サルコペニアと廃用性筋萎縮,二次性サルコペニアとの関係

はじめに

サルコペニア(Sarcopenia)と廃用性筋萎縮の違いについて簡単に説明します。
さらに,関連のある二次性サルコペニアについても説明します。

AWGS 2019 によるサルコペニアの定義

AWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)2019 では,サルコペニアを「並存疾患とは関係なく,加齢によって,骨格筋の減少に加えて,筋力の低下と身体機能の低下の両方あるいはどちらかがある状態2)」と定義しています。

サルコペニアと廃用性筋萎縮の違い

サルコペニアと廃用性筋萎縮は,漠然と同じものだと思われがちです。
しかし,これらはメカニズムが異なり,骨格筋の表現形も異なります。

違いをまとめた表1)がありますので引用します。

サルコペニア廃用性筋萎縮
筋萎縮の要因加齢筋活動量の低下
時間経過長期間で穏やかに進行短期間で急激に進行
筋力低下低下
筋線維数減少変化なし
筋横断面積低下低下
筋線維の萎縮速筋線維優位遅筋線維優位
筋線維のタイプの移行遅筋化,繊維化,脂肪化速筋化

ポイントは,サルコペニアでは筋線維数が減少するが,廃用性筋萎縮では減少しないというところだと思います。
また,サルコペニアでは速筋線維の萎縮が優位だが,廃用性筋萎縮では遅筋線維の萎縮が優位だというところも特徴的です。

このような違いはメカニズムの違いによって生じます。
サルコペニアが生じるメカニズムは十分に解明されていないようですが,サルコペニアは加齢によって生じる病的な状態だといえます。
一方で,廃用性筋萎縮は,活動量の低下に対して身体が適応した結果であり,どちらかというと,病的な状態ではありません。

次は二次性サルコペニアについてです。

一次性サルコペニアと二次性サルコペニア

EWGSOP 23)( European Working Group on Sarcopenia in Older People)では,サルコペニアを一次性サルコペニアと二次性サルコペニアに分類しています。

一次性のサルコペニアは加齢性のサルコペニアであり,加齢以外の原因が見当たらないサルコペニアです。

二次性のサルコペニアは,加齢以外の原因によるサルコペニアや,加齢に他の原因が加わって生じているサルコペニアです。

加齢以外の原因として,疾患,不動,栄養不良があります。

疾患による二次性サルコペニア

疾患としては,特に,悪性腫瘍や臓器不全などの炎症を生じる全身性疾患が重要です。
変形性関節症や神経疾患も関係します。

身体活動量低下による二次性サルコペニア

身体活動量の低下は,座りがちなライフスタイルによって生じますし,疾患や障害によっても生じます。

栄養不良による二次性サルコペニア

摂取エネルギーやタンパク質の不足は,食欲不振,吸収不良,健康的な食事を入手できないこと,食べる能力の低下などによって生じます。
過栄養や肥満もサルコペニアに関係します。

二次性サルコペニアと廃用性筋萎縮との関係

一次性サルコペニアは,筋線維数の減少や速筋線維優位の萎縮が生じるサルコペニアであり,廃用性筋萎縮とは異なるものです。
では,身体活動の低下による二次性サルコペニアと廃用性筋萎縮との関係はどうなるでしょう。
素直に考えれば,身体活動の低下によって廃用性筋萎縮が生じるのですから,身体活動の低下による二次性サルコペニアと廃用性筋萎縮は同じものになってしまいます。
しかし,身体活動の低下によって廃用性筋萎縮が生じるのではなく,筋線維数の減少や速筋線維優位の萎縮が生じて一次性サルコペニアと同じ状態になることがあるのかもしれません。

文献 4)には,「「身体活動量低下」によるサルコペニアは,寝たきりや不活発な生活スタイルなどの日常生活が原因であり,これによって廃用性筋萎縮が生じます」とあります。
身体活動量低下による二次性サルコペニア = 廃用性筋萎縮と考えてよさようですが,もう少し明確な根拠が欲しいところです。

疾患による二次性サルコペニアや栄養不良によるサルコペニアが,一次性サルコペニアと同じなのかは,今回調べて文献では分かりませんでした。

二次性サルコペニアという分類によって,サルコペニアと廃用性筋萎縮の関係がややこしくなっています。
AWGS 2019 は二次性サルコペニアについて直接言及しておらず,二次性サルコペニアという分類はしていません。

理学療法への応用

廃用性筋萎縮に対しては筋力増強運動が効果的です。
しかし,サルコペニアに対する筋力増強運動の方法は,まだ確立していないようです。

サルコペニアと廃用性筋萎縮の鑑別も難しそうです。
臨床の現場では,筋線維の数を調べる方法や,萎縮している筋線維
の種類を特定する方法がありません。
それに,サルコペニアと廃用性筋萎縮は合併する可能性が高く,障害像はより複雑になりそうです。

理学療法士国家試験より

第54回理学療法士国家試験午前問題49に二次性サルコペニアがでてきます。

廃用症候群で正しいのはどれか。
1. 加齢による影響は少ない。
2. 二次性サルコペニアを認める。
3. 筋萎縮は上肢に強くみられる。
4. 進行しても摂食嚥下機能は保たれる。
5. 高齢者では高アルブミン血症を認める。

正解は 2 です。

この国家試験問題はやや「不適切」です。

EWGSOP 2 による二次性サルコペニアの定義で考えれば何の問題もありません。
しかし,AWGS 2019 の定義で考えると,二次性サルコペニアは存在しません。
コンセンサスが得られていないことを問う問題になっています。

おわりに

サルコペニアと廃用性筋萎縮は異なるという考えが主流ですが,そもそもサルコペニアのメカニズムがよく分かっていないようですので,「今のところは異なるということになっている」と理解するのがよさそうです。

参考文献

1)後藤亜由美, 町田修一: サルコペニア研究の現状と臨床への応用. 理学療法学. 2018; 45: 332-341.
2)Chen LK, Woo J, et al.: Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020; 21: 300-307.
3)Cruz-Jentoft AJ, Bahat G, et al.: Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis. Age and Ageing. 2019; 48: 16–31.
4)清水由貴, 若林秀隆: サルコペニアは加齢のほかにも原因があるの?. 透析ケア. 2018; 24: 16-17.

関連記事

サルコペニアについては他にもいくつかの記事があります。
サルコペニアの定義と診断(AWGS 2019)
サルコペニアの定義と診断(EWGSOP2,2018年改定)
「サルコペニア診療ガイドライン 2017 年版 一部改訂」の要点
サルコペニアは高齢者の疾患ではない?
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