研究法

Stevensの尺度水準-名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比率尺度

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目次

  1. 尺度水準の概要
  2. 尺度水準の詳細

尺度水準とは,測定値の特性による分類です。
数学的(統計学的)な処理に関係します。
Stevensによるものが有名です。

最初に,最低限理解しておきたい内容をわかりやすく説明し,次に少し踏み込んだ説明をしています。
理学療法での例もあげています。

1.尺度水準の概要

名義尺度

名前を数字で表したものです。
数字としての大小関係はありません。
スポーツチームの背番号や1組,2組といったクラスの数字が名義尺度です。
四則演算(足し算,引き算,かけ算,わり算)を行う数字ではありません。

順序尺度

順番を数値で表したものです。
数値間の差の大きさは揃っていません。
名義尺度と同じで,四則演算(足し算,引き算,かけ算,わり算)を行う数字ではありません。
Danielsの徒手筋力検査の段階がこれにあたります。

間隔尺度

各数値の間隔は一定ですが,0が測定したものが実際に無い状態と一致しません。
足し算や引き算によって差の大きさなどを計算することができます。
かけ算やわり算は行ってはいけません(後で説明します)。
摂氏温度(℃)は間隔尺度です。
摂氏温度では,0℃でも熱が無いわけではありません。

比率尺度

各数値の間隔は一定で,0は測定したものが無い状態を表しています。
足し算,引き算,かけ算,わり算の全てを行うことができ,その結果は測定したものの実態にあっています。
絶対温度(K)は比率尺度です。
0 Kは熱が無い状態を表しています。
長さ,質量,時間などの物理の基本単位は比率尺度です。

間隔尺度でかけ算,わり算を行うとどうなるか

間隔尺度と比率尺度における計算の違いを例をあげて説明します。

摂氏温度(℃)は間隔尺度ですので,引き算で得られる温度の差は実際の差を表しています。
10℃と5℃の差は5℃です。
15℃と10℃の差も5℃で,どちらも差が5℃であることは同じです。
では,10℃は5℃の何倍の温度でしょうか?
10を5でわって2倍としたくなりますが,間隔尺度ですから,わり算をしてはいけません。
2倍という数字がでてきますが,それは真の値ではありません。
絶対温度に変換してみましょう。
絶対温度(K)=摂氏温度(℃)+273.15
ですので,10℃は283.15K で,5℃は278.15Kです。
絶対温度は比率尺度ですから,わり算を行うことができます。
283.15K / 278.15K ≒ 1.02
です。
10℃は5℃の2倍ではなく,約1.02倍の熱になります。

理学療法の教科書では,以上のような説明が多いのではないでしょうか?
次に,もう少し踏み込んだ説明をします。
理学療法での例も追加します。

2. 尺度水準の詳細

名義尺度(nominal scale)

同等性を決定(determination of equality)するための尺度です。
例えば,Aさんは1,Bさんは2,Cさんは3という数字を当てはめます。
Aさんは1でも2でもあるということはありません。

ICFの構成要素のコード番号は名義尺度でしょうか?
このICFのコードには数字の前に文字(b,s,d,e)がつきます。
数字以外の文字を名義尺度として使っていいのかどうかを明記している文献は見つけられていません。
数学では文字式がありますから,使ってもいいとは思うのですが。

使用できる統計手法は度数,最頻値などです。

順序尺度(ordinal scale)

大きいか小さいかを決める(determination of greater or less)ための尺度です。
順番を表す数ですから計算はできません。
例えば,1位+2位は3位ではありません。
また,MMTの段階5から段階3を引いたら,2という数字がでてきますが,筋力の差が2というわけではありません。

順序尺度である評価には他に,Brunnstrome recovery stage,modified ashworth scale,Yahrのパーキンソン病重症度分類などがあります。

Modified ashworth scaleには1+というグレードがあり数字以外の記号がでてきます。
名義尺度のところでも書きましたが,数字以外の文字や記号を使っていいのかどうかは分かりません。
順序尺度の場合,数字以外だと大小関係が明らかではなくなりますが,おそらく使ってもいいと思います。

使用できる統計手法は中央値,分位数などです。

さて,またICFですが,ICFの評価点は順序尺度でしょうか?
「0〜4」までは「問題なし〜完全な問題」に対応していて,パーセンタイルを使ったものですので,順序尺度で間違いないでしょう。
しかし,8は詳細不明,9は非該当で大小関係はなく,名義尺度になっています。
ICFの評価点は順序尺度と名義尺度を組み合わせたものということになりそうです。

順序尺度で計算するとおかしなことになるという例をあげます。
介護度も順序尺度ですので,計算をすることができません。
しかし,平均介護度というものがよく使われています。
統計学的には誤った手法ですが,例えば,ある施設の平均介護度が高くなれば,ケアをする量も増えるというふうに考えることができます。
それなりに役に立つ数字になっていますが,実態には合わない数字になることがあります。
試しに計算をしてみましょう。
仮に,介護度の段階ごとに,介護に要する量が厳密に決められているとします。
その介護の量を適当に作ってみましょう。
要介護1は10,要介護2は11,要介護4は13,要介護5は20とします。
そして,要介護1,2,4の人がそれぞれ1人づついる場合と,要介護1が2人,要介護5が1人いる場合を比べてみましょう。
まず,平均介護度を計算してみます。
1+2+4=7と1+1+5=7で,どちらの場合も合計は同じで,当然平均も同じです(3でわるとわり切れないので計算は省きます)。
平均介護度が同じであれば,介護する量も同じでしょうか?
では,仮に作った介護に要する量をあてはめてみましょう。
10+11+13=34と10+10+20=40になり,合計が同じではなくなりました(同じく3でわるのは省略)。
平均介護度は同じですが,実際の介護の量は異なっており,順序尺度で計算してはいけないことが分かります。
それでも順序尺度での計算が行われているのは,誤差はでるけど,目安にはなるということでしょう。
でも,その誤差がどの程度なのかの見積もりが簡単にできないので,私は平均介護度は使いたくはありません。

