ロッカーファンクションについて(基礎編)

はじめに

ロッカーファンクションについて最低限知っておきたいことをまとめます。
ランチョ・ロス・アミーゴ(RLANRC)方式の歩行周期の用語を使って説明します。

ロッカーファンクションとは

ロッカーファンクションとは,歩行時に身体をなめらかに前進させるための回転軸のシステムです。

「揺りてこ1)」という翻訳がありますが,「揺りてこ」という言葉は普通の国語辞典には載っていません。
馴染みがないためか,あまり使われていません。

ヒールロッカー,アンクルロッカー,フォアフットロッカーの 3 つに分類する場合1)と,トウロッカーを加えて 4 つに分類する場合2)があります。

ヒールロッカー(図 1)

ヒールロッカー
図 1: ヒールロッカー

初期接地(イニシャルコンタクト)から荷重応答期(ローディングレスポンス)にかけて起こります。
踵から接地した後,踵と床の接触点を支点にして,丸い踵が転がり,足底全体が接地する動きです。

歩くときの前方への推進力は,身体が下に落ちていく力が前方への力に変換された力です。
その変換で重要な役割を果たしているのがヒールロッカーです。
初期接地の直前に身体は約 1 cm 落下します。
そして,落ちてきた踵が転がり始め,それに連動して下腿が前に進むことで,下への動きが前への動きに変換されます。

前脛骨筋が働くことで,足部に引っ張られるように下腿が前に移動します。
また,大腿四頭筋の広筋群が働いて,大腿も前進します。

足関節は固定されているようにみえますが,実際には荷重応答期の間に,約 5° 底屈してから背屈に転じます。
次のアンクルロッカーの動きが始まっていることになります。

初期接地についてはこちら
荷重応答期についてはこちら

アンクルロッカー(図 2)

アンクルロッカー
図 2: アンクルロッカー

立脚中期(ミッドスタンス)で起こる足関節の背屈です。
足部が床に固定され,足関節が背屈することで,下腿の前方への動きが継続します。

床反力作用線が足関節の前へ移動していきますので,足関節には背屈する力がかかっています。
その背屈を制御するのは下腿三頭筋の遠心性収縮です。

立脚中期についてはこちら

フォアフットロッカー(図 3)

フォアフットロッカー
図 3: フォアフットロッカー

立脚終期(ターミナルスタンス)で起こる中足趾節関節の背屈です。
中足趾節関節を支点にして踵があがり,前方への動きが継続します。

直前のアンクルロッカー(立脚中期)では足趾が床に固定され,足関節背屈が下腿三頭筋によって制限されながら足関節が背屈し,身体重心は前方に進んでいきます。
そして,床反力作用線が中足骨頭までくると,中足趾節関節での背屈が始まり,フォアフットロッカー(立脚終期)が始まります。

立脚終期についてはこちら

トウロッカー

前遊脚期(プレスイング)において,接地している前足部内側に対して下肢が回転して前方への動きが継続します。

このトウロッカーでは下肢を跳ね上げる動きが生じます。
前遊脚期は両下肢支持期で,荷重が反対側下肢へ急速に移動します。
荷重がなくなることで,引き伸ばされていたアキレス腱が縮み,足関節を底屈して地面を押す力が生じます。
その結果,下肢は前足部内側を支点にして前上方に押し出されます(プッシュオフ)。

文献2)では,このトウロッカーの定義の説明がやや曖昧です。
下肢が回転すると書きましたが,どこがどう回転するのかは書かれていません。
母趾の先端が転がるのかもしれません。
また,立脚終期では前足部全体が接地していますが,前遊脚期では前足部の内側が接地しています。
つまり,前足部が外側から内側に向かって転がるのかもしれません。

最初の 3 つのロッカーファンクションと比べて,このトウロッカーは回転軸が明確ではなく,下肢を跳ね上げる要素が強いと思います。
トウロッカーをロッカーファンクションに含まない1)ことがあるのは,そのためかもしれません。

前遊脚期についてはこちら

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おわりに

ロッカーファンクションをより深く理解するためには,歩行全体を理解する必要があります。
歩行に関する記事がいくつかありますのでご参照ください。

ランチョ・ロス・アミーゴ方式の歩行周期の定義(従来の用語との関連)

歩行に関する記事の一覧

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参考文献

1)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006.
2)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017, pp19-21.

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