関節運動学(関節包内運動)における関節面の動き

はじめに

関節運動学 arthrokinematics(関節包内運動)における関節面の動きについて簡単に説明します。

関節運動学とは(骨運動学との対比)

骨運動学 osteokinematics は,骨の動きを記述するものです。
肘関節屈曲のような,外からみて分かる動きであり,動いている人が自覚している動きです。
骨運動学での動きとして,屈曲・伸展,外転・内転,外旋・内旋などがあります。

関節運動学 arthrokinematics は,関節の動きを記述するものです。
関節内で相対する 2 つの関節面の動きです。
外から見ても分かりづらく,動いている本人も自覚しにくい動きです。

関節運動学における運動の分類

分類には様々なものがあり統一されていません。
少し古い教科書1,4)では以下のように分類されています。

  • 構成運動
    • 転がり rolling
    • 滑り sliding
    • 軸回旋 spinning
  • 副運動 accessary movement

構成運動

骨運動に伴って起こる関節面の運動であり,転がり,滑り,軸回旋があります。

転がり

ある骨の関節面が,もう一方の骨の関節面の上で転がります。
接触する点は,両関節面ともに常に移動します。
そして,転がる前に接触していた点から等距離の点同士が接触します7)

自動車のタイヤが転がるのと同じようなものですので,骨の移動は大きくなります。

膝関節における転がり
図 1: 膝関節における転がり

滑り

一方の関節面が,もう一方の骨の関節面の上で滑ります。
一方の関節面の接触点は固定され,もう一方の関節面の接触点は移動していきます。

一般の人がイメージする関節の動きは転がりではなく滑りではないでしょうか?
自動車のタイヤで例えると,氷の上で空回りしている動きになります。

膝関節における滑り,脛骨の接触点は移動しない
図 2: 膝関節における滑り,脛骨の接触点は移動しない

純粋な滑りは平坦かあるいは適合した彎曲の関節面の間でのみ起こる7)とありますが,その理由は書かれていません。

軸回旋

両方の関節面の接触点は移動せず,両方の接触点を結ぶ軸で回ります。

コマが回る動きと似ています。

膝関節における軸回旋
図 3: 膝関節における軸回旋

膝関節における転がりと滑りの組み合わせ

転がりのみではすぐに関節面から外れてしまいますし(図 1),滑りのみでは大腿骨と脛骨がより早くぶつかってしまい(図 2),可動域は小さくなります。
転がりと滑りが同時に生じれば,可動域はより大きくなります(図 4)。

膝関節屈曲における転がりと滑り
図 4: 膝関節屈曲における転がりと滑り

副運動

通常の関節運動ではなく,以下に述べるような状況で生じる関節内での動きです。

随意運動に抵抗が加わったときに生じる動き

例えば,硬い球を握りしめたときに,中手指節関節では,関節の構造的なゆるみの範囲で回旋が生じます(通常の随意運動では中手指節関節は回旋しません)。

他動運動で生じる動き(関節の遊び joint play)

他動的に関節面を引き離したり,平行移動させたりするような動きです(図 5)。

副運動
図 5: 副運動

凹凸の法則 convex-concave rule

関節面の一方が凸で他方が凹になっている場合の,関節面同士の動きの法則です。

凸の法則 convex rule

凹の関節面が固定され,凸の関節面が動く場合は,凸の関節面が転がって移動する方向と,凸の関節面が滑る方向は逆になります。(図 6 左)。
ただし,回転する方向でみれば同じ方向です。

凹の法則 concave rule

凸の関節面が固定され,凹の関節面が動くとき,凹の関節面が転がって移動する方向と,凹の関節面が滑る方向は同じになります(図 6 右)。

凹凸の法則
図 6: 凹凸の法則

分類のバリエーション

関節包内運動は関節の遊びと構成運動からなるとしている文献5)があります。

別の文献3)では,構成運動と副運動を全部まとめて,副運動,構成運動,関節の遊びなどと呼ぶとしています。

また,副運動を関節包内運動の節ではなく,骨運動の節で説明している文献2)もあります。

おわりに

分類名が異なることがあるため注意が必要ですが,動き自体が変わるわけではありません。
名前よりも,運動療法を行うときに,関節包内の動きを考慮できることが大切だと思います。

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参考文献

1)大井淑雄, 博田節夫(編): 運動療法第2版(リハビリテーション医学全書7). 医歯薬出版, 1993, pp165-166.
2)P. D. Andrew, 有馬慶美, 他(監訳):筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2020, pp6-12.
3)武田功(統括監訳): ブルンストローム臨床運動学原著第6版. 医歯薬出版, 2013, pp17-23.
4)博田節夫(編): 関節運動学的アプローチ AKA. 医歯薬出版, 1997, pp10-12.
5)竹井仁: 骨関節疾患に対するモビライゼーション. 理学療法科学. 2005; 20: 219-225.
6)荻島秀男(監訳): カパンディ関節の生理学 II 下肢 原著第5版. 医歯薬出版, 1995, pp86-87.
7)富雅男(訳): 脊柱の評価とモビリゼーション. 医歯薬出版, 1997, pp19.

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2021 年 8 月 18 日
2024 年 6 月 23 日

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