歩行における各関節の動き

はじめに

歩行時の各関節の運動(角度の変化)をまとめました。
「ペリー 歩行分析1)」を参考にしました。

角度のみをまとめています。
歩行周期についての予備知識が必要な記事になっています。

目次

距腿関節(足関節)

矢状面における距腿関節の運動
図 1: 矢状面における距腿関節の運動

初期接地(0 〜 2% GC)

GC は gait cycle(歩行周期)の略です。

中間位で接地するように見えますが,正確には 2° 底屈位で接地します。
そして,初期接地から荷重応答期にかけて,まずは底屈していきます。
底屈の動きは,遊脚終期から生じています。
つまり,底屈しながら接地しています。

荷重応答期(2 〜 12% GC)

初期接地から荷重応答期までは,ヒールロッカーが生じています。
肉眼では,距腿関節が中間位に固定されているように見えますが,実際には底屈と背屈が行われます。

初期接地に続いて底屈していき,4% GC と 5% GC で底屈のピーク(5.7°)となります。
背屈に転じ,荷重応答期の終わり(12% GC)にほぼ中間位(底屈 0.1°)に戻ります。

立脚中期(12 〜 31% GC)

アンクルロッカーの相です。
距腿関節は背屈を続けます。
31% GC で背屈 7.7° です。
背屈のスピードは,荷重応答期と比べると遅くなります(グラフの傾きが緩くなっています)。

立脚終期(31 〜 50% GC)

踵が上がっていく相ですが,距腿関節の背屈は続きます。
43% GC から45% GC にかけて最大背屈位(10.7°)をとります。
それから,底屈に転じます。
50% GC で背屈 8.2° です。
最大背屈位の前後では角度変化がゆっくりで,背屈約 10° を保持しているかのようです。

前遊脚期(50 〜 62% GC)

底屈は急加速し,一気に底屈位となります。
62% GC で底屈 17.4° です。

遊脚初期(62 〜 75% GC)

足趾離地の瞬間(62% GC)に最も底屈位となるように見えますが,ほんの一瞬後の 63% GC で最大底屈位(17.5°)となります。
そして,急速に背屈します。
75% GC で底屈 2.4° です。
トウクリアランスのために背屈が必要ですが,遊脚初期の間はまだ底屈位です。

遊脚中期(75 〜 87% GC)

77% GC から 78% GC にかけて中間位(0°)を通過し,このあたりから背屈の速度が落ちて,83% GC で背屈のピーク(2.3°)となり,それ以降は底屈に転じます。
87% GC で背屈 1.7° です。

底屈はわずかであり,距腿関節は中間位を保持しているようにみえます。

トウクリアランスのため,距腿関節は背屈位になるイメージがあるかもしれませんが,実際にはほぼ中間位です。

遊脚終期(87 〜 100% GC)

引き続き底屈していきますが,わずかであり,中間位を保持しているようにみえます。
最終的に底屈 2° となり,初期接地をむかえます。

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距骨下関節

中間位で接地した後,外反していきます。
最大の外反(5°)は 立脚中期の 20% GC で生じます。
立脚終期の初期はまだ 5° 外反位ですが,立脚終期の終わりには 2° 外反位まで内反します。
前遊脚期の間に中間位となり,遊脚期は中間位です。

距骨下関節が外反すると,距骨が内旋し,脛骨が内旋します。

歩行に最小限必要な距骨下関節可動域は 8 〜 12° である6)との記述がありますが,それ以上の詳しい情報はありません。

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横足根関節

立脚中期に横足根関節が背屈し,衝撃を吸収します。
立脚終期には,距骨下関節が内反することで横足根関節がロックされ,前足部での支持性が高まります。

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中足趾節関節

25° 背屈位で接地します。
前足部が接地すると中間位に戻ります。
立脚終期では,踵の挙上に伴い,21° まで背屈します。
前遊脚期も背屈が続き,足趾離地の直前に 55° 背屈位となります。
足が上がると底屈しますが,遊脚中期ではわずかに背屈位です。
遊脚終期に,初期接地に備えて背屈していきます。

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膝関節

矢状面における膝関節の運動
図 2: 矢状面における膝関節の運動

初期接地(0 〜 2% GC)

4.7° 屈曲位で接地し,屈曲していきます。
2% GC で屈曲 8.0° です。
遊脚終期で屈曲が始まっていますので,屈曲しながらの接地です。

荷重応答期(2 〜 12% GC)

さらに屈曲していき,11% GC が最初のピーク(屈曲 17.9°)です。

歩行速度が速くなると,初期接地や荷重応答期での屈曲角度は大きくなります。

水平面では,荷重応答期に 4〜8° 内旋します。

前額面では,立脚期に外転が生じます。
初期接地から荷重応答期の間(何% GCかは記載なし)に最大(4°)となります。

立脚中期(12 〜 31% GC)

伸展に変わります。
12% GC で屈曲 17.8°,31% GC で屈曲 5.1° で,伸展が続きます。
そのスピードは他の相と比べるとゆっくりです。

水平面では外旋します。

立脚終期(31 〜 50% GC)

伸展が続きますが,37% GC と 38% GC で屈曲 3.2° となり,それ以降は屈曲していきます。
次の前遊脚期に向けて,屈曲スピードは徐々に加速していきます。
50% GC で屈曲 12.2° です。

水平面では,立脚終期の後半から前遊脚期の初めに,約1°内旋します。

前遊脚期(50 〜 62% GC)

