神経学的検査

(上田の)12 段階片麻痺機能テストの実際(4)サブテスト – 下肢

投稿日:2018年10月14日 更新日:

(上田の)12 段階片麻痺機能テストに関しての連続した4つの記事の4番目です。
最初から順番に読むことをお勧めします。

(上田の)12 段階片麻痺機能テストの実際(1)実施手順など
(上田の)12 段階片麻痺機能テストの実際(2)サブテスト – 全体
(上田の)12 段階片麻痺機能テストの実際(3)サブテスト – 上肢
(上田の)12 段階片麻痺機能テストの実際(4)サブテスト – 下肢

この記事では下肢のサブテストについて解説していきます。

下肢No.1

図では,徒手抵抗は下腿遠位部にかけていますが,膝に痛みがある場合は,私は膝より上の大腿遠位部に抵抗をかけます。

内転筋群の収縮をみるとありますが,触診がしやすい長内転筋をみることが多いと思います。

下肢No.2

学生がこのテストを行うと,MMTでの習慣で非麻痺側下肢を固定することがあります。
非麻痺側下肢の随意運動に伴う連合反応が生じる可能性がありますので,固定はしないほうがいいでしょう。

テストを行う前の動作観察等で麻痺側下肢の随意運動が確認できている場合は,このNo.2のテストは省略します。
また,上肢のときと同じように,随意収縮を確認して,なければ連合反応を見るという流れの方が効率がいいでしょう。

下肢No.3

踵をベッド等につけたままにするのか,浮いてしまってもいいのかは書かれていませんが,最初の論文には「固いテスト台の上で行う」とありますので,踵をつけたまま滑らせることを想定しているようです。

踵がベッド等の床面に対して極端に滑りやすい状態だと,随意収縮がなくても重力のみで伸展してしまいます。
重力で落ちていく場合は,動きの速度の変化(加速度)で直観的に分かります。

靴下によって滑りやすさが変わります。
素足で統一した方がいいでしょう。

出発肢位は「膝を90°曲げ,自然に股外転,外旋した位置(膝が外側に開く)におく」とありますが,この肢位を保持できず,膝が外側に倒れてしまうこともよくあります。
そういう場合に私は,膝の外側を支えて倒れないようにしています。
しかし,介助してもいいのかどうかは書かれていません。
出発肢位を保持できなくても,共同運動や分離運動ができる人がいるので,私は介助して行っています。
介助する際,足底部(特に母趾球)を持ってしまうと陽性支持反応が生じる可能性がありますので,そこは持たないようにしています。

下肢No.4

出発肢位は「股伸展位(0°〜20°)(伸筋共同運動パターン)」とあります。
伸筋共同運動パターンであるならば,股関節は伸展位だけでなく,内転,内旋位としなければならないのかもしれませんが,明記されていません。
下肢No.3では外転,外旋を指示していて,No.4にはないところから,内転,内旋位にはしなくていいと解釈できるかもしれません。
私はとりあえず,両足を閉じたやや内転位を出発肢位としています。

下肢No.5

骨盤を浮かせることで下肢を挙上することがあります。
学生のうちは見落としがちですので注意しましょう。

股関節の外転,外旋が起こる場合がありますが,これらに関しての規定はありません。
外転・外旋位でなければ股関節の屈曲ができないということもあり得ますが,外転・外旋の程度に関係なく判定することになります。
出発肢位についても,股関節の回旋や内外転についての規定がありません。
私は,中間位にするようにしています。

下肢No.6

股関節の外転・外旋が生じて,足の外側は床についていても,内側は浮いているということがありますので注意が必要です。

出発肢位については,「膝関節90°の座位」としか書かれていません。
これだと足関節の角度は決まりません。
しかし,最初の論文には,「大腿部水平に保ち」とあります。
膝関節屈曲90°で大腿部を水平に保てば,足関節は中間位となります。
出発肢位での足関節は中間位にするということでいいと思います。
昇降式のベッドや足台が必要になります。

靴は脱いだほうがいいでしょう。
踵の高い靴(ドロップの高い靴)では,膝関節90°の座位では足関節が底屈位となり,出発肢位が変わってしまします。
靴下も脱いだほうがいいでしょう。
靴や靴下によって足底の滑りやすさが変わってしまいますので,素足で条件を統一するほうがよさそうです。
床面も統一しなければならなくなりますが,いつも理学療法室で行うのであれば,あまり気にする必要はありません。

図の下の文字「出発肢位 90° 100° 踵は離れないよう」の位置がずれている教科書(2)があります。
「90°」が出発肢位を示す線の真下にあるのが正しい図です。

