研究法

感度,特異度の定義と使いかた

投稿日:2019年2月9日 更新日:

感度,特異度,尤度比の定義と使い方について説明します。
長くなりますので,尤度比は別に記事に分けています。

感度,特異度とは

感度,特異度は検査の能力を表す数値です。

検査の結果を陽性・陰性で表す場合で使います。
例えば,ある疾患をもった人を見つけるための検査では,その結果が決められた数値を越えれば,その疾患をもつ可能性が高いと考え,その結果を陽性と呼びます。
逆に,検査結果が決められた数値を越えなければ,その疾患をもつ可能性が低いと考え,その結果は陰性と呼びます。
決められた数値はカットオフ値といいます。
認知症を見つけるための改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)では,検査の得点が20点以下であれば陽性で,認知症である可能性が高いと判断します(HDS-Rについては別の記事で解説しています)。

完璧な検査というものはなく,疾患があるのに陰性になったり,疾患がないのに陽性になったりします。
そこで,検査がどれくらい正確なものなのかを表す指標として,感度,特異度が使われます。

検査の感度と特異度を知るためには,まずその検査の対象になる疾患があることが分かっている人と,疾患がないことが分かっている人を集め,その人達に対してその検査を行います。
そして,その結果を以下の表のように集計します。

疾患あり疾患なし
検査陽性ab
検査陰性cd

a は疾患があって検査が陽性となった人数,b は疾患がないのに検査が陽性となった人数,c は疾患があるのに検査が陰性となった人数,d は疾患がなくて検査も陰性となった人数です。

表に基づいて定義を説明します。

感度 sensitivity

疾患がある人の中で検査が陽性となる人の割合を感度といいます。
真陽性率ともいいます。

感度 = a / (a + c)

特異度 specificity

疾患がない人の中で検査が陰性となる人の割合を特異度といいます。
真陰性率ともいいます。

特異度 = d / (b + d)

疾患がある人の全員が陽性となるのであれば,感度は1(100%)となりますが,実際には疾患があっても陰性になる人がいるため,感度は1未満になるのが普通です。
特異度も同じです。

感度,特異度をどのように使うのか

  • 感度が高い検査は,それが陰性のとき,その疾患を除外できます。
  • 特異度が高い検査は,それが陽性のときに,その疾患を確定できます。

これらのことを改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を例にあげて説明していきます。

HDS-Rではカットオフ値の20点以下であれば陽性ですが,このカットオフ値を変えることを考えてみましょう。

感度が高い検査は,それが陰性のとき,その疾患を除外できる

カットオフ値を21点,22点と上げていくと,より高い点数をとらなければ陰性とならないのですから,陽性となる人は増えていきます。
陽性となる人が増えれば,疾患がある人の中で検査が陽性となる人の割合である感度は高くなります。
逆に,陰性になる人は減ってしまい,疾患がない人の中で検査が陰性となる人の割合である特異度は低くなります。
カットオフ値を高くしたHDS-Rは感度の高い検査ということになります。

高得点でも陽性と判定されるのですから,認知症がなくても,少しの減点で陽性と判定され,認知症の疑いがあると判定される人が多くなります。
そのような検査では,陽性であっても認知症の疑いがあるとは言いにくくなります。
一方で,かなりの高得点でなければ陰性にならない検査ですから,認知症があるにも関わらず高得点をとって陰性になる人は少ないはずです。
間違って陰性となったとは考えにくく,陰性であれば認知症ではない可能性が高くなります。
つまり,感度が高い検査は,それが陰性のとき,その疾患を除外できるということです。

特異度が高い検査は,それが陽性のときに,その疾患を確定できる

カットオフ値を下げていく場合も考えてみましょう(同じような文章が続きます)。

カットオフ値を19点,18点と下げていけば,より低い点数の時に陽性となるのですから,陰性となる人は増えていきます。
陰性となる人が増えれば,疾患がない人の中で検査が陰性となる人の割合である特異度は高くなります。
逆に,陽性となる人は減ってしまい,疾患がある人の中で検査が陽性となる人の割合である感度は低くなります。
カットオフ値を低くしたHDS-Rは特異度の高い検査ということになります。

よほど低い点でなければ陽性とは判定されないのですから,認知症があっても陰性と判定され,認知症の疑いはないと判定される人が多くなります。
そのような検査では,陰性であっても認知症の疑いはないとは言いにくくなります。
一方で,かなりの低い点数でなければ陽性にならない検査ですから,認知症がないにも関わらずそのような低い点数をとって陽性になる人は少ないはずです。
間違って陽性になったとは考えにくく,陽性であれば認知症である可能性は高いといえます。
つまり,特異度が高い検査は,それが陽性のとき,その疾患を確定できます。

感度と特異度を同時に高くすることは難しいことがほとんどです。
疾患があることを調べたい場合は特異度が高い検査,疾患がないことを調べたい場合は感度が高い検査と,検査を使い分ける必要があります。
また,見落としを避けたいときには感度が高い検査を,偽陽性を避けたいときには特異度が高い検査を使います。
異なる検査を使い分けるのではなく,目的に合わせてカットオフ値を変えることもできます。

感度,特異度を知る方法

教科書や臨床研究の文献などで知ることができます。
しかし,全ての検査の感度と特異度が分かっているわけではありません。
感度と特異度は,いわゆる検査だけでなく,病歴や主訴などの所見にも感度と特異度はあります。
例えば,「最近,物忘れがひどい」という訴えの感度,特異度があります。
しかし,このような所見の感度と特異度は,明らかになっていないことが多いようです。
そういうときには,経験による直観で感度と特異度を見積もります。
直観によるものであっても,感度,特異度という概念を明確に意識して使うのであれば,検査とそれに続く解釈の質はよくなるはずです。

関連記事

感度と特異度を合わせた指標が尤度比です。
尤度比については続きの記事に書いています。

参考文献

1)名郷直樹: 続EBM 実践ワークブック – 今,できる限りの医療を. 南江堂, 2002, pp79-106.
2)Fletcher RH, Fletcher SW, et al.: Clinical Epidemiology. 3rd ed, Lippincott Williams & Wilkins, 1996, pp43-74.

2020年7月6日
2019年2月9日

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