つま先着地 vs. かかと着地よりも大事なこと

はじめに

長距離のランニングにおいて,かかと着地よりもつま先着地の方が故障が少ないのではないか?という説は有名です。
実際のところどの着地がいいのかはよく分かっていないのですが,つま先着地の方が着地したときの衝撃が少なくなるようです。

でも,あるポイントをおさえていないと,つま先着地の方が衝撃が大きくなってしまいます。
そのポイントは,ずばり,重心の位置です。

重心の位置が悪ければ,つま先着地でも着地した時の衝撃は強くなってしまいます。
そして,重心の位置が良ければ,踵着地であっても着地した時の衝撃を少なくすることができます。

足にかかる力と重心の関係

ランニングで着地するときの重心の動きは,前に進みながら地面に向かって落ちていく動きです。
そして,足が着地するのは重心の真下よりは少し前です。
ですので,着地した瞬間に足にかかる力(床反力)は,上向きですが,やや後ろに傾いています。
つまり,走っている方向とは逆の後ろ向きの力がかかります。
後ろ向きということは,ブレーキとなる力になりますが,重心はすぐに前方へ移動し,後ろ向きの力は身体を前進させる力に滑らかに変換され,前に走り続けることができます。

着地した瞬間の重心の位置が重要で,この重心が後ろにありすぎると,効率の悪い走り方になってしまいます。
重心が後ろにいくほど,着地した瞬間の後ろ向きの力は大きくなります。
そして,後ろ向きの力が前向きの力に変わるのも遅れてしまい,後ろ向きの力を受け続ける時間が長くなり,着地の衝撃を強く受けることになります。

かかと着地からつま先着地に変更する場合

重心の位置を変えずに,たんにつま先を下げただけで着地したらどうなるでしょう?
着地の位置はより前方になってしまいます(図 1)。

かかと着地からつま先着地への変更に伴う着地位置の前方移動
図 1

着地の位置がより前方になると,重心の位置は相対的により後方になります。
すると,着地の衝撃はより強くなります。

つま先着地にするのであれば,それに合わせて重心の位置を変える必要があるということです。

重心の位置を知る方法

床反力計による測定が最も確実な方法ですが,どこにでもある測定器ではなく,一般のランナーでは現実的ではありません。
コーチに指導してもらうのが一番いいのですが,そこまではしなくてもいいという方も多いと思います。
そこで,自分の感覚で重心の位置を知る方法を紹介したいと思います。

踵着地の場合での方法です。

重心が後ろにあると強い衝撃を受けるのですから,着地の瞬間に強い衝撃を感じれば,重心は後ろすぎるということです。

でも,ずっとそのような走り方で,靴の踵にクッションのある靴で走っていると,強い衝撃を受けていることが分からなくなっているでしょう。
その場合は,素足や靴底が極端に薄い靴で走ってみるとよく分かります。
着地したときに踵が痛ければ,それは重心が後ろすぎるということです。
適切なフォームであれば,最も強い力がかかるのは足の前の方であり,踵は痛くありません。

あるいは,同じことなのですが,足のどこで着地しているのかを感じてみてもいいです。
踵から着地しても,重心の位置が適切であれば,力がかかるところはすぐに足の前方に移っていき,踵には強い力がかからないため,踵がついた瞬間が分かりにくくなります。
どこで着地したのかが分かりにくければ,着地の瞬間の重心の位置はより前の方にあるといえます。

不確実ですが,簡単な方法です。

重心の位置を変える方法

走り始める前に,背伸びして,身体をまっすぐにしたまま前に傾けていきます。
そして,自然と足を踏み出したくなったところで走り始めます。
そうすると,重心は前に出やすくなります。
あとは,着地の瞬間の足の裏の感覚を頼りに,気持ちよく走れるフォームを探っていきます。

ですが,簡単ではありません。
頭で考えてフォームを変えようとすると,たいていはおかしなことになります。
「背伸び」が正しくできない人もたくさんいます。
ですので,やはり誰かに指導してもらうのが一番です。

おわりに

つま先着地とかかと着地のどちらがいいのかについての決定的な結論がでないのは,おそらく,いいランニングフォームというのは,どこから着地するかということだけでは決まらないということなのだと思います。
重心の位置は,いいランニングフォームを決める要素としては,とても重要になると思います。

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参考文献

1)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006.
2)NHKスペシャル取材班: 42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」. 角川書店, 2013.
3)Hoenig T, Rolvien T, et al.: Footstrike patterns in runners: concepts, classifications, techniques, and implications for running-related injuries. Dtsch Z Sportmed. 2020; 71: 55-61. doi:10.5960/dzsm.2020.424

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