下肢No.7

出発肢位での足関節は,図に0°という表記があるところから,中間位であるということでしょう。
股関節と膝関節に関しては何も書かれていません。
No.6と7はどちらもステージIVをみるテストで,連続して行うことが多いでしょうから,No.7の出発肢位はNo.6と同じでいいでしょう。
靴は脱いでもらいます(下肢No.6参照)。

ただし,踵と前足部でソールの厚さに差がない靴(ゼロドロップ)であれば,靴を履いたままでもいいのかもしれません。

下肢No.8

膝伸展位で行うNo.5とNo.9では,膝関節が20°以上屈曲してはいけないという規定がありますが,このNo8にはありません。
しかし,最初の論文には,膝関節20°という規定が書いてあります。
規定がなくなった可能性があるのですが,No8でも同じ条件があるのが自然ですので,私は膝関節が20°以上屈曲してはいけないということにしています。

ちなみに,最初の論文には「股関節,膝関節が-20°以上伸展位を保つ」とあります。
これは伸展-20°であれば,規定を満たしていることになります。
一方で,膝関節が20°以上屈曲してはいけないと言ってしまうと,膝関節伸展-20°と同じ角度である膝関節屈曲20°は規定を満たしていないことになります。
論文の著者は,「以上」という言葉を正確には使っていないようです。

No.5と同じで,股関節の回旋と内外転の規定がありません。
例えば,股関節中間位だと背屈ができないが,股関節外旋位にすると背屈ができるということがあります。
私は股関節中間位をできるだけ保ってもらうようにしています。
しかし,規定がないのですから,股関節が中間位ではなくても,背屈が5°以上できれば十分と判定しています。
もし,外旋が20°くらいになってしまったら,それは明らかにテスト動作とは異なりますし,20°という数字は度々出てきて覚えやすいので,私は20°以上の外旋は不十分と判定することにしています。

下肢No.9

出発肢位まで自動で動き,自力で保持できることが前提であり,下腿を検者が保持するということはしません。

出発肢位は,足関節中間位です。
学生は,底屈位になっていることをよく見落とします。

このテストでも,股関節の回旋と内外転の規定がありません。
股関節はできるだけ中間位を保ってもらいますが,それに関係なく判定します。
No.8で述べたように,回旋が20°以上になると,明らかにおかしいと思います。
また,内転で反対側の下肢にあたる角度が15°程度ですので,15°以上の内転は不十分としています。
外転は,下肢予備No.1で外転20°を十分としているところから,20°の外転は明らかに外転しているとみなせると解釈して,20°以上の外転は不十分と判定するようにしています。

膝伸展位での股関節屈曲の可動域が足りない人は少なくありません。
また,ラゼーグ徴候の動きであり,痛みが出る場合もあります。
痛みが出ないよう注意する必要があります。

下肢No.10

股関節内外転の規定がありません。
私は,内外転については中間位を保ってもらうようにしています。
股関節の内旋に伴って股関節の内外転が生じた場合についてはNo.9を参照してください。

「股関節60°〜90°屈曲位で大腿部を水平にし,膝関節90°±10°を保って行う」とあります。
この表現からは,大腿部水平を保持しなければならないのかがはっきりしません。
つまり,股関節を内旋するときに,股関節が屈曲して大腿部が上がってしまってもかまわないのかが分りません。
おそらく,股関節内旋のみを分離して行えるのかをみるテストでしょうから,大腿部は水平を保つ必要があると思います。
多少の屈曲は許してもいいのでしょうが,その規定はありません。
私は,大腿後面が座面から離れるのが目視ではっきりと確認できるようなら不十分としています。

股関節の内旋のみを行っているのであれば,足部は床から離れます。
学生にあまり説明せずにさせてみると,足が床についたままになることがあります。
そういう学生は,運動軸の概念が定着していないのかもしれません。

下肢No.11

股関節内旋を速く反復しようとすると,股関節の外転や屈曲が加わってしまう傾向があるようです。
外転や屈曲は起こらないようにしてもらいますが,多少は許すことになると思います(No.10参照)。
反復したときに,足が浮いたままになっているようであれば屈曲しすぎと判断してもよさそうです。

上肢No.11でも書きましたが,内旋して中間位に戻すという往復運動を1回として数えます。
説明が省略されているようですが,最大の速さで測定します。

有効桁数は1の位までで,回数を検者が声を出して数えないのは,上肢と同じです。

下肢予備No.1

最初の論文には「外旋による外転動作の代償は除く」とあります。
図は外旋位に見えますが,股関節の内外旋は中間位に保ってもらいます。
どの程度の外旋で不十分と判定するのかは書かれていません。
下肢No.8で書いたように,私は20°を目安にしています。

