手回内回外試験:検査方法の詳細

はじめに

手回内回外試験のやり方について詳しく解説します。

手回内回外試験とは

手回内回外試験は協調運動障害(失調症)の検査です。

前腕の回内・回外を反復させ,上肢の動きを観察します。

検査方法の詳細

姿勢・肢位

背臥位,座位,立位と様々な姿勢で行うことができます。
肘関節は屈曲位でも伸展位でも行えます。

座位,肘関節屈曲位で行うことが多いようです。

不安定な姿勢では,運動課題としての難易度が上がり,異常が出やすくなります。

肘関節屈曲位では前腕のみの動きになりますが,肘関節伸展位にすると肩関節の動きが加わります。

肘関節屈曲位で前腕のみを動かす時でも,肩関節は固定しておく必要があります。
肩関節の固定を他動的に行えば,運動課題としてはより簡単になります。
座位でテーブル等に肘をついたり,背臥位で肩関節は屈曲せずベッドに肘をつけておけば,他動的に固定されます。

開閉眼

閉眼で行うのが一般的です。

開眼と閉眼で比較すれば,視覚代償を評価することができます。
閉眼で行う場合は,転倒に注意します。

運動範囲

最大可動範囲での回内外なのかどうかについて書いている文献は見つかりませんでした。

文献 2)に以下のような図がありますが,矢印の示す範囲から推測すると,全可動範囲での動きではなさそうです。

手回内回外試験
図 1: 手回内回外試験。右手は正常,左手は運動範囲がばらばら。文献 2)より。

おそらく決まりはないのでしょう。
理学療法士がこの検査を行う場合は,様々な可動範囲で動きを較べればいいと思います。

運動の速さ

できるだけ速く動かしてもらうのが一般的です。

これも,速度を変えて変化をみれば,様々な分析を行うことができます。

一側または両側

一側ずつ行うのか,あるいは両側同時に行うのかは,明確な決まりはなさそうです。

一側ずつ行う場合と,両側同時に行う場合で較べればいいと思います。

両側同時に行った方が異常な動きは出やすい傾向があり,軽度の障害を見つけやすくなります。

両側同時に行うと,左右差も検出しやすくなります。
ただし,正常でも左右差があり,利き手の方が速く動かせる傾向がありますので,判定の際には注意が必要です。

回数

決まりはありません。

経験的には,10 回くらいは行わないと,軽度の障害を見落としやすくなりそうです。

時間を決めて行えば,速さを求めることができます。

観察のポイント

反復拮抗運動不能を主に観察します。

速さ,運動範囲,規則性,運動方向変換のスムーズさなどを観察します。
また,肩関節の固定ができるのかも観察します。

協調運動障害があれば,速く動かせなくなったり,運動範囲がばらついたり,回内外の変換時に止まってしまったりします。
また,肩関節を固定できず,肘の動揺が生じることもあります。

関連のある検査

膝打ち試験は,被検者の膝を手掌および手背で交互に素早く叩く検査です。
回内外を反復するところは同じです。
手回内回外試験よりも膝打ち試験の方が難しいという印象はありますが,ちゃんとしたデータはありません。

一方の手掌を上に向け,他方の手掌と手背で交互に叩くという検査があります。
文献 1)では,手回内回外試験のところに別の方法として載っていますが,膝打ち試験に近い検査です。

手回内回外試験が陽性となる別の病態

運動麻痺でも回内外の反復は難しくなります。
反復拮抗運動不能の場合,回内外そのものは,反復しなければ,比較的スムーズにできます。
運動麻痺では,どちらかというと,回内外そのものが困難になります。 

パーキンソン病でも回内外の反復は難しくなります9-10)
MDS-UPDRS11) に回内外の検査が含まれています。
遅くなったり,振幅が小さくなったり,途中で止まったりします。

名前の違い

名前の違いは臨床的には重要ではありませんが,検索して調べたい時には重要です。

手回内回外試験3)ではなく,手回内・回外検査1)と表記する場合があります。
「・」が入っていて,試験ではなく検査になっています。

前腕回内・回外試験4,8)とも呼びます。
回内外は手ではなく前腕の運動ですので,前腕とする方がいいような気がします。

回内回外試験としている文献5,6)もあります。

国家試験では別の呼び名が出てきます。

理学療法士国家試験

第 56 回理学療法士国家試験 午後 問題 29

反復拮抗運動障害の検査法はどれか。

1.線引き試験
2.継ぎ足歩行
3.片足立ち検査
4.示指 – 耳朶試験
5.前腕回内外試験

正解 5

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おわりに

動きの説明として「きらきら星の仕草」というのがありますが,「パトカーのサイレンの仕草」というのが意外に通じます。
フランス語圏では「マリオネットの仕草3)」と説明するそうです。

判定の仕方や理学療法士ならではの考え方については,鼻指鼻試験についての記事で書いています。

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参考文献

1)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた改訂17版. 南山堂, 2014, pp143-158.
2)Biller J, Gruener G, et al.: DeMyer’s The Neurologic Examination: A Programmed Text(7th edition). McGraw-Hill, 2017, pp426.
3)岩田誠: 神経症候学を学ぶ人のために. 医学書院, 2004, pp200-201.
4)森岡周: 運動失調, 標準理学療法学 専門分野 神経理学療法学. 吉尾雅春, 森岡周(編), 医学書院, 2015, pp110-123.
5)内山靖: 協調運動障害, 理学療法ハンドブック改訂第4版第1巻. 細田多穂, 柳澤健(編), 協同医書出版社, 2010, pp605-635.
6)小嶺幸弘: 神経診察ビジュアルテキスト. 医学書院, 2005, pp168-180.
7)鈴木則宏(編): 神経診療クローズアップ. メジカルビュー社, 2011, pp162-171.
8)鈴木俊明(監修): 臨床理学療法評価法-臨床で即役に立つ理学療法評価法のすべて. エンタプライズ, 2005, pp252-263.
9)野口眞志: Parkinson病における随意運動障害に関する研究-とくに上肢反復変換運動のフーリエスペクトル解析による経時的周波数分析. 久留米医学会雑誌. 1988; 51: 820-831.
10)永瀬章博: Parkinson病の臨床的研究-とくに振戦の定量的測定法および反復変換運動試験の臨床応用について. 久留米医学会雑誌. 1984; 47: 311-326.
11)MDS-UPDRS(2021年4月2日)

2021年7月14日
2021年4月2日

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