認知症と軽度認知障害(MCI)の有病率:2020年の論文より

はじめに

日本における認知症と軽度認知障害(MCI)の有病率について,2020年発表の論文1)にある数値を紹介します。
後半には,関連する理学療法士国家試験問題があります。

論文1)の概要

論文にある研究について,最低限必要なところをピックアップします。

タイトルは「Study design and baseline characteristics of a population-based prospective cohort study of dementia in Japan: the Japan Prospective Studies Collaboration for Aging and Dementia (JPSC-AD)」です。

認知症の環境的な危険因子と遺伝的な環境因子を解明することを目的としたコホート研究で,2023年まで行われる予定の研究です。

今回の論文は,2016年から2018年にかけて行われた,ベースライン調査の報告です。

被験者は,日本の 8 地域で抽出した,地域在住の 65 歳以上の高齢者,11410 人です。
平均年齢は 74.4 歳で,男性が 41.9% です。

認知症と軽度認知障害(MCI)の有病率(論文の結果)

認知症の有病率は 8.5% です。
軽度認知障害の有病率は 17.0% です。

年齢群毎の患者数と有病率を表に示します。

年齢群被験者数認知症患者数認知症有病率MCI 患者数MCI 有病率
65-69 歳3728330.9%3148.4%
70-74 歳2758652.4%36413.2%
75-79 歳22181145.1%49422.3%
80-84 歳146223115.8%44130.2%
85-89 歳81627934.2%22928.1%
90 歳以上42824557.2%9221.5%
合計114109678.5%193417.0%

認知症の有病率は年齢が上がるにつれて高くなっていきます。
それに対して,軽度認知障害の有病率は,80-84歳がピークになっています。

高齢者の疾患について考える場合は,65 歳以上でひとくくりにするだけでなく,75 歳以上(後期高齢者)は分けて考えるのも有用です。

論文の数字より計算した,75 歳以上の高齢者における,認知症の有病率は 17.6%,軽度認知障害の有病率は 25.5% です。

以前の数値

少し古い報告2)も確認してみましょう。

2009年から2010年にかけて行われた調査です。

認知症の有病率は 15%,軽度認知障害の有病率は 13% となっています。

新しい論文での認知症の有病率は 8.5% でした。
この差を大きいととるか,小さいととるかは,難しい問題だと思います。

関連する国家試験問題

第 56 回理学療法士国家試験 午前 問題 96

我が国の 65 歳以上の高齢者における軽度認知障害(MCI)の有病率として適切なのはどれか。

1.5%
2.15%
3.35%
4.50%
5.70%

正解 2

紹介した二つの報告のどちらでも,正解は 2 になります。

この問題が出題された試験は2021年3月に行われいます。
2020年発表の論文に基づいて出題されてはいないでしょうが,これから国家試験を受験する方は,新しい論文で勉強すればいいのではないでしょうか?

おわりに

有病率はこれからどんどん上がっていく可能性があります。
これから発表される統計や論文を見逃さないようにしなければなりませんね。

最後に,被験者に関しての私の考えも述べたいと思います。
被験者は研究に参加することに同意した方たちです。
研究参加に同意しなかった方がいるのですが,同意しなかった(できなかった)理由の中に,認知症や軽度認知障害に起因するものがあるのではないでしょうか?
もしそうであったら,研究から得られた有病率は実際よりも低めに出ているのかもしれません。

参考文献

1)Ninomiya T, Nakaji S, et al.: Study design and baseline characteristics of a population-based prospective cohort study of dementia in Japan: the Japan Prospective Studies Collaboration for Aging and Dementia (JPSC-AD). Environ Health Prev Med. 2020; 25: 64.
2)朝田隆, 他: 都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応.

2021年7月14日

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