歩行周期の時間配分について,少しだけ掘り下げてみました。
時間配分の基本
歩行周期は,初期接地で始まり,同じ足が再び初期接地することで終わります。
その歩行周期が8つの相に分けられ,それぞれの標準的な時間配分は以下のようになっています。
- イニシャルコンタクト(IC):0%
- ローディングレスポンス(LR):0〜12%
- ミッドスタンス(MSt):12〜31%
- ターミナルスタンス(TSt):31〜50%
- プレスイング(PSw):50〜62%
- イニシャルスイング(ISw):62〜75%
- ミッドスイング(MSw):75〜87%
- ターミナルスイング(TSw):87〜100%
数字の変換
例えば,ミッドスタンスは歩行周期の12〜31%となっています。
これは歩行周期開始からの時間を割合で示したものですが,私はこの数字がピンときません。
そこで,いろいろと変換してみようと思います。
まずは,歩行周期全体に占める割合に変換してみましょう。
ミッドスタンスなら,31%から12%を引いて,19%です。
次に,割合であるパーセント(%)を,実際の時間に変換します。
ケーデンスは120歩/分が標準ですので,一つの歩行周期は1秒ということになります。
同じくミッドスタンスでみていきましょう。
歩行周期の12%は0.12秒,31%は0.31秒です。
ミッドスタンスは初期接地の0.12秒後に始まり,0.31秒後に終わるということです。
そして,ミッドスタンスは0.19秒かかるということになります。
もちろん先に計算した19%を100で割ってもいいです。
全ての相の割合と時間を表にします。
LR | MSt | TSt | PSw | ISw | MSw | TSw | |
割合(%) | 12 | 19 | 19 | 12 | 13 | 12 | 13 |
時間(秒) | 0.12 | 0.19 | 0.19 | 0.12 | 0.13 | 0.12 | 0.13 |
それぞれの相はとても短い時間であることが分かります。
また,立脚期ではミッドスタンスとターミナルスタンスが長く,遊脚期ではほぼ等間隔であることが分かります。
12とか19という細かい数字は,10と20に丸めてしまう方がイメージしやすくなるでしょう。
立脚期はおよそ60%というのは,そこから出てくる数字です。
さらにグラフにしてみましょう。

上が観察肢で,下に反対側を加えています。
グラフの横の長さが,歩行周期全体に占める割合の数字に対応します。
上の数字はこの記事の最初に示した歩行周期開始からの時間配分(%)です。
グラフと一緒にするとこの数字もイメージしやすくなります。
下の数字はプレスイングからの時間配分です。
劇的に分かりやすくなったというわけではありませんが,多少はイメージしやすくなりました。
臨床では
このような数字は,測定機器がない通常の臨床では知ることができません。
「この人のローディングレスポンスは10%で終わってしまう」なんてことを知ることはできません。
しかし,人間の感覚というのはけっこう鋭いところもあり,普通よりも短いということは分かってしまうものです。
リズムの変化として感じとるといいと思います。
もしかしたら,音楽の経験が役に立つのかもしれませんね。
参考文献
1)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006, pp11-14.
2)中村隆一, 齋藤宏, 他: 基礎運動学(第6版補訂). 医歯薬出版, 2013, pp380-384.
3)嶋田智明, 平田総一郎(監訳):筋骨格系のキネシオロジー. 医歯薬出版, 2005, pp553-556.
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2019年9月25日
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