神経学的検査

Brunnstrom法ステージの判定基準

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はじめに

Brunnstrom法ステージ(ブルンストロームステージ,Brunnstrom recovery stage test)とは,片麻痺の検査の一つで,随意運動の回復過程に沿って,病的共同運動が出現した後に,分離運動が完成していく過程をステージ1~6(I~VI)まで段階づけるものです。

理学療法士にとってはお馴染みの評価です。

しかし,文献毎に少しずつ異なるものが載っていて,「間違っているのでは?」と不安になるほどです。

そこで,この記事では,原著1,2)の内容に忠実になるよう注意しながら,Brunnstrom法ステージの判定基準について解説したいと思います。

判定基準は,上肢,手指,下肢のそれぞれにあります。
各動作は,原則として促通はせずに行わせます。
各ステージの間で絶対的な境界線を引くことはできませんので,ステージ IV – V といったあいまいな表現も可能です。

上肢(肩および肘)の判定基準

肘掛けのない椅子で行います。

ステージ I 随意運動と連合反応の両方で筋収縮が全くない。筋緊張は低下していて,他動運動では,患側上肢が重く感じられ,抵抗感はほとんどあるいは全く感じられない。

ステージ II 共同運動,またはその要素が,連合反応あるいは随意運動によって現れる。たいてい,屈筋共同運動の方が,伸筋共同運動よりも先に現れる。関節運動として現れる必要はない。痙性が現れるが,著明ではない。

ステージ III 共同運動が随意的に行われ,はっきりと関節運動を示すようになる。痙性の程度は最大となる。屈筋共同運動を先に行わせる。「耳のすぐ上を触ってください」などと指示する。次に伸筋共同運動を行わせる。被検者の両膝の間に検者の手を置き,「この手を触ってください」などと指示する。

ステージ IV このステージを表す運動は3つ。痙性は減少し始める。
(1)手を腰の後ろへまわし,手背を腰にあてる。通常は座位で行う。
(2)肘伸展位を保ったまま肩関節を90°屈曲する。
(3)肘関節屈曲90°を保ったままの前腕の回内と回外。左右同時に行って比較する。肘を体側につけたままにする。

ステージ V このステージを表す運動は3つ。痙性は減弱する。
(1)肘関節伸展位と前腕回内位を保ったまま肩関節を90°外転する。上肢を楽に垂らしたところから始める。
(2)肘伸展位を保ったまま,肩関節を180°(またはその近くまで)屈曲する。開始肢位は90°屈曲位。
(3)肘伸展位での前腕回内,回外。両側同時に行う。通常のスピードでできるのであれば,さらに速いスピードで行ってみる。肩関節は屈曲90°または外転90°とする。外転位の方が難しい。

ステージ VI 分離した関節運動が自由にできる。運動は,協調性があり,正常かほぼ正常に近い。精密な検査やある一定の条件下では,多少のぎこちなさがみられる。痙性はほぼなくなるが,素早い動きを要求されると,痙性の影響がみられることがある。

手指の判定基準

Brunnstromは手指のステージ分類を上肢のようには行わないとしています。
しかし,「手指機能の回復と上肢の回復段階とを相関させるならば,分類は下記のようになるだろう」と述べて,手指の分類を挙げています。
正式な分類ではないと思われますが,それが手指のステージの判定基準として定着しています。

ステージ I 弛緩性麻痺。

ステージ II 自動的手指屈曲がわずかに可能か,全然できないかである。

ステージ III 全指同時握り,鉤形握りで,握ることはできるが,離すことができない。随意的手指伸展不能,反射による伸展は可能である。

ステージ IV 横つまみと,母指を動かして離すことは可能,半随意的手指伸展は少範囲で可能である。

ステージ V 対向つまみ,筒握り,球握りはだいたいできる。動きは不器用で,機能的な使用は制限されている。随意的な手指伸展は可能だが,その範囲は一定しない。

ステージ VI すべての種類の握りが可能になり,巧緻性も改善し,全可動域の伸展ができる。個別の手指の運動は,健側に比して正確さは劣るけれども可能である。

下肢の判定基準

ステージ I 弛緩性麻痺。

ステージ II 下肢のわずかな随意運動。

ステージ III 座位,立位での股,膝,足の屈曲(屈筋共同運動)。

ステージ IV 座位で,膝を90°以上屈曲して,足を床の後方にすべらす。座位で踵を床から離さずに随意的に足背屈可能。

ステージ V 立位で,股伸展位,またはそれに近い状態で膝屈曲を分離運動として可能。立位で,膝伸展位で足を少し前方に踏み出して,足背屈が分離運動として可能。

ステージ VI 立位で股外転が骨盤の挙上による範囲を超えて可能。座位で,内側および外側ハムストリングスの交互運動による膝関節の内外旋が,足内反と足外反を伴って可能。

補足説明

複数の運動課題があるステージでは,そのうち一つでもできればいいのか?それとも,全てできる必要があるのかは,記載がないため分かりません。
しかし,一つでもできればそのスタージだと判定することが多いようです。

痙性の定義は明確にされていません。
そして,痙性はスピードテストで評価することになっています。
スピードテストは,手を膝と顎の間で反復させるか,大腿と反対側の膝の間で反復せる動作を,5秒間で何回できるかを測ります。
反復回数が少なければ痙性があると考えます。
今の日本の理学療法士が使う痙性とは違う意味で使っているようです。

ステージ III における共同運動は,共同運動に含まれる全ての関節が動く必要はなく,全可動範囲で動く必要もありません。

共同運動の開始肢位は明記されていません。

上肢の屈筋共同運動で触るところが,耳に後ろ1)だったり,耳の上2)だったりします。
どちらでも同じようなものだとは思います。

「肘伸展位を保つ」という基準がありますが,わずかに屈曲した場合にどう判断するかは記載がありません。

上肢のステージ V の前腕の回内外は交互(alternately)に行うと書かれています。
反復するとは書かれていないのですが,スピードを上げることを考えると,何回か反復したほうが分かりやすいと思います。
また,肩関節の肢位は,文献 1)では屈曲90°と外転90°の両方,文献 2)ではどちらかを行うとなっています。

手指の ステージ I は「弛緩性麻痺」とだけ書いてあります。
弛緩性麻痺とは筋緊張低下を伴う麻痺ですが,随意運動の程度は弛緩性麻痺という言葉には含まれていません。
つまり,ステージ I の基準に随意運動のことが含まれていません。
手指のステージ II は,「自動的手指屈曲がわずかに可能か,全然できないか」です。
「全然できない」のであれば,上肢に合わせるとステージ I にするのが自然ですので,矛盾している感じがします。
「自動的」が何を表しているかも曖昧です。

基準の曖昧さは,他にもいくつかあります。
前述の通り,「各ステージの間で絶対的な境界線を引くことはできない」としているものですので,曖昧なまま使うことになると思います。

おわりに

さて,このBrunnstrom法ステージですが,Brunnstrom先生は,感覚検査などを含んだ総合的な評価バッテリーとして発表しています。
そして,その評価表は単純にステージを記録するようにはなっていません。
共同運動の記録は各関節が動いた角度を記録するようになっていたりします。
日本で使われているBrunnstrom法ステージは,ステージを判定するところのみを抜きだし,日本独自で発展したもののようです。

参考文献

1)佐久間穣爾, 松村秩(訳): 片麻痺の運動療法. 医歯薬出版, 1984,pp38-62.
2)Signe Brunnstrom: Motor Testing Procedures in Hemiplegia: Based on Sequential Recovery Stages. Phys Ther. 1966; 46: 357-375.

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2020年9月20日

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