神経学的検査

腱反射の増強法(腱反射を出やすくする方法)

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腱反射を増強する方法(腱反射を出やすくする方法)について解説します。
イェンドラシック法が有名ですが,その他の方法もとりあげ,体系的に解説します。

なぜ反射を増強させるのか

腱反射が消失していると判定するときに反射の増強が必要です。
誘発しやすい反射を用いて,反射の増強を行い,それでも応答がなければ消失と判断します。
腱反射の判定については別の記事で解説しています。

適切な刺激

まずは,適切な検査手技であることが大前提です。

腱反射は速い伸張に反応する反射です。
スナップをきかせて,打腱器を速く振り,適度な強さで叩きます。

刺激時間は短い方がいいので,打腱器を押しつけるようにはせず,叩いた後は素早く引きます。

脂肪が多い部位や,深部の筋では,腱を触知しその指を叩きます。

筋・腱が伸張される方向に叩きます。

以上の基本的な手技を踏まえたうえで,叩く強さや方向を調節すると,反射は出やすくなります。

また,十分な刺激を与えるため,できるだけ検査する部位を露出します。

精神的な緊張をゆるめる

緊張感や不安感を取り除くというようなことが教科書にはよく書かれています。
実際,リラックスしている方が腱反射は出やすい印象があります。
しかし,精神的な緊張が腱反射を抑制するメカニズムについて書かれている文献はみつけられていません。
あとで説明する筋緊張への影響もあるかもしれません。

検査部位の露出の仕方がよくなかったり,変な姿勢にしてしまったりすると,恥ずかしさで緊張させてしまうことがあります。

腱反射とは関係なく,被検者(患者)に精神的,心理的な負担をできるだけかけないということは,とても大切なことです。

適度な筋緊張

筋が弛緩しすぎていれば,腱反射の受容器である筋紡錘まで伸張刺激が届きません。
緩みきった筋は,少し伸ばしたくらいでは緩んでいることには変わらず,筋紡錘も伸びません。
また筋が緊張しすぎていれば,叩いても筋が伸びないため,筋紡錘を伸ばすことができません。

多くの場合,筋緊張が低い方が反射は出やすくなります。
抗重力位をできるだけ避けます。
また,検査する四肢を支持する面が広くなるよう,保持の仕方や,クッション等での支持を工夫します。
精神的な緊張で筋緊張があがらないようにします。
また,被検者にはできるだけ力を抜くよう指示します。

関節にストレスがかかる肢位にすると,筋緊張が上がって反射が出にくくなる傾向があります。
痛みが出る肢位も同じです。
例えば,上腕二頭筋反射を行うとき,検者が被験者の前方ではなく側方から上肢を保持しようとすると,肩関節外旋位を強制することになります。
外旋の最終域に近くなるほどストレスを感じて筋緊張があがり,反射が出にくくなることがあります。
検査の前に運動時痛の有無を確認することも大切です。

検査する筋を適度な伸長位すると,反射が出やすくなることがあります。
筋緊張の非神経要素を調節することになります。
例えば,アキレス腱反射では足関節底屈位では出にくく,背屈位にすると出やすくなる傾向があります。
腱を指で押さえてその指を叩くことがありますが,これは筋を伸張するためでもあります。

検査する筋が随意的に収縮していると腱反射は出にくくなります。
しかし,緊張が低すぎる場合に,軽い随意収縮を行わせると反射が出やすくなることがあります。
例えば,膝蓋腱反射では,膝軽度屈曲位で空間に保持させると反射が出やすくなることがあります。
検査する筋の拮抗筋の随意収縮も反射を出にくくします。
*随意収縮の影響は筋緊張だけの問題ではありませんが,分類しにくかったため,ここで書いています。

姿勢反射を利用すると筋緊張を変えることができます。
例えば,顔の向きを変えると,非対称性緊張性頚反射(ATNR)で筋緊張が変わります。
顔も向きを変えることには,次にあげる注意をそらす効果もあります。

注意をそらす

検査していることや検査部位に注意が向くと,反射は出にくくなります。
上位中枢の影響のようですが,具体的なメカニズムについて書かれた文献は見つけられていません。

叩くタイミングが分からないようにします。
また,検査以外のことに注意を向けてもらいます。
会話をしながら不意に叩くようにするといいでしょう。
目が合った瞬間に叩くと効果的ですが,検査部位を見ずに叩くことになり,ちょっとした職人技になります。
目を閉じてもらうのもいいでしょう。

叩きたい部位に正確に打腱器を当てたいと思ったとき,叩く部位を指で触ってから叩いてしまうことがあります。
学生は無意識にやってしまいがちです。
これをすると,触られた後に叩かれるというリズムができて,叩くタイミングが分かりやすくなります。

イェンドラシック手技 Jendrassik maneuver

両手を胸の前で鉤握りで引っ掛けて組んでもらい(下図),合図したらこれを左右に引っ張るように指示し,引っ張った瞬間に叩きます。

jendrassik

注意をそらしたり,筋緊張をあげる効果があるとされていますが,詳しいことは分かっていないようです。
この方法は,要するに検査部位以外で等尺性収縮を行わせることですので,様々な方法で応用することができます。
上肢の反射であれば歯をかたく噛みしめてもらいます。
あるいは,反対側の手で検者の肩を押してもらう方法もあります。
膝立ち位でアキレス腱反射を行うときには,両手で壁を押してもらったりします。

応答(筋収縮)を見落とさない

これは増強法ではありませんが,初心者では収縮に気づいていないだけのことも少なくないので,最後にあげておきます。
関節運動だけでなく,筋腹や腱の動きを観察したり,触知したりするといいでしょう。
筋の収縮を触知するのは,理学療法士の基本的なスキルですので,しっかり練習する必要があります。
筋の収縮よりも弛緩する様子の方が見えやすいことがあります。

おわりに

反応がでなければやり方を変えることが大切です。
何も考えずに同じことを繰り返しても結果は変わりません。
当たり前のことですが,,,

参考文献

1)平山惠造: 神経症候学. 文光堂, 1979, pp497-500.
2)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた(改訂17版). 南山堂, 2014, pp68-69.
3)鈴木則宏: 神経診察クローズアップ. メジカルビュー社, 2011, pp114.
4)岸川典明, 居村茂幸, 他: Jendrassik氏反射増強法によるH反射の変化-波高値と潜時の比較. 運動生理. 1994; 9: 199-201.

2019年6月30日

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