしれません。

協調運動障害の検査における理学療法士ならではの考え方については,鼻指鼻試験についての記事で書いています。

参考文献

1)Stewart TG, Holmes G: Symptomatology of cerebellar tumours; a study of forty cases. Brain. 1904; 27: 522-549. https://doi.org/10.1093/brain/27.4.522
2)Holmes G: The symptoms of acute cerebellar injuries due to gunshot injuries. Brain. 1917; 40: 461-535. https://doi.org/10.1093/brain/40.4.461
3)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた改訂17版. 南山堂, 2014, pp143-158.
4)岩田誠: 神経症候学を学ぶ人のために. 医学書院, 2004, pp200-201.
5)小嶺幸弘: 神経診察ビジュアルテキスト. 医学書院, 2005, pp168-180.
6)鈴木則宏(編): 神経診療クローズアップ. メジカルビュー社, 2011, pp162-171.
7)日本脳神経外科学会用語委員会(編): 脳神経外科学用語集(改訂第 3 版). 米子プリント社, 2016.
8)上田敏, 大川弥生(編): リハビリテーション医学大辞典. 医歯薬出版, 2002, pp560.
9)内山靖: 協調運動障害, 理学療法ハンドブック改訂第4版第1巻. 細田多穂, 柳澤健(編), 協同医書出版社, 2010, pp605-635.
10)Biller J, Gruener G, et al.: DeMyer’s The Neurologic Examination: A Programmed Text(7th edition). McGraw-Hill, 2017.
11)鈴木俊明(監修): 臨床理学療法評価法-臨床で即役に立つ理学療法評価法のすべて. エンタプライズ, 2005, pp252-263.

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