はじめに
踵膝試験のやり方について詳しく解説します。
踵膝試験とは
踵膝試験は協調運動障害(失調症)の検査です。
検査する下肢を挙上し,踵を他方の膝に当て,その踵を脛の上で足関節まで滑らせ,元の位置に戻す,という 4 動作を反復させ,下肢の動きを観察する検査です(図 1)。
バリエーション
踵膝試験を英語にすると,Heel-Knee Test と Heel-Shin Test の 2 つがあります。
Heel-Knee Test1) は,踵を膝につける動きを反復させます(図 2)。
Heel-Shin Test1) は,最初に説明した 4 動作です(図 1)。
最初の下肢挙上がない 3 動作の反復としている文献2,3)もあります(図 3)。
あるいは,踵を脛の上で滑らせる1,5)のを反復させることもあります(図 4)。
日本語ではどれも踵膝試験と呼ばれていますが,Heel-Shin Test を踵脛試験と呼ぶ6)こともあります。
使い分けについての決まりはありません。
動作分析を行うという観点では,必要に応じて使い分けることになります。
4 動作の反復は,その動作を覚えづらいという欠点があります。
その点では,踵を脛の上で滑らせる動作を反復させる方法にすれば簡単です。
検査方法の詳細
姿勢
背臥位で行うのが一般的です。
座位で行うこともできます。
座位では,背もたれの有無や上肢支持の有無によって,座位を不安定にして難易度を上げることができます。
開閉眼
閉眼で行うとしている文献1)もありますが,開眼と閉眼で比較すれば,視覚代償を評価することができます。
開眼で行うときは,下肢がよく見えるような配慮が必要です。
反復回数
反復回数に決まりはありません。
被検者の負担に配慮しながら,必要な情報が得られるまで行うことになります。
3 回 ~ 5 回くらいは行うことが多いと思います。
この検査の動作に慣れていないと,正常であってもぎこちない動きになることがあります。
その場合は,慣れるためにより多く反復させます。
観察のポイント
測定異常,運動分解,振戦を観察します。
脛の上を滑らせる動きを反復させる場合のように,2 動作の反復であれば,反復拮抗運動不能を観察できます。
観察するポイントは,下肢をあげる高さは一定であるか,踵を膝につけることができるか,脛の上をまっすぐ同じ速さで滑らせることができるか,ベッド上に足を静かに下ろすことができるか,運動方向の切り替えはスムーズか,といったところです。
下肢だけでなく骨盤も同時に観察するといいでしょう。
リスク管理
協調運動障害が重度であれば,下肢の運動の勢いを制御できず,ベッドから転落するかもしれません。
狭いベッドは避けた方が無難です。
足をベッドに叩きつけてしまうこともありますので,適度なクッションが必要です。
腰部に負担がかかることもありますので,腰部の評価を事前に行う必要があります。
踵膝試験の読み方
「かかとひざしけん」と読みます7,8)。
「しょうしつしけん」と読むこともあるようですが,一般的ではありません。
誤りであるのかどうかは分かりませんでした。
おわりに
判定の仕方や理学療法士ならではの考え方は,鼻指鼻試験についての記事で書いています。
その他の協調運動障害の検査については以下の記事でまとめています。
スポンサーリンク参考文献
1)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた(改訂18版). 南山堂, 2020, pp141-156.
2)岩田誠: 神経症候学を学ぶ人のために. 医学書院, 2004, pp258-261.
3)内山靖: 協調運動障害, 理学療法ハンドブック改訂第4版第1巻. 細田多穂, 柳澤健(編), 協同医書出版社, 2010, pp605-635.
4)鈴木俊明(監修): 臨床理学療法評価法-臨床で即役に立つ理学療法評価法のすべて. エンタプライズ, 2005, pp252-263.
5)鈴木則宏(編): 神経診療クローズアップ. メジカルビュー社, 2011, pp162-171.
6)小嶺幸弘: 神経診察ビジュアルテキスト. 医学書院, 2005, pp168-180.
7)後藤稠(編): 最新 医学大辞典. 医歯薬出版, 1994, pp192.
8)木下真吾, 木村泰祥, 他: 協調運動異常の観察 2 踵膝試験. BRAIN NURSING. 2014; 30: 53-55.
2021 年 3 月 27 日
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