はじめに
歩行周期における立脚中期(ミッドスタンス,mid stance,MSt)の定義,働き,関節の角度,筋の活動などについて,大事なところをまとめます。
歩行周期(ランチョ・ロス・アミーゴ方式)の全体についてはこちらの記事をご覧ください。
定義
始まり(12% GC):反対側の足が地面から離れた瞬間
終わり(31% GC):観察肢の踵が床から離れた瞬間(身体重心は前足部の直上にある)
GC は gait cycle(歩行周期)の略
教科書等の立脚中期の終わりの図で,遊脚側の下腿が床に対して直角になっていることがありますが,それでは厳密には不適切な図になります。
なぜなら,立脚中期が終わるとき,反対側は遊脚中期の途中ですので,遊脚側(図では左下肢)の下腿は床に対して直角にはなりません。
下腿が床に対して直角になるのは遊脚中期の終わりです。
主な機能
単下肢支持期の前半です。
主な機能は
- 接地した足を支点とした前方への動き
- 下肢と体幹の安定性の確保
です。
前方への動きは,アンクルロッカーが担います(ロッカーファンクションについてはこちら)。
立脚中期の間はずっとアンクルロッカーが働いています。
肢位と運動範囲
概要
距腿関節が背屈し,股関節と膝関節が伸展することで,身体重心は前足部の直上までやってきます。
距腿関節
底屈 0.1°(12% GC)→ 背屈 7.7°(31% GC)
距腿関節の背屈は 6% GC から 43% GC まで続きます。
距骨下関節
20% GC で,5° 外反していた距骨下関節は内反に転じます。
距骨下関節が内反すると,横足根関節はロックされます。
膝関節
屈曲 17.8°(12% GC)→ 屈曲 5.1°(31% GC)
大腿
股関節ではなく大腿の角度(静止立位を基準とした大腿の位置)です。
屈曲 17.2°(12% GC)→ 伸展 0.1°(26% GC)→ 伸展 6.1°(31% GC)
荷重応答期から引き続いて伸展し,過伸展位となっていきます。
骨盤
前額面での側方傾斜角度は 0° に戻ります。
膝が伸展を始めると骨盤が後方回旋を始めます。
立脚中期の途中で 0° を通過します。
大腿骨と脛骨も外旋し始めます。
筋の働き
距腿関節
アンクルロッカーが生じていて,距腿関節の背屈は受動的です。
足部が接地して止まってしまうため,下腿がつんのめるように前に出ます。
遊脚肢と身体重量の前方への動きの勢いによって,床反力ベクトルの作用点は踵から前足部へ移行します。
その結果,距腿関節で背屈モーメントが急激に増加します。
ヒラメ筋と腓腹筋の遠心性収縮によって距腿関節背屈を制御します。
前脛骨筋は 13% GCで活動を終えます。
距骨下関節
後脛骨筋とヒラメ筋の活動により距骨下関節の運動は外反から内反に転じます。
膝関節
遊脚肢と身体重量が前進する勢いがあり,膝関節には伸展モーメントが生じます。
下腿の前進が下腿三頭筋によって制御されているため,その上で大腿が前進します。
大腿四頭筋の広筋群は,立脚中期の前半には膝関節伸展に働きますが,20% GC には活動を終えます。
23% GC で床反力ベクトルが膝関節軸の前にでて,伸展モーメントが大きくなるからです。
股関節
立脚中期の前半は,大腿四頭筋の広筋群による膝関節の伸展によって,股関節も伸展します。
また,内側ハムストリングス(半膜様筋,半腱様筋)の低強度の活動によっても股関節は伸展します。
25% GC で床反力ベクトルが股関節の後ろに移動し,モーメントは屈曲から伸展方向に変化します。
そうなると,股関節伸筋の活動は必要なくなります。
内転方向のモーメントは小さくなっていきます。
25% GC で身体重心は最も外側に移動し,その後,中央に戻っていきます。
その時に,股関節は受動的に外転することになり,内転モーメントは小さくなります。
股関節外転筋群は活動を弱めます。
中殿筋は 29% GC で,大殿筋上部線維は 24% GC で休止します。
大腿筋膜張筋は引き続き活動します。
おわりに
立脚中期はアンクルロッカーの相です。
距腿関節底屈筋群が主に働いています。
あわせて読みたい
ランチョ・ロス・アミーゴ方式の歩行周期の定義(従来の用語との関連)
その他の歩行に関する記事の一覧はこちら
スポンサーリンク参考文献
1)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006.
2)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017.
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2020 年 10 月 22 日
2021 年 9 月 15 日
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