足趾手指試験:検査方法の詳細

はじめに

足趾手指試験のやり方について詳しく解説します。

足趾手指試験とは

足趾手指試験は協調運動障害(失調症)の検査です。

被検者の足の母趾で目標物に触れてもらい,下肢の動きを観察する検査です(図 1)。

鼻指鼻試験指鼻試験と似たような検査で,測定異常,運動分解,振戦などを観察します。

足趾手指試験
図 1: 足趾手指試験

検査方法の詳細

目標物

検者の示指1)を触るのが一般的です。

打腱器2)でもいいですし,棒状のものであればなんでもいいと思います。

指を強く蹴られるリスクがありますし,靴を履いたまま行うこともありますので,指以外の器具を使う方がいいのかもしれません。

姿勢

背臥位で行います。
目標物(検者の示指など)が見えやすいよう,枕を高めにしたり,ギャッチアップしたりします。

座位で行うこともできます。
座位では,背もたれの有無や上肢支持の有無によって,座位を不安定にして難易度を上げることができます。

下肢の動かし方(指の位置)

検者の示指は,膝関節屈曲位で到達できるような位置におきます。
文献1-4)には膝関節屈曲位にする理由は書かれていません。
おそらく,膝伸展位ではより強い筋力が必要になり,被検者の負担が大きくなるからだと思います。
被検者の筋力に問題がなければ,膝屈曲位と伸展位で動きを比較してもいいでしょう。

検者の示指を様々な方向に移動させ,被検者の母趾でこれを追わせます。
検者の示指を追って動き続けてもいいですし,検者の示指が移動して止まったところに母趾を移動して止めてもいいです。
また,下肢を開始肢位に戻す場合と戻さない場合がありえます。
特に決まりはないようです。
理学療法士であれば,どの筋がどのようにどれくらい働くのかを分析すればいいだけですので,評価したいことに合わせて運動方向などを決めます。

観察のポイント

足趾が動く軌跡を観察します。
協調運動障害があると,足趾は揺れながら進みます。
目標に触れるときにも揺れます(振戦)。

運動分解がよく起こります。
例えば先に股関節だけが動き,後から膝が動いたりします。

目標を通り過ぎる測定過大や,目標の手前で止まる測定過少などの測定異常を観察します。

正常であれば,股関節,膝関節,足関節が同時に協調して動き,足趾の軌跡は滑らかで,正確に目標に到達します。

この足趾手指試験の動きは,筋緊張の評価であるプレーシングに似ていますので,筋緊張の評価としても行うことができます。

リスク管理

重量のある下肢が意図しない方向に勢いよく動いてしまうリスクがあります。

体幹を適度に固定できないと,腰部の損傷につながるかもしれませんので,事前に体幹を評価しておく必要があります。

足をどこかにぶつけるかもしれません。
ベッド柵はない方がいいですし,硬いベッドは避けます。

検者,被検者ともにベッドから転落する恐れもありますので,広いベッドで行います。
また,検者の位置は,被検者に蹴られないような位置にします。

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おわりに

判定の仕方や理学療法士ならではの考え方は,鼻指鼻試験についての記事で書いています。

その他の協調運動障害の検査については以下の記事でまとめています。

四肢の小脳性運動失調(協調運動障害)の要素

協調運動障害における運動課題の難易度を決める要素

鼻指鼻試験の詳細(理学療法士が行う場合)

指鼻試験:方法,鼻指鼻試験との違い

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参考文献

1)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた(改訂18版). 南山堂, 2020, pp141-156.
2)岩田誠: 神経症候学を学ぶ人のために. 医学書院, 2004, pp258-261.
3)内山靖: 協調運動障害, 理学療法ハンドブック改訂第4版第1巻. 細田多穂, 柳澤健(編), 協同医書出版社, 2010, pp605-635.
4)鈴木俊明(監修): 臨床理学療法評価法-臨床で即役に立つ理学療法評価法のすべて. エンタプライズ, 2005, pp252-263.

2021 年 3 月 27 日

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