EBM とは:簡単に最低限押さえておきたいところを解説

はじめに

Evidence-Based Medicine (EBM) を直訳すると,「根拠に基づく医療」です。
意訳すると「科学的根拠に基づく医療」です。
これだけで,EBM とは何かがある程度分かるのですが,人によってイメージすることは様々です。
そして,「科学的根拠に基づく医療」という言葉のみから勝手に想像しているだけで,実際の EBM を知らないという人は,とても多いような気がします。

そこで,Evidence-Based Medicine (EBM) とは何かについて,最低限押さえておきたいところをまとめてみたいと思います。

EBM とは

まずは Sackett 先生の著書1)から引用します。

Evidence-Based Medicine (EBM) とは,研究結果からの最善のエビデンス (research evidence) と,臨床的な専門技能 (clinical expertise) および患者の価値観 (patient values) を統合するものである。

ちょっと分かりにくい定義です。
ポイントはエビデンスだけではないということです。
従来の医療のプロセスに,臨床研究の結果の活用を加えようということです。
従来の医療を否定するものではありません。
また,患者の気持ちを重視しており,研究結果の数字を患者に分かるように説明することが重視されています。

EBM の 5 つのステップ

定義よりも,具体的にどんなプロセスなのかを知るほうが分かりやすいかもしれません。
EBM は 5 つのステップからなります(表)。

Step 1患者の問題の定式化
Step 2問題についての情報収集
Step 3情報の批判的吟味
Step 4情報の患者への適用
Step 5Step 1 〜 4 のプロセスの評価

各ステップを簡単に説明します。

患者の問題の定式化

問題(疑問)を定式化することで,Step 2 の情報収集が行いやすくなります。

カテゴリー

治療,評価,予後などがあります。
各カテゴリーに適した研究デザインがあります。

PECO

問題を4つの要素にわけて定式化します。

  • どんな患者に (Patient)
  • 何をすると (Exposure)
  • 何と比べて (Comparison)
  • どうなるか (Outcome)

それぞれの頭文字をとって PECO と呼びます。
Exposure を Intervention にして PICO と呼ぶこともあります。

問題についての情報収集

臨床研究の論文を探すというイメージが強いと思いますが,実際には様々な情報源にあたることになります。
情報源の種類については別の記事で書いています。
論文検索の技術が必要になります。

情報の批判的吟味

情報を鵜呑みにするのではなく,情報が正しいのかどうかを自分で検討します。
臨床研究の論文であれば,適切な研究デザインを用いて正しい結論を導いているのかを吟味します。
そのためには,統計学や臨床疫学の専門知識が必要になります。
しかし,そのような知識を全ての臨床家が完璧に習得するというのは現実的ではありません。
実際には,批判的吟味の公式を習って,大まかに判断することになります。

関連性の高い情報であるのかも吟味します。
つまり,情報を適用しようとしている患者とよく似た患者についての情報であるのかを判断します。

情報の患者への適用

情報を患者に適用できるかどうかを検討します。

正しい情報であっても,適用しようとしている患者との関連性が低すぎれば,その情報は使えません。
例えば,ある治療に効果があることを示した研究があったとしても,その研究での患者の重症度と,治療をしようとしている患者の重症度が大きく異なれば,その治療は適用しにくくなります。

患者の価値観も重要です。
研究結果(確率の数字)の解釈はとても難しい問題です。
例えば,10 人治療すれば 1 人に効果が出るという数字を提示されたとしましょう。
「その数字を教えてもらって治療を受ける決心がつきました」という患者は少数派だと思います。

Step 1 〜 4 のプロセスの評価

これまでのプロセスを振り返ります。
患者は最終的にどうなったか?改善点はなかったか?を再評価します。

理学療法士であれば,理学療法プロセスの再評価とか,症例レポートでの考察でおなじみのプロセスです。

おわりに

EBM について簡単に説明しました。
具体的なことはほぼ書いていませんが,だいたい正しいイメージを持っていただけることを期待しています。

参考文献

1)Sackett DL, Straus SE, et al.: Evidence-Based Medicine EBMの実践と教育. エルぜビア・サイエンス, 2003, pp2.
2)名郷直樹: EBMの現状と課題, エビデンスに基づく理学療法 活用と臨床思考過程の実際. 内山靖(編), 医歯薬出版, 2008, pp18-38.
3)名郷直樹: EBM実践ワークブック-よりよい治療をめざして-. 南光堂, 1999.
4)名郷直樹: 続 EBM実践ワークブック-今,できる限りの医療を. 南光堂, 2002.

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