注意!この記事は改訂版の内容が反映されておらず,最新の情報ではありません。
サルコペニア診療ガイドライン 2017年版が公開されています。
理学療法士として最低限必要なところを確認してみました。
サルコペニアの定義
「サルコペニアは高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下により定義される」とあります。
サルコペニア肥満の定義は「サルコペニア肥満はサルコペニアと肥満もしくは体脂肪の増加を併せ持つ状態であり、それぞれ四肢骨格筋量の低下(身長の2 乗または体重で補正)とBMI または体脂肪率またはウエスト周囲長の増加で操作的に定義される。しかしながら、評価方法やカットオフ値は定まっていない」となっています。
サルコペニアの診断基準
AWGS(ASIAN working Group for SARCOPENIA)の診断基準を用いることが推奨されています。
AWGS1)では,高齢者で,握力の低下と歩行速度の低下のどちらかがあり,かつ筋量の低下がある状態をサルコペニアとします。
カットオフ値は以下の通りですが,高齢者の定義を見つけることができませんでした。
歩行速度の低下 0.8m/sec以下
握力の低下 男性26kg未満,女性18kg未満
骨格筋量の低下(DXA法かBIA法で測定する)
DXA値 男性7kg/m2未満,女性5.4kg/m2未満
BIA値 男性7kg/m2未満,女性5.7kg/m2未満
サルコペニア肥満の診断基準は統一されていません。
スクリーニング
「指輪っかテスト」 が有用であるとしています。
指輪っかテストは,自分の両手の親指と人差し指で輪っかを作り,下腿周径が最大のところを囲ってみるというものです。
指と下腿とのあいだに隙間ができれば,サルコペニアである可能性が高いと考えます(詳しくはこちら)。
予防について
「 適切な栄養摂取、特に1日に(適正体重)1kg 当り 1.0g以上のたんぱく質摂取はサルコペニアの発症予防に有効である可能性があり、推奨する。エビデンスレベル:低、推奨レベル:強」
訪問リハをしていた時,食事の場面に出くわしたり,食事内容を確認することがありましたが,たんぱく質を十分に摂っていない人が多いと感じました。
栄養指導は大事かなと思います。
「運動習慣ならびに豊富な身体活動量はサルコペニアの発症を予防する可能性があり、運動ならびに活動的な生活を推奨する。エビデンスレベル:低、推奨レベル:強」
エビデンスレベルは低になっていますが,これにエビデンスはいらないのかもしれません。
活動的な生活をして悪いことはなさそうですから。
治療について
「サルコペニアを有する人への運動介入は、四肢骨格筋量、膝伸展筋力、通常歩行速度、最大歩行速度の改善効果あり、推奨される。エビデンスレベル:非常に低、推奨レベル:弱」
「サルコペニアを有する人へのレジスタンストレーニングを含む包括的運動介入と栄養療法による介入は、単独介入に比べサルコペニアの改善に有効であり、推奨される。しかしながら、長期的アウトカム改善効果は明らかではない。エビデンスレベル:非常に低、推奨レベル:弱」
エビデンスレベルは低いようです。
また,サルコペニアを有する人への運動介入の推奨レベルが弱になっているのが気になります。
サルコペニアは加齢による病態であり,廃用による筋萎縮とは異なる2ため,単純に運動量を増やすだけではいけないのでしょう。
おわりに
書籍版も出ていますが,まだ確認できていません。
より詳しく書かれているのかもしれません。
関連記事
サルコペニアについては他にもいくつかの記事があります。
サルコペニアの定義と診断(AWGS 2019)
サルコペニアの定義と診断(EWGSOP2,2018年改定)
二次性サルコペニアについて
サルコペニアと廃用性筋萎縮の違い
サルコペニアは高齢者の疾患ではない?
SARC-FとSARC-CalF(サルコペニアのスクリーニング)
指輪っかテストの方法,判定,結果の解釈
参考文献
1)山田実: 特集:日常診療に役立つサルコペニアの知識 診断基準をどう使うか. MB Orthop. 2015; 28: 23-29.
2)千田益生, 堅山佳美, 他: サルコペニアとリハビリテーション. Jpn J Rehabil Med. 2017; 54: 609-616.
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