片脚立位の検査:方法,平均値,カットオフ値

はじめに

片脚立位の検査について,そのやり方,高齢者の年齢別の平均値,カットオフ値について解説します。

検査方法

開眼での片足立ちの持続時間を測定します。

詳細は,文部科学省の新体力テスト実施要項1)による方法を中心にまとめています。

準備物

ストップウォッチ

実施場所

滑りにくく,かつ,硬い床で行います。
被検者の周りには,物を置かないようにします。
段差や傾斜がある場所は避けます。

支持脚の選択

片足立ちを左右両方で試しに行い,立ちやすい方を支持脚として選んでもらいます。

姿勢など

素足で行います。
足の汚れや感染症への配慮が必要です。

両手を腰に当てます。

支持脚の膝は伸ばします。

足は前方に挙上し,床から5 cm 程度挙げます(図 1)。

挙げた足が支持脚に触れないようにします。

片脚立位検査の姿勢
図 1: 片脚立位検査の姿勢

合図と測定

「片足を挙げて」と合図し,片足立ちになった時から計測します。
「始め!」のような合図だと,慌てて挙げようとして,始めからバランスを崩すことがあります。

2 回行ってよい方の記録をとります。

計測は最長 120 秒とします。
1 回目が 120 秒の場合には,2 回目は行いません。

記録は秒単位,秒未満は切り捨てです。

終了の条件

  1. 挙げた足が支持脚や床に触れた場合
  2. 支持脚の位置がずれた場合
  3. 腰に当てた両手,もしくは片手が腰から離れた場合

被検者には測定する前に終了の条件を伝えておきます。

終了の条件の意味も確認しておきます。

挙げた足が床に触れたら片脚立位ではなくなりますので終了です。
支持脚に触れることは,足を床につけて身体を支持するのに近い動きですので,片脚立位ではないと判断されます。

2・3番目の条件があることは重要なことです。
姿勢保持能力を測る要素として,その持続時間と,重心動揺の大きさがあります。
通常は,動揺が大きければ,持続時間も少なくなるのですが,稀に,激しく動揺するのに,挙げていた足をついてしまうことなく,ずっともちこたえることができるということがあります。
このような状態を片足立ちを保持できているとしていいのかどうかは意見が分かれるところですので,定義が必要になります。
支持脚がずれたり,手が腰から離れるということは,動揺が大きいということを表しており,動揺が大きければ保持はできていないと判断するということを意味します。

リスク管理

転倒に備えて,検者はすぐに支えられるような位置につきます。
検者二人で計測役と支える役を分ければより安全です。

その他

「練習をさせておくとよい1)」と書かれていますが,どの程度の練習を行うのかなどの詳しいことは書かれていません。
支持脚を決めるための試行が練習になるのかもしれません。

姿勢保持の検査は,視覚情報によって結果が大きく変わることがあります。
田口ら2)は,「1.5 m 程度離れた壁に目の高さの視点(印)を設置し,それを注視して片脚立ちを行う。その際,他者や物などが視野に入らないようにする」としています。

閉眼での検査を行えば,より高いレベルでのバランス能力を測定できますが,高齢者の臨床での検査では一般的ではありません。

平均値,カットオフ値

年齢別の平均値

スポーツ庁による令和元年度体力・運動能力調査3)の結果です。
調査対象は明示されていませんが,ADL評価によってテストが実施できるかどうかを判定しているようですので,健康な高齢者が対象になっているようです。

年齢平均値(秒)標準偏差
65-6987.7039.99
70-7473.9742.17
75-7958.9742.43
表 1: 男性の年齢層別の平均値
年齢平均値(秒)標準偏差
65-6989.4939.38
70-7479.4342.29
75-7963.3743.47
表 2: 女性の年齢層別の平均値

片脚立位のカットオフ値

様々な数値があります。

津田ら4)の報告では,65 歳以上の高齢入院患者において,独歩自立の可否を判別するカットオフ値は 4.3 秒(感度 83%,特異度 88%)となっています。
学会発表の抄録ですので研究の詳細が分からないのですが,研究はおそらく単独の病院で行われています。
ですので,この研究結果が他の病院に入院している患者にも当てはまるのかどうかは不明です。

Jalali MM1)らは,転倒についてのカットオフ値は 12.7 秒(感度 63%,特異度 83.5%)としています。
この論文も抄録しか読んでいないため,詳細は分かりません。

理学療法診療ガイドライン6)には「5 秒以内の者は転倒ハイリスク者とされている」とあります。
5 秒がカットオフ値であると読める記述ですが,これはカットオフ値ではありません。
この記述のもとになった研究7)があります。
対象は健康で地域在住の 60 歳以上の高齢者です。
片脚立位の保持時間が 5 秒以上の群と 5 秒に満たない群に分け,3年間追跡して,転倒が生じるのかどうかを観察しています(コホート研究)。
そして,片脚立位の保持時間が 5 秒以内の群は,受診が必要なほどの転倒が,5 秒以上の群よりも多かったという結果です。
この研究では,4 秒で分けた場合や 6 秒で分けた場合の結果がないので,5 秒がカットオフ値であるのかどうかは決められません。
でも,5 秒が目安になることには変わりありません。

運動器不安定症の診断基準8)のなかに,「開眼片脚起立時:15秒未満」という基準があります。

私が調べた範囲では,カットオフ値としての代表的な数値は決められませんが,5 秒〜15 秒あたりが異常の目安になりそうです。

おわりに

今回紹介した検査方法以外にも,様々なバリエーションがありえます。
特に,終了の基準を変えると,結果も大きく変わる可能性があります。
検査を行うときには,方法を統一することが大切だと思います。

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参考文献

1)文部科学省: 新体力テスト実施要項(65歳〜79歳).
2)田口孝行, 内田亮太, 他: バランスの測定法. 理学療法. 2013; 30: 1035-1045.
3)令和元年度体力・運動能力調査結果
4)津田泰路, 加嶋憲作, 他: 片脚立位時間が歩行自立の可否に及ぼす影響 ~高齢入院患者における検討. 日本基礎理学療法学雑誌. 2016; 20: 369.
5)Jalali MM, Gerami H, et al.: Balance performance in older adults and its relationship with falling. Aging Clin Exp Res. 2015; 27: 287-296. doi: 10.1007/s40520-014-0273-4. Epub 2014 Oct 7.
6)理学療法ガイドライン第1版. pp1012.
7)Vellas BJ, Wayne SJ, et al.: One-leg balance is an important predictor of injurious falls in older persons. J Am Geriatr Soc. 1997; 45: 735-738. doi: 10.1111/j.1532-5415.1997.tb01479.x.
8)日本整形外科学会ホームページ: 運動器不安定症とは

2021年4月17日

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