神経学的検査

2点識別覚の検査方法

投稿日:2019年6月15日 更新日:

2点識別覚(Two-Point Discrimination)とは,皮膚に同時に加えられた2つの刺激を2つであると識別する感覚です。
複合感覚の一つです。

この記事では2点識別覚の検査器具,検査方法,判定基準などについて詳しく解説します。
静的2点識別と動的2点識別がありますが,この記事は静的2点識別についてです。

検査器具

ディスクリミネーター Disk-Criminator(下図)やスピアマン式触覚計などの専用の器具があれば便利です。
専用の器具は高価です。
2つの触覚刺激を同時に加えることができるものであればなんでもかまいませんので,様々なもので代用することができます。

ゼムクリップを伸ばして使うことができます。
手に入りやすいので便利です。

ノギス(キャリパー,キャリパス)を使うときには,皮膚にあたる部分の形に注意し,広い面であたらないようなものにします。

コンパスもよく使います。
コンパスというと,算数の図形で使った針と鉛筆がついたものしか連想しない人もいるかもしれませんが,様々なものがあります。
触覚刺激として適切で,広げた角度を固定できるものがいいでしょう。

検査方法

2点を識別できる最小の距離(2点識別閾値)を得る検査です。

まず,被験者に見てもらいながら2点と1点の刺激を加え,検査刺激を理解してもらいます。
検査は閉眼で行います。

検査中の室温(皮膚温)が下がりすぎていると,感覚が鈍くなります。

検査刺激

検査刺激の強さは,皮膚蒼白部を作らない程度の圧迫となっています。
この解釈に自信がないのですが,私は,触れたところの周りが白くならない程度の圧迫と解釈しています。
検査器具の重さのみによる圧迫で統一する方法5)もあります。

検査刺激の時間について書いている文献を見つけることができなかったのですが,私が学校で習ったのは触れてすぐに離すだったような気がします。
また,検査器具を販売している酒井医療株式会社のサイト3)には3秒とあります。

2点は同時に触れ,均等な圧力が加わるようにします。
2点が同時に触れていないと,2点だと分かりやすくなります。
2点の圧力が同じでなければ,圧力が弱い方の刺激に気づかないといったことが起こります。
また,検査器具の保持が不安定で揺れていたりして,2点交互に圧力が変わると,2点であると分かりやすくなります。
刺激を繰り返す場合も同じ圧力である必要があります。
圧力のコントロールはかなり難しく,検査の再現性を下げる原因となります。

2点刺激は体の長軸と平行に加えます(下図)。
その理由について書かれた文献はまだ見つかっていません。
私の想像では,円柱状の人体では,長軸に交差するようにあてると,曲面に2点をあてることになり,同時にあてるのが難しくなりますが,平行にすれば平面にあてることになりやすく,簡単になるということなのではないでしょうか?

ディスクリミネーターのあて方

検査の手順

多くののバリエーションがあり,調べればいくらでもでてきそうです。
比較的,入手しやすい情報源からいつかピックアップしました。
どれが,スタンダードなのかは分かりません。

バリエーション 1

ベッドサイドの神経の診かた1)に載っている方法です。

2点刺激の間に随時,1点刺激をまじえて,10回の刺激を行います。
被験者の答え方としては,2点で触ったと感じたら「2」,1 点で触ったと感じたら「1」と答えてもらうようにします。
答えが正確であれば,2点間の距離を縮めて,10回の刺激を行います。
これを2点を識別できなくなるまで繰り返し,2点識別閾値を得ます。

最初の2点刺激の間隔は書かれていません。
2点識別閾値(後述)の標準値より少し大きな間隔で始めるといいでしょう。

随時1点刺激を入れるのは,2点刺激だと分かっていないのに「2」と答えていないかを確認するためです5)

文献には「2点刺激ばかりくり返さず,随時,1点刺激をまじえて,それぞれ10 回ぐらい検査する」とありますが,「それぞれ」が何を指すのかがよく分かりません。
もしかしたら,2点刺激と1点刺激をそれぞれ10回くらいということで,全体で20回触るということがもしれません。

バリエーション 2

1回の2点刺激を2点間の距離を短くしながら繰り返します。
2点で触ったと感じたら「2」,1 点で触ったと感じたら「1」と答えてもらいます。
ある間隔で1回触って「2」と答えたら,間隔を1mm短くして触り,「2」と答えたらまた1mm短くするというのを繰り返し,「1」と答えたら終わりです。

