股関節内転筋群による股関節屈曲・伸展の作用

はじめに

股関節内転筋群には,大内転筋,短内転筋,恥骨筋,薄筋,長内転筋があります(大内転筋の最上部を小内転筋と呼ぶ場合あり1))。
これらの筋の股関節屈筋・伸筋としての作用について説明します。

股関節中間位での作用

図 1 に外側から見た各内転筋の走行を示します。

外側から見た矢状面における股関節内転筋の走行
図 1: 外側から見た矢状面における股関節内転筋の走行

大内転筋後部は股関節屈伸の軸よりも後方にあるため,股関節伸展に作用します。
一方,大内転筋の前部は,屈伸の軸の近くにあるため,股関節屈伸には作用しません。

短内転筋,恥骨筋,薄筋,長内転筋は,屈伸の軸よりも前方にあるため,股関節屈曲に作用します。

作用の逆転

股関節屈伸の角度によって,筋が作用する方向と軸との関係が変わるため,作用が逆転することがあります。

股関節屈曲位での長内転筋を図 2 に示します。

股関節屈曲位での長内転筋の走行
図 2: 股関節屈曲位での長内転筋の走行

股関節中間位のとき(図 1)は長内転筋は股関節屈曲に作用します。
しかし,股関節屈曲位での長内転筋は,股関節屈伸の軸よりも後方にありますので,伸展に作用します。

長内転筋の屈曲と伸展の作用が入れ替わるのは,屈曲 60° のあたりです3,4)

薄筋が屈曲に働く限界は屈曲 40° です3)

内転筋群全体としては,股関節屈曲 40° 〜 70° の範囲では,屈伸の作用は小さくなります2)

おわりに

作用の逆転についての理論は,筋が引っ張る方向のみで考えた理論です。
筋の長さの変化やモーメントアームの大きさは考えていませんので,実際に屈曲や伸展を行うことができるかどうかは分かりません。
滝澤らによる研究5)では,股関節屈曲位での長内転筋の伸展成分はそれほど大きくなく,筋が弛緩する肢位であるため,長内転筋の伸展作用は小さいとしています。

臨床で応用する際には注意が必要です。

参考文献

1)金子丑之助: 日本人体解剖学上巻(改訂19版). 南山堂, 2002, pp356-358.
2)P. D. Andrew, 有馬慶美, 他(監訳):筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2020, pp548-552.
3)荻島秀男(監訳): カパンディ関節の生理学 II 下肢 原著第5版. 医歯薬出版, 1995, pp60-61.
4)井原秀俊, 中山彰一, 他(訳): 図解関節・運動器の機能解剖下肢編. 協同医書出版, 2006, pp47.
5)滝澤恵美, 鈴木雄太, 他: 股関節内転筋群における屈曲・伸展作用の特徴 遺体を用いたモーメントアームの計測から. 理学療法学. 2013; 40.

2021年8月3日

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