膝関節屈曲可動域制限によって生じる異常歩行

はじめに

膝関節屈曲の可動域制限(伸展拘縮)によって生じる異常歩行について解説します。

初期接地〜荷重応答期

荷重応答期での膝関節屈曲は 17.9° です。
膝関節屈曲の可動域が 17.9° に満たなければ,荷重応答期での衝撃吸収能力が低下します。
衝撃吸収能力が低下したまま通常の速度で歩いていると,衝撃によってなんらかの損傷が生じる可能性があります。

立脚中期

膝関節が伸展する相ですので,目立った影響はありません。
しかし,本来は屈曲位から伸展します。
伸展拘縮で伸展したままだったりするのは,正常な動きとはいえず,重心移動はスムーズではなくなります。

立脚終期

立脚終期の途中で次の前遊脚期につながる屈曲が始まります。
立脚終期の終わりで屈曲 12.2° です。
この角度に満たないほどの制限があれば,次の相で生じる問題が起こり始めます。

前遊脚期〜遊脚初期

前遊脚期の終わりで 屈曲 44.3°,遊脚初期には 58.7° まで屈曲します。
屈曲制限の影響が出やすい相です。

前遊脚期では,立脚期から遊脚期へのスムーズな移行ができないという問題が生じます。
本来は,膝関節が屈曲することで,踵が上がり,足が床から離れます。
膝関節屈曲制限があると,踵挙上が遅れ,足関節は過度に背屈します。
また,踵が十分に上がらないと,トウロッカーも十分に働かず,膝関節を屈曲させる受動的な力が弱くなります。
その結果,足は上がりにくくなり,膝関節屈筋への筋力要求が高まります。

遊脚初期において,膝関節の屈曲が少なければ,つま先を床にこすることになります(トウドラッグ)。

前遊脚期と遊脚初期の膝関節の屈曲では,その角度だけでなく速度も求められます(0.2秒以内に50°)。
例えば,瘢痕化した組織だと素早く屈曲することができないため,ゆっくりとした他動運動で十分に屈曲する膝関節でも,歩行時には制限を示す可能性があります。
膝関節の屈曲がタイミングよく起こらないと,トウドラッグにつながります。

トウドラッグに対する代償運動は,同側の骨盤の挙上,反対側への体幹の側屈,同側の股関節の外転(ぶん回し),反対側の伸び上がりがあります。
エネルギー消費は増大します。

遊脚中期〜遊脚終期

遊脚中期は,両側の足が交差したところから,下腿が床に対して垂直になるまでです。

遊脚初期で膝が曲がらないことに対する代償などが行われたうえで遊脚中期を迎えるわけですから,遊脚中期には目立った問題は生じません。
また,膝が伸びたままだと,遊脚中期と遊脚終期の区切りは分からなくなります。
そして,遊脚終期は膝を伸展する相ですから,膝関節屈曲制限による問題は生じません。

遊脚期全体

遊脚期全体において,下肢が振り出される勢いによって,体全体が前進します。
膝関節屈曲の可動域制限によって遊脚期がスムーズに行われなければ,前進するエネルギーも少なくなります。

おわりに

膝関節伸展位での強直の場合も同じように考えるといいと思います。

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参考文献

1)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017, pp111-185.
2)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006, pp111-157.


2020年12月23日

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