滑膜関節の分類(関節面の形状と動きに基づいた分類)

はじめに

関節面の形状と動きに基づいた滑膜関節の分類について解説します。

広義の関節の分類については 別の記事 でまとめています。

形状と動きに基づく滑膜関節の分類1)

蝶番関節 hinge joint

筒の中で棒が回転するような構造です。
筒の中で棒が回転することしかできませんので,運動軸は一つです。
骨の長軸は関節面に対しておおむね垂直で,骨の長軸同士が閉じたり開いたりするような動きになります。

腕尺関節,指節間関節は蝶番関節です。

らせん関節は蝶番関節の一種です。
関節面にネジのような溝や隆起があり,それが運動軸に対してらせん状に斜めになっています。
そのため,骨の運動も斜めになります。
腕尺関節や距腿関節は蝶番関節ですが,らせん関節でもあります。

車軸関節 pivot joint

蝶番関節と同じく,筒と棒で構成され,運動軸は一つです。

関節を構成する骨の長軸と運動軸はおおむね平行で,ずっと回り続けることができるかのような位置関係です。

上橈尺関節や正中環軸関節は車軸関節です。
ただし,どちらの関節も実際には運動軸は一つではありません。

楕円関節 ellipsoid joint

楕円体の凸面と凹面によって構成される関節です。

楕円の長軸と短軸の方向に動く 2 軸性の関節であるという説明がよくありますが,関節面がぴったりと合わさっている場合,関節面同士の接触を維持しながら回転できる方向は一方向だけです。
また,楕円体には長球と扁球の 2 種類があるのですが,楕円関節という分類がどちらの楕円を考えているのかは明らかではありません。
しかし,あまり細かいことを考えると,楕円関節という分類が成り立たなくなるかもしれません。
関節面が楕円で,2 軸性の関節であるということだけを考えればいいと思います。

橈骨手根関節は楕円関節です。

球関節 ball and socket joint

球体の凸面と凹面からなる関節です。
関節面同士の接触面積を維持しながら,あらゆる方向に回転することができます。

肩甲上腕関節や股関節は球関節です。

股関節は関節窩(凹面)が深いため,臼状関節(cotyloid joint)とも呼ばれます。
関節窩が深い分,運動範囲が制限されます。

平面関節 plane joint

向かい合う関節面の両方が平面である関節です。
関節面と平行の方向での滑りと,関節面に対して直交する軸での回旋を行うことができます。

手根中手関節(2 〜 4 指),手根間関節,足根管関節などが平面関節です。

鞍関節 saddle joint

向かい合う関節面の両方が鞍状である関節です。
一つの関節面に凸面と凹面の両方があり,凸面での運動と凹面での運動が行える 2 軸性の関節です。

母指の手根中手関節は鞍関節です。

顆状関節 condyloid joint

球関節や楕円関節のような凸面と,比較的浅い凹面からなる関節です。
凸面が球であれば 3 軸になるはずですが,動くのは 2 軸だけです。
動かない軸は,関節面の不適合や靱帯によって抑制されています。

膝関節,環椎後頭関節,中手指節関節は顆状関節です。

顆状関節の定義はやや曖昧です。
顆状関節と楕円関節は同じものであるとする場合もあります。
また,双顆関節を区別する場合もあります。

双顆関節(二軸性顆状関節)bicondylar jointとは,一方の関節面には 2 つの凸面(内側顆と外側顆など)があり,他方の関節面は凹面または平面になっている関節です。
一軸方向の運動が主ですが,もう一つの軸でのわずかな回旋運動も行います。
膝関節は双顆関節です。
この双顆関節という分類を採用している文献2)では,顆状関節と楕円関節は同じ意味になっています。

分類の単純化

ここまで説明してきた分類は曖昧なところがありますし,実際の関節の構造は単純ではありません。
そのため,全ての関節を矛盾なく分類することができません。
そこで,分類を簡単にするため,卵形関節鞍関節の 2 つに分類するという考え方1,3)もあります。

鞍関節は上述の鞍関節と同じで,それ以外は卵形関節です。

卵形関節とは凸面と凹面からなる関節です。
平面関節は完全に平面ではないことが多いため,卵形関節に含めることができます。
楕円体や球体は卵形に含まれます。

卵形関節と鞍関節
図 1: 卵形関節と鞍関節

おわりに

分類の定義には文献による違いもあり,どれが正しいものなのかは分かりませんでした。
今回の記事では,定義の完全な正しさを追求するのは諦め,関節の構造の違いを理解できることを目指してまとめてみました。

正確に分類することに,あまりこだわる必要はないと思います。
理学療法士の場合は,全ての関節の構造や運動について個別に理解していれば十分ですので。

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参考文献

1)P. D. Andrew, 有馬慶美, 他(監訳):筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2020, pp35-39.
2)秋田恵一(訳): グレイ解剖学(原著第4版). エルゼビア・ジャパン, 2019, pp16.
3)博田節夫(編): 関節運動学的アプローチ AKA. 医歯薬出版, 1997, pp10.
4)金子丑之助: 日本人体解剖学上巻(改訂19版). 南山堂, 2002, pp169.
5)板場英行: 関節の構造と運動, 標準理学療法学 専門分野 運動療法学 総論. 吉尾雅春(編), 医学書院, 2001, pp20-41.
6)武田功(統括監訳): ブルンストローム臨床運動学原著第6版. 医歯薬出版, 2013, pp11-13.

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2021 年 9 月 3 日

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