骨盤の挙上は起こってもいいのですが,外転角度は骨盤と大腿骨のなす角でみます。

下肢予備No.2

十分の判定基準が30°〜50°となっているもの(1,2)がありますが,30°〜5°が正しい判定基準です。

股関節の回旋と内外転についての規定がありません。
下肢No.9を参照してください。

下肢のテストNo.9で書きましたが,ハムストリングスが伸びなくて膝を伸展できない場合がありますので注意が必要です。

下肢予備No.3

足の長径程度まで前に出してもよいとなっています。
図のように検査する足を一歩前に出すということです。
「出してもよい」となっていますので,足を出さないのが本来の方法ということだと思いますが,図は足を出した図になっています。
ちょっと不自然な気がします。

足の背屈は中間位からの背屈角度でみます。
図は底屈位から中間位までの背屈となっており,誤解を招きやすい図になっています。
また,図の矢印の向きが逆です。

最初の論文では「上肢の支持は可」となっています。

股関節の外旋に関しては,下肢No.8を参照してください。

下肢予備No.4

最初の論文では「上肢の支持は可」となっています。

股関節の回旋や内外転についての規定がありません。
これまで述べてきたように,回旋20°以上,内転15°以上,外転20°以上で不十分と判定することにしています。

下肢予備No.5

図をみると上肢支持が描かれていますので,これは上肢支持のうえで行うと思ってしまいますが,最初の論文では「上肢の支持は可」となっており,必ず上肢支持が必要ということではありません。

「外転角は骨盤に対する動きで測定し,骨盤の傾きにだまされないように気をつける」とあります。
これを読んで,骨盤が傾けば十分と判定できないと勘違いする学生が時々います。
元の論文では「Hip hikerを利用してもよい但し外転角度は骨盤と大腿骨のなす角度」とあります。
骨盤の挙上があってもよいが,外転角度は骨盤と大腿骨のなす角を計るということです。

股関節の回旋についての規定がありません。
外転に伴って外旋が起こることがあります。
下肢予備No.1と同じ動きですので,同じように考え,20°以上の外旋は不十分としています。

下肢予備No.6

「直立位で行う」とありますが,意味がよく分かりません。
最初の論文では「出発肢位は中間位から直立位で行う」とあり,さらによく分かりません。
図のように行えば問題はないと思います。

「足先で床を10回たたくのに要する時間」とあります。
こう言われると,私は背屈位からスタートしたくなります。
私だけでしょうか?
「テスト予備3の動作」ということですから,足関節中間位から背屈して中間位に戻すのを1回として測ります。

有効桁数は1の位までで,回数を検者が声を出して数えないのは,これまでと同じです。

おわりに

私独自の解釈をだいぶ書いてしまいました。
あくまでも個人の意見ですので,最終的には各自で判断してください。
他に詳しい文献があるのかもしれません。
見つかれば,この記事も改訂していきたいと思います。

参考文献
1)上田敏: 片麻痺機能テスト, リハビリテーション医学全書14 脳卒中・その他の片麻痺(第2版). 福井圀彦(編), 医歯薬出版, 東京, 1994, pp75-90.
2)吉尾雅春: 中枢神経疾患・障害に対する評価の進め方(総論)- 脳血管障害を例として, 理学療法ハンドブック改訂第4版第1巻. 細田多穂, 柳澤健(編), 協同医書出版社, 2010, pp787-852.
3)上田敏, 福屋靖子, 他: 片麻痺機能テストの標準化-12 段階「片麻痺回復グレード」法. 総合リハ. 1977; 5: 45-62.
4)大畑光司, 佐久間香: 中枢神経系検査測定法(1)- 片麻痺(錐体路徴候), 15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 理学療法評価学II. 石川朗(編), 中山書店, 2013, pp27-38.
5)佐久間昭, 上田敏, 他: 片麻痺機能テストの標準化に関する研究(1)- 研究方法. 臨床薬理. 1976; 7: 271-280.
6)佐久間昭, 上田敏, 他: 片麻痺機能テストの標準化に関する研究(2)- 基礎的吟味. 臨床薬理. 1976; 7: 281-292.
7)佐久間昭, 上田敏, 他: 片麻痺機能テストの標準化に関する研究(3)- 定量的吟味と検証. 臨床薬理. 1976; 7: 293-308.

2018年10月14日

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