Catherine Bergego Scale(CBS)- 半側空間無視患者のADL評価

はじめに

半側空間無視(unilateral spatial neglect ; USN)では,机上の検査で無視症状が出なくても,日常生活では無視症状が出ることがあります。
そのため,ADL 評価は重要です。

Catherine Bergego Scale(CBS)は半側空間無視患者の ADL 上での問題点を見つけるための評価です。

観察評価と自己評価からなります。
自己評価により病態失認も評価することができます。

CBSの評価方法

CBS観察評価

ADL に関する評価項目が 10 項目あります。
治療場面や実際の ADL 場面での観察にて採点します。

観察評価における各項目の得点の合計が 1 ~ 10 点を軽度の無視,11 ~ 20 点を中等度の無視,21~30 点を重度の無視とします。

評価項目

  1. 整髪または髭剃りのとき左側を忘れる。
  2. 左側の袖を通したり,上履きの左を履くときに困難さを感じる。
  3. 皿の左側の食べ物を食べ忘れる。
  4. 食事の後,口の左側を拭くのを忘れる。
  5. 左を向くのに困難さを感じる。
  6. 左半身を忘れる(例:左腕を肘掛にかけるのを忘れる。左足をフットレストにおき忘れる。左上肢を使うことを忘れる。)
  7. 左側からの音や左側にいる人に注意することが困難である。
  8. 左側にいる人や物(ドアや家具)にぶつかる(歩行・車椅子駆動時)
  9. よく行く場所やリハビリ室で左に曲がるのが困難である。
  10. 部屋や風呂場で左側にある所有物を見つけるのが困難である。

評価点
0:無視なし
1:軽度の無視(常に右側から探索し始め,左側へ移るのはゆっくり,躊躇しながらである。左側の見落としや衝突がときどきある。疲労や感情により症状の動揺がある。)
2:中等度の無視(はっきりとした,恒常的な左側の見落としや左側への衝突がみられる。)
3:重度の無視(左空間を全く探索できない)

記録の際には,点数だけでなく,その点数の根拠となった患者の行動も記録します。

CBS自己評価

観察評価と同様の内容の 10 項目で構成されています。
患者の自己認識について,患者に直接質問します。

評価項目

  1. 髪をとかすときや髭剃りのときに,左側の髪をとかしたり,左側のひげを剃ったりすることを忘れることはありますか?
  2. 左側の袖を通したり,左の履物を履いたりするのが難しいと思うことはありますか?
  3. 食事のとき左側にあるおかずを食べるのを忘れることがありますか?
  4. 食事の後,口の周りを拭くとき,左側を拭き忘れることはありますか?
  5. 左の方を見るのが難しいと思うことはありますか?
  6. 左半身を忘れてしまうことはありますか?(例えば,左手を車椅子の肘掛けに置いたり,左足を車椅子の足置きにのせたりするのを忘れたり,左手を使うのを忘れたりしますか?)
  7. 左の方から音が聞こえたり,左側から声をかけられたりしたときに気づかないことがありますか?
  8. 歩いたり,車椅子で移動したりしている途中に,左側の家具やドアなどにぶつかることはありますか?
  9. よく行く場所やリハビリ室で左側に曲がるのが難しいと感じることがありますか?
  10. お部屋や風呂場などで,左側にものが置いてあると見つけられないことがありますか?

評価点
0:難しくない。
1:少し難しい。
2:中くらいに難しい。
3:かなり難しい。

採点不可能な項目があれば,他項目の得点の平均を当てはめます。

病態失認得点

観察評価の得点から自己評価の得点をひいたものが病態失認得点です。

CBS の欠点

この評価では,採点される ADL 上の問題が USN によって生じているのか,それとも別の原因で生じているのかを鑑別する必要があります。
そのため,評価者の力量によって点数がばらつく可能性があります。

CBS と机上検査の比較

竹内ら2)の研究では,机上検査で半側無視が陰性であった 20 名のうちの 13 名が CBS では陽性になっています。
机上検査では,手が届く範囲である近位空間での無視のみを検出しますが,CBS では自己身体空間や手が届かない遠位空間での無視も検出します。
検出できる無視の違いによって,検査結果の不一致が生じた可能性があります。

評価点のより具体的な定義は存在しない?

実際に CBS を使おうとすると,2 点と 3 点の違いが分かりにくいことがあります。
評価点のより詳しい説明は,今回調べた文献1-3)にはありませんでした。
原著はフランス語で,私は読めません,,,

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おわりに

半側無視の ADL 評価としては,この CBS が有名です。
臨床的にも使いやすそうです。

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参考文献

1)長山洋史, 水野勝広: 半側空間無視患者のADL評価と予後. MB Med Reha. 2011; 129: 23-30.
2)竹内健太, 竹林崇, 他: 半側無視の評価であるCatherine Bergego Scale の臨床的意義の再検討-半側無視に対する机上検査と行動評価との関連性の検討から. 作業療法. 2018; 37: 48-56.
3)Azouvi P, Olivier S, et al.: Behavioral assessment of unilateral neglect: study of the psychometric properties of the Catherine Bergego Scale. Arch Phys Med Rehabil. 2003; 84: 51-57. doi: 10.1053/apmr.2003.50062.

2022 年 2 月 25 日
2021 年 1 月 10 日
2019 年 3 月 12 日

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