研究法

母集団とは?どこで使うのか?

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母集団という用語をご存知でしょうか。
きっと統計学の授業で習っているはずですし,理学療法士の国家試験にも出題されています。
でも,ちゃんと覚えていなかったり,自分には関係ないと思っている理学療法士もいるかもしれません。

今回の記事では,母集団の定義と,理学療法の臨床でどのように役立つのかを書いてみたいと思います。

母集団とは

母集団とは何かを説明する前に研究の流れを説明します。

研究では,調べる対象となる集団があります。
例えば,変形性膝関節症に対する筋力増強運動の効果を調べるのであれば,対象の集団は変形性膝関節症の患者の集団になります。

もっとも理想的な研究は,全数調査といって,対象の集団の全ての人を集めて行う研究です。
先の例でいえば,世界中の全ての変形性膝関節症の患者を対象に研究を行うことになります。
もちろん,それは現実的には不可能です。
全数調査ができない場合は,標本調査を行います。
対象の集団のなかから何人かを選ぶことをサンプリングといい,選ばれた人はサンプル(標本)です。
サンプルからデータをとります。
そのデータを統計学で解析し,サンプリングした元の集団のことを類推します。
例えば,サンプルでの平均値から,元の集団の平均値を計算したりします。

もうお分かりかと思いますが,サンプリングをした元の集団が母集団です。
母集団とは標本を抽出する対象となるもの全体のことをいいます1)

サンプルは母集団から偏りなく抽出しなければなりません。
標本集団が母集団の縮図になっていなければなりません。
抽出の偏りをなくすために,母集団のどの個体も抽出されるチャンスが同じになるようにした抽出方法
を,無作為抽出といいます。
無作為抽出の詳細は省きますが,インチキのないくじ引きくらいに思っていて十分です。
サンプルに対する統計解析の理論は無作為抽出のうえで成り立っています。
正しい標本調査を行うためには,無作為抽出が必須になります。
そして,母集団はどれかを判定するときには無作為抽出の対象となった集団を探せばいいことになります。

先の例をまた使います。
理想的な研究対象は,世界中の全ての変形性膝関節症患者ですが,それで研究を行うことはできないのでサンプリングを行います。
すると,母集団は世界中の全ての変形性膝関節症患者でしょうか?
世界中の患者からサンプリングすることなんてできません。
世界中の患者を網羅したデータベースなんてありませんし,サンプルが世界中に分散していたら,データをとるのも大変です。
サンプリングの対象(母集団)を絞ることになります。
せいぜい,日本中の変形性膝関節症患者です。
この場合,母集団は日本の変形性膝関節症患者です。
しかし,実際には研究者が所属している施設の患者が対象になることが多いようです。
その場合の母集団は研究者が所属している施設の変形性膝関節症患者です。

偏った母集団では,研究結果を一般化することが難しくなります。
統計解析の結果を当てはめることができるのは母集団です。
母集団が研究者の施設の患者であれば,結果を当てはめることができるのは研究者の施設の患者です。
変形性膝関節症患者全般に効果があるというようなことは言えません。

何の役にたつのか

研究を行う場合の母集団の重要性は説明するまでもないでしょう。
ここでは臨床家にとって,母集団の知識をどこで使うのかを説明します。

研究論文の結果を目の前の患者に当てはめようとする場合に母集団を考えることが重要になります。
論文で効果があるとされている治療が,これから自分が治療しようとしている患者にも効果があるかどうかを考えなければなりません。
その場合,研究の母集団の患者と自分が治療する患者が似ているかどうかを検討します。
どんな母集団なのかは「対象」の部分を読めば分かります。
タイトルの,例えば「変形性膝関節症に対する」というような表現だけをみて判断してはいけません。
タイトルだけを見れば,全ての変形性膝関節症患者が母集団のような気がしてきますが,実際には研究者が所属している施設の変形性膝関節症患者が母集団であったりしますので,注意深く読む必要があります。
そして母集団の患者と同じような患者であれば,論文に書いてあるのと同じような効果が見込まれます。

母集団の概念は,少し広げて考えることで応用することができます。
全ての臨床的な判断で母集団のようなものを想定することができます。
例えば,「私の経験上,この治療はこの患者に効果がある」という意見があるとします。
経験というのは,ある患者での治療経験であり,母集団のようなものです。
論文の時と同じように,どのような患者に対して効果があったのかを注意深く聞き出せば,自分の患者に使えるかどうかを判断することができます。

参考文献

1)青本和彦, 上野建爾, 他(編): 岩波数学入門辞典. 岩波書店, 2005, pp571.
2)臼田滋: 研究・実験計画, 標準理学療法学 専門分野 理学療法研究法(第2版). 内山靖(編), 医学書院, 2006, pp22-34.
3)仮谷太一, 歳森博, 他: メディカル コ・メディカルの統計学. 共立出版, 1999,pp5-6.

2019年6月4日

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