神経学的検査

感覚検査を行う目的-複合感覚

投稿日:2019年5月31日 更新日:

理学療法士が複合感覚の検査を行う目的(意義)をまとめます。

表在感覚と深部感覚については,別の記事でまとめています。

診断上の目的

まず医師にとっての診断上の目的を確認しておきます。

複合感覚の中枢は頭頂葉です。
伝導路は後索です。
複合感覚の障害があれば,症状が出た側の対側の頭頂葉や同側の後索の障害を疑います6)

頭頂葉や後索をみるための複合感覚の検査では,表在感覚は正常である必要があります。
複合感覚は,表在感覚などの複数の感覚を頭頂葉で統合するものです。
表在感覚に障害があれば,統合する以前に感覚入力がありませんので,頭頂葉・後索が正常でも,複合感覚は二次的に障害されます。
表在感覚の障害がある状態で複合感覚の検査を行うと,二次的な障害なのか頭頂葉・後索の障害なのかは区別がつかなくなります。

表在感覚と深部感覚の両方が正常で複合感覚に障害があれば,後索の障害は除外でき,頭頂葉の障害を疑います。

理学療法での複合感覚検査の目的

理学療法では,感覚障害を機能障害としてみます。
頭頂葉の異常を見つけようとして検査をするだけでなく,複合感覚の障害という機能障害の有無や程度をみるために検査をします。
病巣を区別しようとしているのではなく,最終的に生じている複合感覚を測ろうとしているのであれば,表在感覚などの他の感覚は正常である必要はありません。

複合感覚の障害によって,活動・参加のレベルでも様々な障害が生じます。
よって複合感覚は治療対象として重要です。
治療対象となるためには,理学療法で回復する見込みがなければなりません。
複合感覚は代償的に回復する場合があります。
また,複合感覚以外の感覚の障害が複合感覚によって代償的に回復する場合もあります。

感覚の代償の例をあげます。
脊髄損傷で殿部や下肢の感覚が消失していると,座位で支持面の状態(滑りやすさなど)は感じないのですが,治療によりある程度分かるようになってきます。
残っている感覚による代償です。
このようなことは決して特別なことではありません。
もともとヒトは直接触れていなくても感じることができます。
杖の先で地面をこすれば,地面の状態が分かりますよね。

表在感覚等が異常であっても複合感覚の検査をすると書きましたが,複合感覚異常の定義については注意が必要です。
複合感覚の異常の定義として,「表在感覚が正常であるにも関わらず複合感覚の識別ができない場合に複合感覚の異常があるとする」というようなものが多いと思います。
統一されていませんので,複合感覚の異常について報告したりするときには,どの定義を使っているのかをはっきりさせる必要があります。

各検査の目的

対側の頭頂葉や同側の後索の障害を調べることは,全て共通の目的です。

表題は目的ですが,目的を明示するのではなく,検査で分かることや,複合感覚の異常によってどのような障害が生じるかを書いています。

2点識別覚(Two-point discrimination)

2点識別覚の異常があると,手の探索・識別機能が障害され,ボタンかけやポケットの中のものを取りだすことなどができなくなります。

足底の2点識別覚の低下が立位バランスの低下を招く可能性があります4)

末梢神経損傷後,2点識別覚が回復してくれば,検査した部位で正常に働いている受容器の密度が増えたことが分かります。

検査方法はこちら

皮膚書字覚

障害があれば,対側の頭頂葉の障害を疑いますが,言語が関係するため,責任病巣は単純ではないかもしれません。
言語野との関係は記事にできるほど調査できていませんので,今回は省きます。

脊髄を圧迫している部位を探すときに使えます1)
脊髄圧迫の初期で,脊髄視床路より先に後索が侵されている場合には,皮膚書字覚を使います。
圧迫部位から下の脊髄に支配されている皮膚の皮膚書字覚が障害されます。

理学療法で積極的に利用しているという話は知りませんし,文献も見つかりません。

立体覚(立体認知)

立体覚の障害により,手の探索・識別機能が障害され,ボタンかけやポケットの中のものを取りだすことなどができなくなります。
2点識別覚と同じです。
立体を認知するためには2点識別覚も使っているはずですから,同じ障害となります。

2点同時刺激識別覚

複数の刺激だと,見落とす刺激があるということですから,安全性は低下します。
半側空間無視としてとらえる場合もあります5)

部位感覚

触覚の閾値が良好であっても,その刺激部位を正確に定位できなければ,触覚を有効に利用することはできません。

参考文献

1)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた(改訂17版). 南山堂, 2014, pp101-102.
2)永冨史子: 感覚, 標準理学療法学 専門分野 理学療法評価学(第2版). 内山靖(編), 医学書院, 2006, pp109-114.
3)中田眞由美, 岩崎テル子: 知覚をみる・いかす-手の知覚再教育. 協同医書出版社, 2005.
4)森岡周, 宮本謙三, 他: 年代別にみた立位姿勢バランス能力と足底2点識別覚の変化過程. PTジャーナル. 2005; 39: 919-926.
5)高杉潤: 感覚障害, 標準理学療法学 専門分野 神経理学療法学. 吉尾雅春, 森岡周(編), 医学書院, 2015, pp89-98.
6)鈴木則宏: 神経診察クローズアップ. メジカルビュー社, 2011, pp130-161.
7)田中亮: 感覚検査, 15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 理学療法評価学I. 石川朗(編), 中山書店, 2013, pp115-124.
8)岩田誠: 神経症候学を学ぶ人のために. 医学書院, 2004, pp276-280.

2019年6月15日 改訂
2019年5月31日

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