膝関節伸展可動域制限によって生じる異常歩行

はじめに

膝関節伸展の可動域制限(屈曲拘縮)によって生じる異常歩行について解説します。

初期接地〜荷重応答期

膝関節伸展が不十分であれば,踵での接地が難しくなり,ヒールロッカーは行われません。
接地の仕方は,膝関節伸展と足関節底屈の組み合わせによって変わります。
足関節の過度の底屈がなければ,足底接地(踵と前足部が同時に接地)になることが多いようです。
膝関節が30°を超えて屈曲していれば,前足部接地になることがほとんどです。

荷重応答期は,膝関節が屈曲していく相で,17.9° まで屈曲します。
屈曲拘縮の角度が15° よりも小さければ,荷重応答期での姿勢は一見正常に見えます。
しかし,はじめから屈曲しているのですから,屈曲の動きは少なくなり,膝関節による衝撃吸収が制限されます。

荷重応答期が終わるときに,正常であれば下腿はほぼ垂直で足関節はほぼ中間位です(図 1)。
その時,膝が過度に屈曲していると,重心が大きく後方に偏ることになります。
それを代償するため,足関節は荷重応答期の終わりで背屈位になります。

荷重応答期の終わり
図 1: 荷重応答期の終わり

立脚中期〜立脚終期

正常であれば,立脚中期には足関節背屈(アンクルロッカー)と膝関節伸展によって身体が前に進み,立脚終期に踵が上がります(フォアフットロッカー)。
膝関節伸展の可動域制限がある場合,立脚中期のはじめに足関節はすでに背屈しています(前述)。
また,膝関節も伸展することができません。
それでも身体を前に進めようとすれば,下腿が前に引っ張られるようになり,立脚中期に踵が上がります(図 2)。

立脚中期での踵挙上
図 2: 立脚中期での踵挙上

膝が伸展しない分,歩幅は減少します。

膝関節屈曲位が続くことになると,大腿四頭筋への負荷が増えます。

重心を前に出しやすくするために,体幹が前傾位になる場合もあります。
この場合,股関節伸筋群への負荷が増えます。

前遊脚期〜遊脚初期

正常であれば,膝関節の屈曲が,立脚終期の後半から始まります。
前遊脚期のはじめの膝関節屈曲角度は 12.2° で,44.3° まで屈曲します。
そして,遊脚初期には 58.7° まで屈曲します。

屈曲拘縮が重度であれば,前遊脚期のはじめに正常よりも過度に屈曲していることになりますが,最終的には屈曲します。
そして,遊脚初期は屈曲角度が大きい相ですから,屈曲拘縮の影響はありません。

さて,文献1,2)には,この前遊脚期での膝関節の屈曲について詳しい説明がありません。
歩行全体への影響も明記されていません。
おそらく,歩行のエネルギー効率が悪くなるだろうと,私は考えています。
前遊脚期から遊脚初期にかけての膝関節屈曲は,主に受動的な力によるものです。
立脚期ですでに異常歩行になっていますので,正常歩行と同じような受動的な力が発生しないかもしれません。
もしそうであれば,膝関節屈筋群への活動要求が高まり,効率は悪くなります。

遊脚中期〜遊脚終期

遊脚中期から遊脚終期は下肢を振り出す相です。
正常では,膝関節は伸展し,ほぼ中間位まで伸展します。
屈曲拘縮の分だけ下肢を振り出せず,歩幅が減少することになります。
そして,初期接地での異常につながります。

ハムストリングスの短縮が原因の場合,SLR が 40° 未満だと遊脚終期で正常な膝関節伸展が制限されます。

膝関節伸展制限の代償として骨盤の後傾が生じる場合もあります。

おわりに

当たり前のことですが,制限の程度と,他の障害との組み合わせで障害像は変わります。
30°の屈曲拘縮(伸展 -30°)であれば,遊脚初期を除くすべての歩行周期で異常を生じます。

参考文献

1)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017, pp111-185.
2)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006, pp111-157.

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2020年12月22日

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