神経学的検査

Romberg(ロンベルク,ロンベルグ)試験とは 方法,意味,リスク

投稿日:2018年11月30日 更新日:

Romberg試験(ロンベルク試験)は,立位で開閉眼による身体動揺の違いを観察する検査です。

バランスを保つために利用する感覚は視覚,前庭覚,体性感覚(特に深部感覚)です。
目を閉じると視覚が使えなくなり,前庭覚と体性感覚でバランスをとらなければならなくなります。
その前庭核や体性感覚が低下していれば,バランスをとるのが難しくなり,動揺が増えます。

まずは開始肢位について説明します。

両足の内側を密着させた立位(閉脚立位)をとらせ,明らかな動揺がないことを確認します。
閉脚立位で動揺が大きいのであれば,明らかな動揺がなくなるまで開脚します1)

顔は正面を向いてもらいます。

上肢の肢位については統一されていないようです。
ベッドサイドの神経の診かた2)では,上肢を自然と下ろした図で説明したうえで,「両手を前方に挙上させておくのもよい」としています。
その理由の説明はありません。
両腕を組ませるとしている文献3)もあります。
これも理由は書かれていません。
おそらく,上肢を自由に動かすことができなければ,身体動揺は大きくなるはずです。

次に目を閉じてもらいます。
10秒から30秒ほど観察します(この数字は経験的なものです)。

閉眼により動揺の増加や転倒があればロンベルク徴候陽性とします。

動揺がどの程度増えれば陽性とするかは主観的に決められます。
健常人でも目を閉じると動揺は増えます。
健常人の動揺がどの程度なのかを知っておく必要があります。
重心動揺計があれば動揺の程度を数値化できます(ロンベルグ率=閉眼動揺/開眼動揺4))。

深部感覚障害では,閉眼と同時に強く不規則な動揺が起こり,転倒することもあります。
障害のために転倒する方向に力を入れてしまったりするからです。

前庭機能障害では,動揺は閉眼後に徐々に強くなります。
よほど重度でないかぎり,転倒はしません。
片側の障害では,障害側に傾く傾向があります5)

小脳性運動失調では,閉眼する前から動揺が大きいため,閉眼による動揺の増加はわずかです。
ロンベルク徴候は陰性となります。

リスク管理についてもまとめておきます。

転倒に備えて近接監視で行います。
近接監視というのは,「被検者に触れているけれども支えてはいない」という意味で使っています。

部屋の隅に立ってもらい,検者が前に立つと,全方向をふさぐことになります。
転倒しそうになっても,すぐに止まりますので安全です。
ただし,頭を壁にぶつけるというリスクがあります。
それに,部屋の隅というのは以外にも空いていなかったりします。

プラットフォームから立ち上がったところで検査というのは避けたほうがよさそうです。
後方に倒れそうになった時に,被検者の後方にまわりにくくなります。

検者2人で検査するとより安全です。

検者と被検者の体重差や障害の程度などを考慮して,総合的に判断する必要があります。

合わせて覚えておきたい試験・徴候があります。

マン試験

ロンベルク試験を両足を前後に縦においた立位で行うものです。
ロンベルク試験の肢位よりも姿勢を保持するのが難しくなるため,より軽度の障害を検出できます。
逆に言えば障害がないにも関わらず陽性となることがあります。
下肢の機能に左右差があれば,どちらの足を前に出すか,荷重を前後の足のどちらにかけているかを考慮する必要があります。

洗面現象

顔を洗う時に目を閉じることでふらつく現象で,ロンベルク徴候と同じことです。
ロンベルク徴候陽性であれば,ADLに工夫が必要になります。
洗面は座って行うとか,寝る時に電灯を消す時は,横になってから消せるようにする(リモコンを使う)といったことです。

疑問があります。

開始肢位の説明で,まず明らかな動揺がない立位をとってもらうということを書きました。
しかし,ちょっと違った説明をしている文献6)があります。

平衡障害のある患者では,足を横に広げて起立時の支持平面を広くすると普通に立てるが,両足を揃えて立つとふらつきが強くよろけてしまう。このようなときに閉眼させて視覚入力を遮断すると,下肢の深部感覚障害のある患者や迷路性の平衡障害のある患者では,ふらつきが一層強くなり,遂には倒れかかってしまったり,足を踏み出してしまったりする。このような現象はRomberg徴候と呼ばれ,小脳性の平衡障害とこれらの原因による平衡障害とを鑑別するのによく用いる。

支持基底面を狭くすると動揺することを確認し,閉眼することで動揺がさらに増えるのを観察するのがRomberg徴候だと言っていることになります。

最初の立位はどうすればいいのでしょう。
できるだけ動揺がでないよう支持基底面を広くするのか?それとも,支持基底面を狭くして動揺があることを確認するのか?

とても安定した立位であれば,目を閉じても動揺が生じにくく,障害を検出できないのかもしれません。
一方で,不安定な立位であれば,目を閉じたときの変化が出やすく,障害が無いのにも関わらず陽性となってしまいそうです。
また,動揺がより増えるのを見る検査ですから,閉眼する前の動揺が強すぎれば,検査が成り立ちません。

おそらく,間をとらなければならないのでしょう。
私は,明らかな動揺が起こらない範囲で,できるだけ不安定な立位をとってもらうのがいいと思っています。
こう考えれば,上肢の肢位の制限や,マン試験が必要になる場合があることが分かります。

もう一つの疑問,Romberg試験のカタカナ表記はロンベルグなのか?それともロンベルクなのか?については,別の記事にまとめています。

参考文献
1)鈴木俊明(監修): 臨床理学療法評価法-臨床で即役に立つ理学療法評価法のすべて. エンタプライズ, 2005, pp253.
2)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた改訂17版. 南山堂, 2014, pp62-63.
3)國弘幸伸: 平衡感覚の評価. 総合リハ. 2001; 29: pp731-735.
4)時田喬: 重心動揺検査-病巣診断を目標として. Equilibrium Res. 1995; 54: pp172-179.
5)平山惠造(編): 臨床神経内科学(第4版). 南山堂, 2004, pp189.
6)岩田誠: 神経症候学を学ぶ人のために. 医学書院, 2004, pp305.
7)田中亮: 協調性検査, 15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 理学療法評価学 I. 石川朗(編), 中山書店, 2013, pp135-144.

2018年11月30日

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