急速に屈曲し,62% GC で屈曲 44.3° になります。

遊脚初期(62 〜 75% GC)

さらに屈曲し,遊脚初期の終わりのほう(71% GC) で最大屈曲位(58.7°)となります。
そして,伸展していきます。
75% GC で屈曲 56.0° ですので,まだ伸展はゆっくりです。

前額面では,遊脚期が始まると膝関節は内転します。

遊脚中期(75 〜 87% GC)

急速に伸展していきます
87% GC で 屈曲 19.7° です。

前額面での内転角度は遊脚中期に最大(2°)となります。

遊脚終期(87 〜 100% GC)

さらに伸展して,95% GC に伸展位(伸展 0.9°)になります。
その後,少し屈曲(100% GC で屈曲 4.7°)しながら,初期接地となります。

前額面での運動は,遊脚終期に外転に切り替わります。

前額面での動きについての異なるデータ

膝関節の内外転に関して,別の文献3)に異なるデータがあります。

初期接地から前遊脚期が終わる直前までは,内外転は起こらず,1.2° 外転位のままです。
その後は外転し,遊脚初期の膝関節屈曲角度が最大となるときの直後に,最大外転位(6.4°)に達します。
そして,残りの遊脚期の間に内転し,初期接地には元の外転 1.2° に戻ります。

このデータは 5 人の被験者から得られたものです。
そのうちの 1 人は,立脚期に内転位ですし,別の 1 人は遊脚期に内転します。

膝の内外転に関しては,個人差があると考える方がいいのかもしれません。

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股関節

矢状面での屈曲・伸展の角度は,垂直線に対する大腿の角度です。
前額面での内外転の角度は骨盤に対する大腿の角度です。

矢状面における股関節の運動
図 3: 矢状面における股関節の運動

初期接地(0 〜 2% GC)

屈曲 21.6° で接地し,5% GC までほとんど動きません。

前額面では,ほとんど中間位(0°)です。

荷重応答期(2 〜 12% GC)

5% GC から伸展が始まり,12% GC で屈曲 17.2° になります。

前額面では,荷重応答期の終わりまでに 10° 内転します。

水平面での最大内旋角度は荷重応答期の終わりに起こります。
その角度について文献1)には「水平面の大腿の回旋角度の範囲は平均 8° である。この角度に骨盤の動き(7.7°)を加えると,股関節の回旋は平均 15° になる」と書いてあるのですが,あやふやな文でよく分かりません。

立脚中期(12 〜 31% GC)

伸展が続き,25% GC と 26% GC の間で 0° を通過します。
31% GC で伸展 6.1° です。

立脚終期(31 〜 50% GC)

さらに伸展し,50% GC で最大伸展位(19.2°)となります。
この約 20°の過伸展位は,股関節伸展(骨盤に対する大腿の伸展),骨盤前傾の増加(3〜7°),骨盤後方回旋(5°)が合わさったものです。

前遊脚期(50 〜 62% GC)

屈曲が始まります。
グラフにあるように,スピードは屈曲の方が速くなります。
62% GC で伸展 6.6° です。

前額面では,56% GC までに中間位に戻ります。

遊脚初期(62 〜 75% GC)

屈曲が続き,65% GC と 66% GC の間で 0° を通過します。
75% GC で屈曲 16.9° です。

前額面では外転し,65% GC で最大の 5° になります。

水平面での最大の外旋は遊脚初期の初めに生じます。

遊脚中期(75 〜 87% GC)

屈曲がピークとなり,84% GC と 85% GC での屈曲角度は 23.9° です。
そして,わずかに伸展し,87% GC で屈曲 23.6° です。

前額面では中間位です。

遊脚終期(87 〜 100% GC)

遊脚終期の始めは伸展し,最後は屈曲するのですが,角度変化はわずかです。
肉眼では,屈曲約 20° を維持しているように見えます。
100% GC で屈曲 21.6° です。

前額面では中間位です。

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骨盤

文献には,骨盤の動きがあまり詳しく書かれていません。
また,矛盾していると思われるところもあります。

ポイントとなるところだけを列挙します。

前額面での骨盤の側方傾斜が荷重応答期に起こります。
その角度は 4° です。
股関節の内転としては前述の通り,10° です。

矢状面では,単下肢支持期前半に後傾,遊脚終期に前傾します。

水平面での最大前方回旋(5°)は遊脚終期と初期接地の間で生じ,最大後方回旋(5°)は立脚終期で生じます。
中間位になるのは立脚中期(遊脚中期)です。

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おわりに

文献1)には,1% GC ごとの小数点 1 桁までの角度が提示されています(図 1 〜 3 はそのデータより作図)。
しかし,その角度は測定の仕方によって変わりうるものです。
また,別の文献2)には異なる角度が載っていたりします。
真に正しい数字ではないと考えるのが妥当です。

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参考文献

1)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017.
2)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006.
3)Lafortune MA, Cavanagh PR, et al.: Three-dimensional kinematics of the human knee during walking. J Biomech. 1992; 25: 347-57. doi: 10.1016/0021-9290(92)90254-x.
4)P. D. Andrew, 有馬慶美, 他(監訳):筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2020, pp723-731.
5)武田功(統括監訳): ブルンストローム臨床運動学原著第6版. 医歯薬出版, 2013, pp502.
6)山嵜勉(編): 整形外科理学療法の理論と技術. メジカルビュー社, 1997, pp39.

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