外眼筋の解剖学での作用と検査での運動方向が異なることについて

はじめに

解剖学にテキストにある外眼筋の作用と,神経内科等のテキストにある外眼筋の検査における運動方向が異なることについて,イラストを使って解剖学的に説明します。

まずは,解剖学のテキストにある外眼筋の作用から説明していきます。

外眼筋の走行

大まかな走行を図 1 に示します。

外眼筋の走行
図 1: 外眼筋の走行1)

総腱輪からでた眼筋はまっすぐ前に走るのではなく,外側に向かって斜めに走ります。
ですので,眼球に対する力も斜めになります。

各筋の作用

上直筋の作用(図 2)

上直筋は眼球の上方に付着し,後方に引きますので,上転に作用します。
さらに,前方に付着し,中心よりも内側を走りますので,内転と内側方回転に作用します。
全体としては,眼球は内上方を向きます(右眼が左斜め上をを見ます)。

上直筋と下直筋の作用
図 2: 上直筋と下直筋の作用2)

下直筋の作用(図 2)

眼球の下方に付着し,後方に引きますので,下転に作用します。
さらに,前方に付着し,中心よりも内側を走りますので,内転と外側方回転に作用します。
全体としては,眼球は内下方を向きます(右眼が左斜め下をを見ます)。

内側直筋の作用(図 3)

内側に付着しますので内転に作用します。
ただし,作用する方向は軸に対して完全に真っ直ぐではないため,他の方向にも動くはずですが,テキスト等では無視されています。

内側直筋と外側直筋の作用
図 3: 内側直筋と外側直筋の作用2)

外側直筋の作用(図 3)

外側に付着しますので,外転に作用します。
内側直筋と同じく,作用する方向は軸に対して完全に真っ直ぐではないため,他の方向にも動くはずですが,テキスト等では無視されています。

上斜筋の作用(図 4)

眼球の上方に付着し,前方に引きますので,下転に作用します。
さらに,後外側に付着し,内側に引きますので,外転と内側方回転に作用します。
全体として,眼球は外下方を向きます(右眼が右斜め下をを見ます)。

上斜筋と下斜筋の作用
図 4: 上斜筋と下斜筋の作用2)

下斜筋の作用(図 4)

下斜筋は眼球の後外側に付着し,眼球の下に回り込んで前内側の方向に走ります。
眼球の下から前に引くことになりますので,上転に作用します。
さらに,後外側に付着し,内側に引きますので,外転と外側方回転に作用します。
全体として,眼球は外上方を向きます(右眼が右斜め上を見ます)。

外眼筋の神経支配

神経支配もついでに確認しておきます。

  • 上直筋:動眼神経
  • 下直筋:動眼神経
  • 内側直筋:動眼神経
  • 外側直筋:外転神経
  • 上斜筋:滑車神経
  • 下斜筋:動眼神経

外眼筋の作用のまとめ

図 5 に示します。

外眼筋の作用
図 5: 外眼筋の作用

上述の外眼筋の作用は,図 2 〜 4 に示したように,眼が正面を向いているときの,各眼筋が単独に働いたと仮定した場合の作用です。

実際には各外眼筋は共同して働きます。
そして,眼球の向きが変わると,外眼筋の走行と運動軸の関係が変わるため,作用も変わってしまいます。

ですので,外眼筋の検査をする場合,話はややこしくなります。

外眼筋の検査

運動方向と検査する筋の関係7)を図 6 に示します。

眼球運動の検査
図 6: 眼球運動の検査

図 5 と比べると,上直筋と下斜筋,下直筋と上斜筋が逆になっています。
例えば,上直筋には眼球を内上方に動かす作用があるのですが,検査では眼球を外上方に動かすこと上直筋をみることになっています。
ただし,検査の場合は,眼球を斜めに動かすのではなく,側方に動かして,そこから上下に動かすとことになっています。

側方に動かしてから上下に動かすとどうなるのかを,上直筋の場合で,図を使って説明します。

上直筋の検査における筋の走行と運動軸の関係
図 7: 上直筋の検査における筋の走行と運動軸の関係

眼球が外転し,上下転の軸と上直筋の走行が直角になると,上直筋は上転だけに作用します。
外転位から上転するとき,上転の作用がある下斜筋が働いてしまうと,眼球はさらに外転してしまうため,上直筋が主に働くことになります。
ですので,上直筋を検査することになります。

下直筋,上斜筋,下斜筋についても考え方は同じです。

おわりに

検査では逆になるというややこしい状況なのですが,MMT のテキスト5)では逆にしていません。
また,神経内科のテキストでは,検査での運動方向が各外眼筋の作用であると説明している場合もあります。
文献を読む際には,かなりの注意が必要です。

あわせて読みたい

動眼神経の走行と働き
滑車神経の走行と働き
外転神経の走行と働き

参考文献

1)越智淳三(訳): 解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001, 549.
2)金子丑之助: 日本人体解剖学下巻(改訂19版). 南山堂, 2008, 490-496.
3)秋田恵一(訳): グレイ解剖学(原著第4版). エルゼビア・ジャパン, 2019, 759-764.
4)高田雄介: 眼球運動検査. 眼科ケア. 2016; 18: 26-32
5)津山直一, 中村耕三(訳): 新・徒手筋力検査法(原著第9版). 協同医書出版社, 2015, 284-289.
6)馬場元毅: 絵でみる脳と神経 しくみと障害のメカニズム 第3版. 医学書院, 2012, pp165-168.
7)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた(改訂18版). 南山堂, 2020, pp111-114.

2021年7月9日

コメント

タイトルとURLをコピーしました