運動学

歩行周期の要点〜初期接地(イニシャルコンタクト)

投稿日:2020年10月19日 更新日:

はじめに

歩行周期における初期接地(イニシャルコンタクト,initial contact,IC)の定義,働き,関節の角度,筋の活動などについて,大事なところをまとめます。

歩行周期(ランチョ・ロス・アミーゴ方式)の全体についてはこちらの記事をご覧ください。

定義

初期接地の定義は二通りあります。

足が地面に接触する瞬間,すなわち歩行周期の 0%(0% GC)のみを初期接地とする場合1)と,接触する瞬間から歩行周期の 2% まで(0 〜 2%GC)を初期接地とする場合2)があります。

この記事では後者の定義で説明します。
定義の違いについて,こちらの記事で解説しています。

主な機能

歩行周期は初期接地で始まります。
最初の両下肢支持期です。

遊脚期から立脚期に変わる瞬間であり,反対側の下肢からの「荷重の受け継ぎ」が行われます。

主な機能は

  • ヒールロッカーの開始
  • 衝撃吸収

です。

初期接地の直前に足は 1cm の高さから落下してきます。
落下するエネルギーをヒールロッカーが前進するエネルギーに変えます(ロッカーファンクションについてはこちら)。
また,落下による強い衝撃をある程度吸収する必要があります。

踵が床に衝突する衝撃は,ヒールトランジット(heel strike transient; HST)と呼ばれています。
床反力垂直成分のスパイク波形として現れます。
床反力としては最大値ではありませんが,足底圧としては最大になります。
踵の狭い領域に力が集中するためです。

肢位と運動範囲

概要

膝関節を伸展し,距腿関節中間位で,大腿を約20° 振り出した肢位で着地します。
その後,距腿関節底屈,距骨下関節回内,膝関節屈曲が起こり,股関節はほとんど動きません。

次に,具体的な数値を挙げていきます。

距腿関節

底屈 2.0°(0% GC)→ 底屈 4.1°(2% GC)
中間位に見えますが,実際にはわずかに底屈位で接地し,すぐに底屈していきます。

距骨下関節

中間位 → 回内(踵骨 5° 外反)
しかし,文献2)には「最大の外反が起こる頃には(20%GC で5°外反)」とも書かれており,いつ5°に達するかは不明確です。

膝関節

屈曲 4.7°(0% GC)→ 屈曲 8.0°(2% GC)
接地する直前に伸展位になっていて,屈曲しながら接地します。
文献には,伸展位に見えると書かれていますが,伸展位になるのは一瞬のことであり,屈曲位に見える人もいると思います。

大腿

屈曲 21.6°(0% GC)→ 屈曲 21.7°(2% GC)

ほとんど動きません。

股関節ではなく大腿の角度(静止立位を基準とした大腿の位置)です。
股関節の角度の判別は,歩行中は骨盤と大腿骨の両方が動くため,通常の動作観察では困難です。

骨盤

5° 前方回旋位で,前額面での側方傾斜は中間位(0°)です。
詳細は書かれていません。

筋の働き

距腿関節

踵と床の接点は距腿関節の後方であり,床反力ベクトルが足関節の後方になります。
距腿関節には底屈する力が急速にかかります。
それに対して,前脛骨筋が働きます。
それでも距腿関節は底屈してしまうため,前脛骨筋は遠心性収縮になります。
この遠心性収縮が衝撃を吸収します。
1% GC で前脛骨筋の活動が最大となります。

長母趾伸筋と長趾伸筋も働きます。

距骨下関節

踵と床の接点は距骨下関節の外側にあり,踵骨が外反します。
前脛骨筋と後脛骨筋が外反を制御します。
これも衝撃吸収になります。

膝関節

床反力ベクトルは膝関節の前方にあり,膝関節には伸展する力がかかります。
また,大腿四頭筋の広筋群も働いていて膝伸展に作用します。
大殿筋上部線維も働いていて,腸脛靱帯を介して膝を伸展します。
これらに対してハムストリングスが働き,膝関節過伸展を防ぎます。
後の荷重応答期では膝関節を屈曲する力がさらにかかりますので,それに備えています。

股関節

床反力ベクトルは股関節の前方にあるため,股関節には屈曲する力がかかり,不安定です。
股関節伸筋が働きます。
大殿筋下部線維と大内転筋が働きます。
大内転筋の収縮は最大となります。
半膜様筋,半腱様筋,大腿二頭筋長頭も活動します。

おわりに

歩行周期の 0 〜 2% は一瞬のことであり,肉眼での観察では次の荷重応答期との境界は分かりません。
しかし,足底圧が最大になる,前脛骨筋と大内転筋の活動が最大になる,膝関節には伸展モーメントが生じている,といった重要なことが起こっています。

参考文献

1)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006.
2)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017.

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2020年10月19日

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