神経学的検査

腱反射の判定方法

投稿日:2018年12月10日 更新日:

腱反射(筋伸張反射)の判定方法について解説します。
けっこういい加減になってしまいがちなところです。

判定の基本

応答の強さを健常者との比較と左右の比較によって判定します。

段階づけ

消失(-),減弱(±),正常(+),やや亢進(++),亢進(+++),著明な亢進(++++)の6段階で判定します。

応答の強さの判定

健常人での平均的な応答(筋収縮)の強さと比べて判定します。
主には関節運動と筋収縮の大きさと速さをみることになります。
客観的で明確な判定基準はないため,主観的に判定することになります。
例えば,強いなと思ったら亢進と判断します。
これでは,人によって判定がバラバラになってしまいそうですが,健常人での応答を十分に経験しているもの同士であれば,思ったほど差はでないものです。
そういうものだということを分かったうえで使うのであれば,十分に実用的だと私は思います。

神経学的な異常の有無と個人差

腱反射の応答の強さは健常人でも個人差が大きく,神経学的な異常がないにも関わらず,非常に強い応答や弱い応答となることがあります。
全く応答がないということもあります。

そういう場合に,神経学的な異常がないのであれば,「正常」と判定する場合があります。
また,神経学的な異常がないのに応答が強い状態を「反射活発」と呼ぶ場合があります。
統一はされていませんので注意が必要です。

個人差があるため,判定がとても難しくなる場合があります。
例えば,もともと応答が弱い人の反射が亢進すると,応答の強さは健常人と同じになってしまい,亢進があるのかどうかが分かりにくくなります。

神経学的な異常の有無の判定が必要になります。
左右差が大きければ,神経学的な異常がある可能性が高くなります。
最終的には,画像所見や麻痺などの他の徴候とあわせて判断することになります。

次に,判定のより具体的な方法や注意点等について書きます。

消失の判定

単に応答がないというだけで消失と判断することはできません。
反射を誘発できていないだけなのかもしれません。
誘発しやすい反射を用いて,反射の増強等を行い,それでも応答がなければ消失と判断します。
誘発しやすい反射は膝蓋腱反射,アキレス腱反射,上腕三頭筋反射,上腕二頭筋反射,回内筋反射で,Babinskiの5大反射と呼ばれています。

反射の増強法については別の記事で解説しています。

減弱の判定

誘発しやすい反射を用います。
誘発しにくい反射では,もともと応答が弱いのですから,減弱しているとは判断しにくくなります。
また,誘発しにくい反射が弱くなると,応答が出なくなり,消失と間違います。
反射の疲労現象(反射の誘発を繰り返したときに,しだいに応答が弱くなる現象)は病的な減弱と判断する材料となります。

亢進の判定

誘発しにくい反射を用います。
誘発しにくい反射が誘発されるのであれば,病的な亢進である可能性が高くなります。
ホフマン反射などのいわゆる病的反射に分類されることのある腱反射は,誘発しにくい腱反射です。

一回の叩打で応答が反復するときは病的な亢進である可能性が高くなります。
クローヌスの出現も病的な亢進の徴候です。

逆転反射

ある反射が減弱あるいは消失し,その拮抗筋や隣接する筋の反射が保たれているかあるいは亢進しているときにみられる現象です。
錯倒反射,背理性反射とも呼ばれます。
例として,逆転上腕二頭筋反射で説明します。
上腕二頭筋腱を叩いたときに,上腕二頭筋反射ではなく上腕三頭筋反射が誘発されるという現象です。
C5,6の限局性障害で上腕二頭筋反射が消失しているが上腕三頭筋反射は保たれている場合に起こります。
上腕二頭筋を叩いたときに,上腕二頭筋反射は消失しているので起こりませんが,叩くことで肘関節がわずかに屈曲し,上腕三頭筋が伸ばされて上腕三頭筋反射が生じます。

判定の別法

理学療法でよく用いられる判定方法2)があります。

(-)消失:まったく腱反射が出現しない場合。
(±)軽度減弱:腱反射が出現するが,程度は減弱している。基本的には出現するが,ときに出現しないことがある。
(+)正常:腱反射の程度は正常である。
(++)軽度亢進:腱反射の程度は亢進するが,筋腱移行部における叩打刺激での反射は亢進しない。
(+++)中等度亢進:腱反射だけでなく,筋腱移行部における叩打刺激での反射も亢進する。クローヌスは出現しない。
(++++)高度亢進:腱反射,筋腱移行部,筋腹中央部での反射がすべて亢進する。クローヌスも出現し,明らかに異常である。

腱を叩く場合と比べて,筋腱移行部や筋腹中央部を叩く場合は十分な伸張刺激が入らず反射が出現
しにくいという性質を利用しています。
しかし,筋腹を直接叩いてしまうと,筋固有収縮などの腱反射ではない筋収縮が生じる場合があるため,注意が必要です。
神経内科医は使わないのではないでしょうか?
この判定方法の信頼性などを調べた研究は見つけることができませんでした。

腱反射とは異なるものなど

懸振性(振子様)反射

筋緊張が低下している場合に起こる現象です。
膝蓋腱反射を,坐位で下腿を垂らして足が床についていない状態で行う場合が典型的です。
大腿四頭筋の腱反射が亢進していなくても,膝屈筋群の筋緊張が低下(被動性が亢進)しているために,膝は大きく伸展します。
その後,下腿は落ちるのですが,固定されておらず,筋緊張も低いので,振子のように揺れてから止まります。
膝蓋腱反射が亢進して反射が反復しているのではありません。
膝蓋腱反射を足が床につく状態で行うと,最初の膝が大きく伸展するところしか見ることができないため,反射が亢進していると間違える場合がありますので注意が必要です。
本当に亢進している時と比べると,最初の膝が伸展するときの速度は遅くなる傾向があり,それで亢進していないと分かることがあります。

詐病や解離性障害によるもの

いわゆる演技をしている状態です。
この場合,刺激してから応答がでるまでの時間が長くて変動します。
これは閉眼でよりはっきりとあらわれます。

表在反射

腱反射ではなく表在反射が起こってしまうことがあります。
この場合,応答が緩徐で長くなる傾向があります。
じわっと収縮する感じです。

参考文献
1)平山惠造: 神経症候学. 文光堂, 1979, pp495-562.
2)鈴木俊明(監修): 臨床理学療法評価法-臨床で即役に立つ理学療法評価法のすべて. エンタプライズ, 2005, pp192-197.
3)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた改訂17版. 南山堂, 2014, pp67-93.

2019年6月30日 加筆修正
2018年12月10日

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