股関節伸展可動域制限によって生じる異常歩行

はじめに

股関節伸展の可動域制限(屈曲拘縮)によって生じる異常歩行について解説します。

股関節の角度は,垂直線に対する大腿の角度で表します。

股関節伸展制限の影響は主に立脚期に生じます。

初期接地〜荷重応答期

正常な初期接地での大腿の屈曲角度は 21.6° です。
股関節が過度に屈曲していれば,床反力が股関節を屈曲しようとする力がより大きくなりますので,股関節伸筋群はより強く働かなければなりません。
また,接地時に後傾していた下腿が垂直になるまで膝は屈曲しますので,膝関節の屈曲角度も大きくなります(股関節と膝関節の関係ついてはこちらで解説しています)。
その結果,大腿四頭筋に対する負荷も増えます。

立脚中期

正常歩行では,立脚中期に股・膝関節は伸展します。
また,股・膝関節伸筋群は強く働く必要はありません(こちらで解説しています)。

股関節が伸展しなければ,股・膝関節屈曲位で身体を支えることになります。
股・膝関節伸筋群は余分に働くことになります。

そして,股関節が伸展しない分,身体が前進しませんので,反対側の歩幅が短くなります。

骨盤前傾(腰椎前弯)によって代償すれば,大腿を伸展することができます。
骨盤の後方回旋も生じます。

屈曲拘縮が 15° 程度までなら,腰椎前弯によって身体重心を股関節の真上に持ってくることができます。
屈曲拘縮が強くなれば,腰椎前弯だけでなく体幹全体の伸展が必要になります。
体幹の伸展でも代償できなければ,体幹は前傾位となります。
身体重心線は股関節の前を通ることになり,股関節伸筋群に対する負荷が増えます。

屈曲拘縮が 30° くらいになると,大腿が垂直になると直立位を保てません。

屈曲拘縮が 40° を超えると,初期接地から骨盤前傾が目立つようになります。

股関節が伸展しないのに身体が前進するということは,下肢を挙上しようとする(遊脚期に移行しようとする)力がかかることになります。
足関節が過度に背屈したり,踵離地が早く起こったりすることで,足部の接地を続けます。

立脚終期

正常であれば,立脚終期の終わりに大腿は 19.2° まで伸展します。
立脚中期のときと同じような代償が生じますが限界があり,身体の前進が制限されます。

前遊脚期

立脚期には股関節を伸展しようとする力が生じます。
伸展制限があれば,その伸展しようとする力に抵抗することになり,強い張力が生じます。
強い張力が生じているところで,荷重から解放され始めると,股関節の屈曲が早まり,遊脚期への移行が早まることになります。

おわりに

実際には股関節の伸展と同時に屈曲も制限されることも多く,ある角度で固定されたような状態になることもあります。
その場合は,股関節屈曲の可動域制限による異常歩行について(こちら)も合わせて考えることになります。

遊脚期での異常も多少はあるはずですが,文献1,2)には記載がないようです。

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参考文献

1)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017, pp111-185.
2)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006, pp111-157.


2020年12月28日

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