検査器具の片方の1点は固定し,もう片方の1点を近づけていきます。

この方法は,ある人に教えてもらった方法です。
どこかに載っている方法なのかもしれませんが,確認できていません。

バリエーション 3

「知覚をみる・いかす-手の知覚再教育2)」にある方法で,指腹の検査として書かれています。

5mmから開始します。
被験者の反応が良好なうちの刺激は1回のみでいいのですが,反応が遅くなったり,間違うようになったりし始めたら同じ間隔の刺激を3回行います。
3回中2回が正答となる最短距離を調べます。

バリエーション 4

広い間隔から始めて,徐々に狭くしていき,識別できる最短の距離を確認します。
次に,狭い間隔から始めて,徐々に広くしていき,識別できるようになる距離を確認します。
双方の距離が一致した値が,2点識別閾値となります4)
狭くしていって得た2点識別閾値と広くしていって得た2点識別閾値の平均値をとることもあります6)

判定・記録

2点を識別できていると判定する基準

統一されていないようです。
同じ間隔で何回かの刺激を行う場合,正答率による判定基準があります。
3回中2回が正答であれば識別できているとする2)なら,正答率は約67%です。
正答率の基準は文献により50〜70%の間でばらついているようです7)
被験者が2点か1点かを迷いはじめたら,その時点で識別できていないとする場合もあるようです7)

2点識別閾値

健常者の2点識別閾値は諸説ありますが,よく引用されるベッドサイドの神経の診かた1)では以下のようになっています。

指尖:3~6mm
手掌,足底:15~20mm
手背,足背:30mm
脛骨面:40mm

指尖は1mmとしている文献8)もあります。

異常値

ベッドサイドの神経の診かた1)では,2点識別閾値よりも値が多少大きいというだけで,2点識別覚の障害だとは判定できないというようなことが書かれています。
そして,左右差があれば病的であるとしています。
つまり,カットオフ値のような正常と異常を分ける値は載っていません。
他の文献でもみつけられていません。

指腹については,以下のような報告2)があります。
正常:5mm以下
良:6mm〜10mm
可:11mm〜15mm

同じ文献に「3~5mm であれば正常,10mm 以内であればその手は実用的である」ともあります。

正常,鈍麻,消失という分け方をしている文献はみつけられていません。

回復や増悪の判断

2点識別閾値が変化したと判断するためには2mm以上の値の変化が必要です2)

記録

記録は刺激部位と2点識別閾値を記録します。

検査方法を統一するために決めなければならないこと

2点識別覚の検査方法は,文献によって様々であり,どれが標準なのかもよく分かりません。
また,検査方法について必要なことを全て網羅して書いている文献もみつかりませんでした。
例えば,手順1のベッドサイドの神経の診かた1)では,10回の刺激のうち何回正答であれば,2点を識別できているとするのかについて書かれていません。

検査方法を統一するために決めなければならないことを考えてみました。
以下に列挙します。

  • 検査器具の触れる部分の形状
  • 検査刺激の強さ(圧迫の強さ)
  • 検査刺激の時間
  • 2点刺激の向き(体の長軸に平行か,直角か)
  • 刺激の回数
  • 2点刺激と1点刺激の割合
  • 検査開始時の2点の間隔
  • 2点の間隔は狭めていくのか?広げていくのか?
  • 2点の間隔を変えていく幅(何mmづつか?)
  • 有効桁数
  • 検査する点に対して,1点をあてて固定しもう1点を動かすのか?2点の中央に検査する点をおいて,両方を動かすのか?
  • 2点を識別できていると判定する基準
  • 全身の2点識別閾値の標準値,異常値
  • 2点識別閾値が変化したと判断する値の変化の基準
  • 室温

2点識別覚検査の目的(意義)については別の記事でまとめています。

参考文献

1)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた(改訂17版). 南山堂, 2014, pp101-102.
2)中田眞由美, 岩崎テル子: 知覚をみる・いかす-手の知覚再教育. 協同医書出版社, 2005, pp65-67.
3)https://www.sakaimed.co.jp/knowledge/hand-therapy/evaluation/evaluation02/(2019年6月10日引用)
4)松川則之, 小鹿幸生: 感覚系の情報収集. CLINICAL NEUROSCIENCE. 2003; 21: 290-293.
5)嶋脇聡, 酒井直隆: 静的および動的二点識別法による視覚障害者と晴眼者の手掌面触覚の比較. 日本機械学会論文集. 2006; 72: 829-834.
6)壬生彰, 西上智彦, 他: 慢性非特異的頚部痛症例における頚部身体イメージの変質と臨床症状との関係. PAIN RESEARCH. 2015; 30: 30-36.
7)内山靖: 理学療法における感覚障害の評価. 理学療法. 1995; 12: 271-280.
8)大西晃生, 他(訳): 臨床神経学の基礎メイヨー医科大学教材(第3版). メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2001, pp134.

2019年6月15日

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