間隔尺度(interval scale)

間隔または差の同等性(equality of intervals or differences)を決めるための尺度です。
間隔尺度の単位を変換するときには,x’=ax+bという式になり,定数bが必要になります。
摂氏温度を絶対温度に変換するのに摂氏温度に273.15を足しました。
x’=x+273.15ということです。
単位を変えると0が移動すると考えてもいいでしょう。
理学療法でよく使われる間隔尺度は,摂氏温度(体温)以外に思いつきません(今後,見つかれば追記します)。
間隔尺度とみなすものは多数あるのですが,このことは後で述べます。
使用できる統計手法は,算術平均,標準偏差などです。

比率尺度(ratio scale)

比の同等性(equality of ratios)を決めるための尺度です。
単位を変換するときには,x’=axという式になり,間隔尺度のときの定数bはいりません。
長さの単位で,メートル(m)をヤード(yd)に変換する式は
yd=1.09361m
です。
単位を変えても0は変わりません。
理学療法評価における比率尺度の例は,身長,体重,血圧,脈拍,関節可動域,VAS,Timed Up and Go testなど多数あります。
使用できる統計手法は,間隔尺度で使えるものに加えて,変動係数,幾何平均が使えるようになります。

順序尺度を間隔尺度とみなすことについて

順序尺度を間隔尺度とみなすことはよく行われているようです。

学校でのテスト(単位認定試験など)の点数は間隔尺度の例としてよくあげられています。
まず,テストの点数は比率尺度ではありません。
テストの難易度が変われば,0点が表すものが変わるからです。
では,本当に間隔尺度でしょうか?
テストは学力を測っているのですが,例えば50点と51点の差と,99点と100点の差は,学力の差という点で真に同じではないはずです。
よって,テストの点数は順序尺度であるはずです。
おそらく,順序尺度であるけれども,間隔尺度とみなしているということだと思います。

次に考えたいことは,テストの各問題を採点した点数についてです。
各問題の点数はおそらく順序尺度です。
順序尺度は合計してもいいのでしょうか?
また,足してはいけない順序尺度の数の合計は順序尺度でしょうか?
このことを FIMを例にあげて考えてみましょう。

FIMは各項目を1〜7点で採点します。
介助量の多さで並べて1〜7点をあてはめただけですので,各項目の採点は順序尺度です。
では,各項目の点数を合計した点数はどうなるでしょう?

文献4)では「FIMの合計点に関しては,介護時間やBarthel Indexとの高い相関から間隔尺度的に扱うことに肯定的な意見が多く」とあります。
それ以上の詳しい説明はないのですが,順序尺度の合計点は順序尺度になるようです。
そして,順序尺度を間隔尺度として扱う理由が出てきました。
その理由は「介護時間との高い相関性」となっています。
これは「比率尺度である介護時間との高い相関性より,順序尺度を合計したものだが最終的には等間隔の尺度になっている」という解釈になると思います。

別の文献5)には,「テスト点数等は等間隔性が保証されていないが,点数間隔が狭く,かつ,合計点数の取りうる範囲が広いテストバッテリーは便宜的に間隔尺度として扱うことができる」とあります。
そして,間隔尺度の例としてFIMがあがっていて,間隔尺度の例をあげている所の注釈に「厳密には順序尺度に分類されるべき項目も,便宜的に間隔尺度に含めている」とあります。
FIMが便宜的に間隔尺度に含めたものなのかは明記されていませんが,おそらくFIMの合計点は順序尺度だが間隔尺度として扱うということだと思います。
新しい条件が出てきましたが,狭いとか広いとかの曖昧な表現にとどまっていますし,根拠も示されていません。
ですが,それらの条件がそろっていれば,順序尺度でもその数値の間隔はほぼ等間隔になるということだと思います。

まとめます。

  • 順序尺度を合計することで,さらに別の順序尺度ができるようだ。
  • その順序尺度の数値の間隔がほぼ等間隔であるなら,間隔尺度とみなして計算するということが行われている。
  • 3等間隔とみなすための条件として,比率尺度との高い相関,点数間隔が狭いこと,点数の取りうる範囲が広いことなどがあるようだ。

おわりに

わりと詳しく説明し,疑問点も提示しました。
各尺度の数学的構造は,名義尺度はpermutation group,順序尺度はisotonic group,間隔尺度はgeneral linear group,比率尺度はsimilarity groupである2)ということになっています。
このへんをしっかり勉強すれば,いろんな疑問が解決するのかもしれませんが,それにはかなりの時間がかかりそうです。

参考文献

1)古名丈人: 基本統計, 標準理学療法学 専門分野 理学療法研究法(第2版). 内山靖(編), 医学書院, 2006, pp96-106.
2)Stevens SS: On the Theory of Scales of Measurement. Science. 1946; 103: 677-680.
3)潮見泰藏: 臨床評価指標の基本的構造, 臨床評価指標入門 適用と解釈のポイント. 内山靖, 小林武, 他(編), 協同医書出版社, 東京, 2013, pp9-15.
4)永井将太, 園田茂: Functional Independence Measure(FIM)機能的自立度評価法, 臨床評価指標入門 適用と解釈のポイント. 内山靖, 小林武, 他(編), 協同医書出版社, 東京, 2013, pp271-277.
5)小林武: 理学療法領域における統計解析法の選択. 理学療法の歩み. 2005; 16: 25-36.

2019年5月24日

-研究法

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