はじめに
線引き試験 line drawing test のやり方について詳しく解説します。
線引き試験とは
線引き試験は協調運動障害(失調症)の検査です。
線を引いてもらう検査です。
2 本の平行な縦線の片方から出発して他方に達する線を書いてもらいます。
紙のカルテでも動きの記録を残しやすいという利点があります。
観察のポイント
線引き試験は主に測定異常をみる検査です。
協調運動障害があると,目標の縦線上で止めることができず,行き過ぎてしまいます。
手前で止まることもあります。
手前でいったん止まっても,再び線を引き始めて,最終的に目標の縦線上で止まってしまう場合があります。
その場合,検査用紙に残った線は正常に見えますので,途中で止まったことを別に記録しておく必要があります。
出発する縦線上にペンを乗せるところも観察します。
測定異常や振戦によって縦線上にペンが乗らないことがあります。
線が極端に曲がってしまうこともあります。
これは,振戦や運動分解をみることになります。
線が途切れてしまうのも協調運動障害によるものです。
検査方法の詳細
縦線の間隔は 10 cm とします。
その理由については書かれていません。
書いてもらう線は縦線に直交するような線とします。
左から右に向かって線を引かせる1)とだけ書かれています。
理由は書かれていませんし,左手でも右手でも同じなのかについても書かれていません。
別の文献2)では,線を引く方向についての説明がないのですが,左手と右手で線を引く方向を逆にしています。
逆にするということは,例えば左右ともに内側に向かって線を引くということになり,同じ条件で線を引くことになります。
左右を比べることについても明記はされていません。
もともと線を引くのが苦手で,健側でも縦線を行き過ぎてしまうということもあり得ますので,その場合は左右の比較が必要になります。
線を何本引かせるのかについても記載はありません。
軽症であれば症状が出にくいこともありますし,健常者でも何らかの理由でたまたま協調運動障害があるような線になってしまうこともあります。
3 〜 5 本くらいは書いてもらってもいいと思います。
時間もそれほどかかりませんし,被験者の負担もそれほどありませんので(ただし,うまくいかない動きの反復を負担に感じる方はいらっしゃいます)。
通常は座位で行うと思います。
しかし,座位では症状が出なくても立位だと症状が出るということもありますので,座位と立位で比較するのもありだと思います。
関連のある検査
らせん描き試験2)
らせんを描いてもらったり,あらかじめ描いておいたらせんをなぞってもらう検査です。
線が滑らかであるのかをみます。
書字3)
字の大きさの均一さ,形,偏りなどをみます。
もともと字がキレイではない人もいますので,注意が必要です。
コミュニケーション能力の一つとしての実用性の評価も大切です。
打点検査3)
点を打ちます。
点の打ち方の決まりはありません。
反復拮抗運動不能をみることができます。
おわりに
線引き試験について詳しく書いている文献を見つけられていません。
標準化されているような検査ではないようです。
臨機応変に行えばいいと思います。
判定の仕方や理学療法士ならではの考え方については,鼻指鼻試験についての記事で書いています。
あわせて読みたい
スポンサーリンク参考文献
1)田崎義昭, 斎藤佳雄, 坂井文彦: ベッドサイドの神経の診かた改訂18版. 南山堂, 2020, pp147.
2)岩田誠: 神経症候学を学ぶ人のために. 医学書院, 2004, pp200.
3)内山靖: 協調運動障害, 理学療法ハンドブック改訂第4版第1巻. 細田多穂, 柳澤健(編), 協同医書出版社, 2010, pp620.
4)小嶺幸弘: 神経診察ビジュアルテキスト. 医学書院, 2005, pp174.
5)鈴木俊明(監修): 臨床理学療法評価法-臨床で即役に立つ理学療法評価法のすべて. エンタプライズ, 2005, pp259.
2021 年 7 月 14 日
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