向こう脛叩打試験:検査方法の詳細

はじめに

向こう脛叩打試験のやり方について詳しく解説します。

向こう脛叩打試験とは

向こう脛叩打試験は協調運動障害(失調症)の検査です。

一側の踵で,反対側の下腿前面を叩く動作を反復させ,下肢の動きを観察します(図 1)。

向こう脛叩打試験
図 1: 向こう脛叩打試験(文献 1 より)

読み方は「むこうずねこうだしけん」です。

別名としては,脛叩き試験4),脛打ち試験5)などがあります。

検査方法の詳細

姿勢

通常は背臥位で行います。

椅子に座って行うこともできますし,長座位でも行えます。
座位では,背もたれなし,上肢支持なしにして,座位を不安定にすれば,難易度を上げることができます。

開閉眼

原著1)には開眼で行うとありますが,開眼でも閉眼でも行えます。
開眼と閉眼で比較すれば,視覚代償を評価することができます。
開眼で行うときは,下肢がよく見えるような姿勢にします。

叩く場所

叩く場所は,下腿前面で,脛骨粗面より 5 cm 〜 8 cm(2 〜 3 インチ)遠位です1)

叩き方,リズム

軽く叩きます。
そして,同じところを,一定のリズムで叩きます。

叩くリズムについては,原著1)では素早くとしか書いてありませんが,別の文献では「できるだけ速く2)」とか,「毎秒 1 〜 2 回3)」などとなっています。
様々なリズムで比較した方がいいと思います。

原著1)では,正常であれば毎秒 2 〜 3 回のリズムで反復できるとなっていますが,実際に行ってみると,毎秒 3 回はかなり難しいように感じます。

踵をあげる高さは,10 cm 〜 13 cm(4 〜 5 インチ)となっています1)
低いと,動作としては簡単になり,症状が出にくくなります7)
これも,高さを変えて比較すればいいと思います。

反復回数

回数は 7 回程度1)となっています。
なぜ 7 回であるのかは,書かれていません。
障害の程度が軽度であれば,ある程度の回数を行わないと異常な動きは出現しません。

検査に不慣れだと,正常であっても動きがぎこちないということがあります。
多めに反復して,慣れてくるのかを観察します。

足関節の角度

足関節は背屈位で固定してもらいます。
その理由については,検査を正確にするため1)としか書かれていません。
足関節を固定するかどうかによって,下肢の動きは変わりますので,比較するためにも統一するということだと思います。
背屈の程度については指定されていませんが,図はほぼ中間位です。
「足を十分に背屈させ」としている文献3)もありますが,その図も中間位です。
背屈位で行うとなると,毎回同じ条件で検査するために,その背屈角度を記録する手間が生じます。
中間位で固定するのがいいかもしれません。

観察のポイント

主に,測定異常と反復拮抗運動不能を観察します。

同じ場所を叩くことができるか?足が上がる高さは同じか?運動方向の切り替えはスムーズか?といったところを観察します。

骨盤,股関節,足関節の固定ができているかも観察します。

左右を比べる場合,正常でも左右差はありますので注意が必要です。

リスク管理

叩く強さをコントロールできず,強く叩きすぎてしまうことがあります。
強く叩きすぎるようならば検査は中止します。

特に,変形性膝関節症がある場合,踵が膝に当たってしまうと強い痛みが出ることがありますし,叩く方の下肢の膝も痛む場合があります。
事前に膝関節を評価しておきます。

関連する検査

膝叩き試験4)は,脛ではなく,膝を叩いてもらいます。
叩く場所が少しずれるだけで,基本的には同じ試験と考えていいでしょう。
膝蓋骨という叩く目標がありますので,被検者にとっては,同じ場所を叩いているという感覚が得られやすいかもしれません。
膝に痛みがある場合は,痛みを増強するかもしれませんので,行わない方がいいでしょう。

被検者の踵の下に検者の手を入れて,検者の手掌を叩いてもらう4)こともできます(検査名はありません)。
叩く強さが一定であるかどうかが分かるという利点があります。

踵膝試験は動きが複雑で覚えられないという欠点がありますが,この向こう脛叩打試験は簡単です。
協調運動障害の有無を調べるだけであれば,どちらも同じようなものですので,踵膝試験ではなく向こう脛叩打試験を行うといいのかもしれません。

おわりに

判定の仕方や理学療法士ならではの考え方については,鼻指鼻試験についての記事で書いています。

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参考文献

1)Fisher CM: An improved test of motor coordination in the lower limbs. Neurology. 1961; 11: 335-6. doi: 10.1212/wnl.11.4.335.
2)Biller J, Gruener G, et al.: DeMyer’s The Neurologic Examination: A Programmed Text(7th edition). McGraw-Hill, 2017, pp429.
3)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた改訂17版. 南山堂, 2014, pp143-158.
4)岩田誠: 神経症候学を学ぶ人のために. 医学書院, 2004, pp258-261.
5)内山靖: 協調運動障害, 理学療法ハンドブック改訂第4版第1巻. 細田多穂, 柳澤健(編), 協同医書出版社, 2010, pp605-635.
6)鈴木俊明(監修): 臨床理学療法評価法-臨床で即役に立つ理学療法評価法のすべて. エンタプライズ, 2005, pp252-263.
7)鈴木則宏(編): 神経診療クローズアップ. メジカルビュー社, 2011, pp162-171.

2021年3月30日

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