医療におけるアウトカムとは〜真のアウトカムと代用のアウトカム

医療の分野での「アウトカム」という言葉について解説します。

アウトカムとは

英語の outcome がもとになったカタカナ語で,広い意味では,結果,成果といった意味です。
国語辞典ではアウトカムが載っていないこともあり,あまり一般的な言葉ではないことが分かります。

医学辞書では,outcome は転帰と訳されることが多いようです。
転帰は,病気が進行して行きついた結果,という意味です。

しかし,転帰と訳すのではなく,アウトカムというカタカナ語にする場合,違う意味で使うことが多いようです。
特に Evidence-Based Medicine (EBM) が関係した文脈におけるアウトカムとは,介入の効果を測定するのに用いる指標のことです。

辞書的な定義だけでは分かりにくいと思いますので,EBM でのアウトカムの使われ方を説明します。

EBM のステップ 1 は「患者の問題の定式化」です(EBM のステップについては別の記事でまとめています)。
問題を 4 つの要素,すなわち,どんな患者に (Patient),何をすると (Exposure),何と比べて (Comparison),どうなるか (Outcome) に分けて整理します。
例えば,変形性膝関節症の患者に,運動療法を行うと,行わない場合と比べて,ADL の自立度は改善するか,というふうに整理します。
この例では,ADL の自立度の改善がアウトカムになります。

ステップ 2 は「問題についての情報収集」です。
論文を検索で探すときには,4 つの要素を検索ワードにします。

ステップ 3 は「情報の批判的吟味」です。
論文を読むときには,アウトカムには何を使っているのかに注目して読むことになります。

ステップ 4 の「情報の患者への適用」では,アウトカムは患者が真に望んでいるものかどうかを考えます。

真のアウトカムと代用のアウトカム

アウトカムには真のアウトカムと代用のアウトカムがあります。

真のアウトカムとは患者が真に求めていることです。
最終的な目標といってもいいでしょう。
ADL や QOL の改善,生命予後の改善などが真のアウトカムとなりえます。
ICF の活動・参加レベルでの改善は真のアウトカムとなることが多いでしょう。
患者中心のアウトカムということもあります。

代用のアウトカムとは,真のアウトカムの代用となるアウトカムです。
心身機能レベルでの改善はたいていは代用のアウトカムです。
例えば,運動療法の効果を ADL の自立度ではなく筋力で測る場合,筋力は代用のアウトカムになりそうです。
筋力が改善することで,ADL の自立度も改善することがありますので,アウトカムとしての筋力は大切です。
しかし,筋力が改善しても ADL の自立度が改善するとは限らず,患者が真に求めているものが得られるとは限らないということになります。
そうなると,筋力は代用のアウトカムになります。

真のアウトカムを用いた臨床研究は,患者の望みに直接関係するものであり,臨床で利用しやすい研究といえます。

これらの区別は相対的なものですし,人によって異なりますし,場面によっても異なります。
「この人は,今は,筋力の改善の望んでいる」ということはあります。

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参考文献

1) 名郷直樹:EBM 実践ワークブック-よりよい治療をめざして.南江堂,東京,1999.
2) 名郷直樹:続EBM 実践ワークブック-今,できる限りの医療を.南江堂,東京,2002.

2021 年 8 月 9 日
2019 年 12 月 17 日

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