認知症の2次要因と理学療法士ができること

認知症の2次要因1)について解説します。
さらに理学療法士による認知症へのアプローチについても考えてみたいと思います。

認知症の2次要因とは

認知症の症状は,アルツハイマ-病や脳血管障害などによる中枢神経の損傷のみで決まるのではありません。
それに加えて身体状態,心理状態,生活環境などによっても認知症の症状は強くなったり弱くなったりします。
前者を1次要因,後者を2次要因と呼びます。

1次要因は不可逆的で改善しません。
一方で,2次要因には変えることができるものがあります。
つまり,2次要因にアプローチすることで認知症の症状が改善するかもしれないということです。

次に,2次要因のそれぞれについて説明します。

身体状態(全身状態)

「肺炎による血中酸素分圧の低下,尿路感染症による発熱,下痢による脱水などの状態は痴呆症状を悪化させる1)」とあります。

しんどくてボーとしている状態と言ってもいいかもしれません。

認知症がある方は,自分自身で不調を訴えることができないことがあります。
そんな方でも,認知症の症状の変化で全身状態の変化が分かることがあります。

心理状態(精神状態)

「緊張,不安,うつ状態といった不安定な精神状態は痴呆を悪化させやすい1)」とあります。

心の問題で認知症の症状が強くなっていそうな方はたくさんいると思います。

不眠や昼夜逆転も認知症の症状を悪化させます。
いわゆる寝ぼけた状態になるためです。

用語の使い方について確認しておきます。
認知症は心理状態や精神状態に問題が生じるものですから,心理状態(精神状態)によって認知症の症状が強くなると言われると,認知症の症状によって認知症の症状が強くなると言われているようで変な感じがします。
ここでの心理状態(精神状態)とは,認知症が直接の原因ではない心理的な(精神的な)問題を指しています。

生活環境

「住居環境や介護方法などのことである。住み慣れた家から馴染みのない施設に移住すると混乱して痴呆が悪化することがある。他方,好ましくない人間関係の中で間違った介護を受けていた人が介護専門職によるゆとりのある介護を受けることで和み,痴呆が改善することもある1)」とあります。

環境の問題が心理状態(精神状態)の問題を引き起こすと考えてもいいと思います。

新しい環境に不安を感じて緊張していたり,不適切な人間関係で心を閉ざしていたりする状態は,認知症の症状に似ています。

理学療法士ができること

認知症だから仕方がないと諦めてしまってはいないでしょうか?
認知症の2次要因を理解していれば,様々なアプローチを考えることができます。
2次要因の多くに対して,理学療法士は直接,あるいは間接的にアプローチすることができます。

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参考文献

1)三宅貴夫: 痴呆症状. 総合リハ. 2000; 28: 177-181.

2020年9月21日
2019年2月16日

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