運動学

ランチョ・ロス・アミーゴ方式の歩行周期の定義

投稿日:2019年9月4日 更新日:

ランチョ・ロス・アミーゴ(RLANRC)方式の歩行周期の定義1)をまとめました。
読み手として想定したのは,従来からある歩行周期は知っているけど,新しいものにはまだ馴染んでいないという人です(私がそうです)。
従来からある歩行周期の用語を使った説明を入れています。

用語の一覧

まずは用語を一覧表にしました。
最後の列は略語です。
英語のカタカナ表記がよく使われている印象がありますが,他もよく使われています。
面倒ですが,全て覚える必要があります。

第1相初期接地イニシャルコンタクトinitial contactIC
第2相荷重応答期ローディングレスポンスloading responseLR
第3相立脚中期ミッドスタンスmid stanceMSt
第4相立脚終期ターミナルスタンスterminal stanceTSt
第5相前遊脚期プレスイングpre-swingPSw
第6相遊脚初期イニシャルスイングinitial swingISw
第7相遊脚中期ミッドスイングmid swingMSw
第8相遊脚終期ターミナルスイングterminal swingTSw

歩行の相の定義

「観察による歩行分析1)」にある定義を書き,その後に従来の歩行周期の用語を使った定義や,従来の歩行周期との対応を書いています。

初期接地(イニシャルコンタクト)

注1)が地面に接触する瞬間です。
踵接地(heel strike)に相当します。

荷重応答期(ローディングレスポンス)

始まり:初期接地
終わり:反対側の足が地面から離れた瞬間
観察肢の踵接地から反対側の爪先離地(toe off)までです。
反対側の爪先離地は観察肢の足底接地と同じタイミングです4)が,足底接地の方が先に起こるとしている文献3)もあります。
両脚支持期です。

立脚中期(ミッドスタンス)

始まり:反対側の足が地面から離れた瞬間(toe off)
終わり:観察肢の踵が床から離れた瞬間(身体重心は前足部の直上にある)
反対側の爪先離地(toe off)から観察肢の踵離地(heel off)までです。
単脚支持期で足底全体が接地しているあいだになります。
従来の立脚中期は体重が支持側下肢を通過するときで,両足部が並ぶときであり,矢状面で大腿骨大転子が支持足部中央の垂線上にあるときです3)
従来の立脚中期とは別物です。

立脚終期(ターミナルスタンス)

始まり:観察肢の踵が床から離れた瞬間
終わり:反対側のイニシャルコンタクト
観察肢の踵離地から反対側の踵接地までです。
単脚支持期で,踵が浮いています。

前遊脚期(プレスイング)

始まり:反対側のイニシャルコンタクト
終わり:観察肢のつま先が床から離れた瞬間
反対側の踵接地から観察肢の爪先離地までです。
反対側も接地しているので両脚支持期です。
この相は,まだ観察肢が接地していますので,従来の歩行周期では立脚期です。
しかし,RLANRC方式では遊脚相になります。
荷重のほとんどは反対側に移動しており,機能的には遊脚期の準備をしていると捉えているからです。

遊脚初期(イニシャルスイング)

始まり:観察肢のつま先が床から離れた瞬間
終わり:両側の足関節が矢状面で交差した瞬間
加速期はとほぼ同じです。
完全に同じと言えないのは,加速期の定義2)が「下肢が体幹の後方にある」と曖昧になっているからです注2)

遊脚中期(ミッドスイング)

始まり:両側の足関節注3)が矢状面で交差した瞬間
終わり:観察肢の下腿が床に対して直角になった瞬間
従来の遊脚中期の定義は「下肢が体幹の真下にある2)」となっています(また曖昧です)。
それに対して,RLANRC方式の遊脚中期は下腿が垂直になるまでで,下腿が垂直になるとき足部は体幹の前方に振り出されています。
よって,同じ遊脚中期ですが,定義は異なります。

遊脚終期(ターミナルスイング)

始まり:観察肢の下腿が床に対して直角になった瞬間
終わり:観察肢の足が床に触れた瞬間
従来の減速期とは異なります。
遊脚中期が違うのですから,残りの相も違ってきます。

従来の用語とランチョ・ロス・アミーゴ方式の対応表

文献には従来の用語とランチョ・ロス・アミーゴ方式の対応の表があるのですが,誤りではないかと思われるところがいくつかあります。

観察による歩行分析1)の表

例えば,「足底接地」と「荷重応答期」が表で並んでいます。
足底接地は瞬間であり,荷重応答期は相であり一定の時間で生じる動きを表していますので,同じではありません。

また,「遊脚中期」と「遊脚中期の一部と遊脚終期」が並んでいます。
従来の遊脚中期はRLANRC方式の遊脚中期の途中で終わりますので,遊脚中期の一部というのは分かりますが,従来の遊脚中期とRLANRC方式の遊脚終期との関係が分かりません。

文献には「従来の用語との対比」となっていて「対応」ではありません。
ですので,同じだと言っているのではないのかもしれません。

基礎運動学2)の表

荷重応答期は踵接地から足底接地までとしています。
荷重応答期は前述の通り反対側の爪先離地までであり,足底接地までではありません。
足底接地と爪先離地は同時ではありません。

どちらの表も悩むところが他にもいくつかあります。
文献の内容を完全に間違いであると証明するのは案外難しく,そこに労力は使いたくありません。
ややこしいので,私はどちらの表も見ないようにしています。

最終的にはRLANRC方式のみにするのがよさそうです。

注釈

1)もとの文献1)では,「脚」と「足」が混在しています。意味があって使い分けているのかもしれませんが,この記事では「足」で統一しました。
2)「筋骨格系のキネシオロジー3)」ではもう少しはっきりした定義なのですが,遊脚初期という言葉を用いており,加速期と遊脚初期が同じであるのかどうかが分からず,今回の記事には含めていません。
3)もとの文献1)での遊脚初期の終わりの定義は「両側の足関節が矢状面で交差した瞬間」となっていて,遊脚中期の始まりの定義は「両側の下腿が矢状面で交差した瞬間」となっています。遊脚初期の終わりと遊脚中期の始まりは一緒でなければなりませんが下腿と足関節で異なっています。下腿が交差するのはもっと早い段階ですから,下腿が間違っていると思います。

参考文献

1)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006, pp11-14.
2)中村隆一, 齋藤宏, 他: 基礎運動学(第6版補訂). 医歯薬出版, 2013, pp380-384.
3)嶋田智明, 平田総一郎(監訳):筋骨格系のキネシオロジー. 医歯薬出版, 2005, pp553-556.
4)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017, pp20.

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