はじめに
歩行周期における遊脚中期(ミッドスイング,mid swing,MSw)の定義,働き,関節の角度,筋の活動などについて,大事なところをまとめます。
歩行周期(ランチョ・ロス・アミーゴ方式)の全体についてはこちらの記事をご覧ください。
定義
始まり(75% GC):両側の足関節が矢状面で交差した瞬間
終わり(87% GC):観察肢の下腿が床に対して直角になった瞬間
GC は gait cycle(歩行周期)の略
反対側(左)の踵は 81% GCで挙上が始まります。
遊脚中期が終わるときには踵はわずかに挙上しているのですが,図 1 では分かりにくくなっています。
文献1,2)では遊脚中期の始まりは両側の足関節が矢状面で交差した瞬間と書いてあるのですが,図は下腿が交差した図になっています。
この矛盾点については,遊脚初期の記事でも書いています(遊脚中期の始まりは遊脚初期の終わりです)。
主な機能
主な機能は
- 下肢を前に運ぶ
- トウクリアランス
です。
肢位と運動範囲
概要
距腿関節が背屈位になり,遊脚肢の前進は継続します。
距腿関節
底屈 2.4°(75% GC)→ 背屈 2.3°(83% GC)→ 背屈 1.7°(87% GC)
トウクリアランスのため,背屈位となります。
そして,次の遊脚終期に向けて底屈に転じます。
距骨下関節
中間位です。
中足趾節関節
軽度背屈位が維持されます。
膝関節
屈曲 56.0°(75% GC)→ 屈曲 19.7°(87% GC)
歩幅を確保するためには膝関節は伸展します。
大腿
股関節ではなく大腿の角度(静止立位を基準とした大腿の位置)です。
屈曲 16.9°(75% GC)→ 屈曲 23.9°(85% GC)→ 屈曲 23.6°(87% GC)
屈曲していき,最後は伸展に転じます。
骨盤
水平面で前方回旋し,中間位(0°)を通ります。
筋の働き
遊脚肢の筋活動は最小になります。
距腿関節
遊脚初期では距腿関節を急速に背屈する必要がありましたが,遊脚中期では,距腿関節の動きは少なく,背屈位を保持しているようなものです。
そのため,背屈筋群の活動強度は低くなります。
膝関節
膝関節の伸展は受動的です。
遊脚初期から続いている下肢が前進する勢いによる力や,下腿が重力によって落下する力がかかって伸展します。
大腿二頭筋短頭は膝関節伸展のスピードを制御します。
股関節
遊脚初期から続いている屈曲の勢いによって受動的に屈曲します。
屈筋としては薄筋が活動します。
半膜様筋と大腿二頭筋長頭が,遊脚終期における膝関節伸展を制御する準備として,遊脚中期の終わりに活動を始めます。
半膜様筋は 81% GC,大腿二頭筋長頭は 82% GC に活動を始めます。
おわりに
遊脚初期の運動の勢いが残っていて,筋の活動が小さくなる相です。
身体全体としては,勢いを止めないことが重要です。
あわせて読みたい
ランチョ・ロス・アミーゴ方式の歩行周期の定義(従来の用語との関連)
その他の歩行に関する記事の一覧はこちら
スポンサーリンク参考文献
1)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006.
2)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017.
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2020 年 10 月 28 日
2021 年 9 月 21 日
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