医療におけるスクリーニングの定義(狭義と広義)

はじめに

スクリーニング screening とは,一般の言葉としては,ふるいにかけるという意味なのですが,医療の専門用語では,違った意味があります。
そして,専門用語としてのスクリーニングには,疫学の専門用語である狭義のスクリーニングと,臨床等で用いられる広義のスクリーニングがあります。

狭義のスクリーニング

疫学における定義です。

比較的簡単かつ安価な検査を用いて,スクリーニング(screening)の目的とする疾病(健康障害)の症状のない人を対象に,その疾病に罹患している可能性(あるいは将来罹患する可能性)が高いのかそうでないのかを,ふるいわけすること1)

例としては,健康診断が典型的です。

症状がない人を対象としているところが,後で述べる広義のスクリーニングとは異なり,意味が限定されているところです。

スクリーニングは,可能性の大きさを調べるものであり,疾病などがあることを確定するものではありません。

対象疾病は,症状が出る前に発見可能で,早期治療に効果がある疾病です。

早期に治療を開始しても,症状が進展してからの治療と比べて効果に差がなければ,スクリーニングを行う価値はありません。
たんにスクリーニングの労力が無駄なだけでなく,早期発見によって病人として生きていく期間が長くなることで,QOL が低下することもあります。

広義のスクリーニング

通常の臨床等で使われるときは,曖昧な広い意味で使われることがほとんどです。

確定診断の前の段階で,どの疾病なのかの見当をつける検査は,だいたいはスクリーニングと呼ばれます。
特に,まず最初に行う検査をスクリーニングと呼ぶことが多いかもしれません。

狭義のスクリーニングのように症状がない人に限定はしません。
通常の臨床は,なんらかの症状があってから始まりますので,症状がない人を検査するという場面は限られます。

英語だと,「screening」と似た言葉として「case-finding」や「early disease detection」があります。
「screening」は疫学調査が主目的で,「case-finding」は受診につなげて治療することが主目的であり,「early disease detection」は,疾病を早期に見つけようとすること全てをひっくるめて呼ぶ言葉というように使い分けることがあります2)
「case-finding」と「early disease detection」に相当する日本語の専門用語はないようです。
そして,3 つ全てをスクリーニングと翻訳する場合があります。
つまり,日本語のスクリーニングは広い意味で使われているということです。

おわりに

狭義と広義のスクリーニングの使い分けについて,普段はあまり気にする必要はないと思いますが,文献を読むときには必要です。
理学療法士国家試験対策としても,念のために知っておいたほうがいいと思います。

参考文献

1)日本疫学会: はじめて学ぶやさしい疫学 – 日本疫学会標準テキスト(改訂第 3 版). 南江堂, 2018, pp95-105.
2)Wilson JMG, Jungner G: Principles and practice of screening for disease. World Health Organization, 1968.
3)Wald NJ, Morris JK: What is case-finding?. Journal of Medical Screening. 1996; 1.
4)Andermann A, Blancquaert I, et al.: Revisiting Wilson and Jungner in the genomic age: a review of screening criteria over the past 40 years. Bull World Health Organ. 2008; 86: 317-319.

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