「サルコペニア診療ガイドライン 2017 年版 一部改訂」の要点

はじめに

サルコペニア診療ガイドライン 2017 年版 一部改訂が公開されています。
理学療法士として最低限必要なところをまとめてみました。

サルコペニアの定義

「サルコペニアは高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下により定義される」

サルコペニア肥満の定義

「サルコペニア肥満はサルコペニアと肥満もしくは体脂肪の増加を併せ持つ状態であり,それぞれ四肢骨格筋量の低下(身長の2 乗または体重で補正)とBMI または体脂肪率またはウエスト周囲長の増加で操作的に定義される。しかしながら,評価方法やカットオフ値は定まっていない」

サルコペニアの診断基準

AWGS 20191)の診断基準を用いることが推奨されています。

こちらの記事で詳しく解説しています。

サルコペニア肥満の診断基準

サルコペニア肥満の診断基準は統一されていないそうです。

サルコペニアのスクリーニング

「指輪っかテスト」 が有用であるとしています。
指輪っかテストは,自分の両手の親指と人差し指で輪っかを作り,下腿周径が最大のところを囲ってみるというものです。
指と下腿とのあいだに隙間ができれば,サルコペニアである可能性が高いと考えます(詳しくはこちら)。

サルコペニアの有病率

有病率は,定義や対象者の属性によって大きく異なりますが,6 〜 12% 程度です。

サルコペニア発症の予防・抑制

栄養・食事

適切な栄養摂取,特に1日に(適正体重)1kg 当り 1.0 g 以上のタンパク質摂取はサルコペニアの発症予防に有効である可能性があるとして,推奨しています(エビデンスレベル:低,推奨レベル:強)。

訪問リハに従事していた時,食事の場面に出くわしたり,食事内容を確認することがありましたが,タンパク質を十分に摂っていない人が多いと感じました。
また,私自身の食事のタンパク質量をざっと計算してみたことがあるのですが,体重1kg 当り 1.0 g のタンパク質は摂れていませんでした。
栄養指導は大事だと思うのですが,その機会は少ないようです。

運動

「運動習慣ならびに豊富な身体活動量はサルコペニアの発症を予防する可能性があり,運動ならびに活動的な生活を推奨する。(エビデンスレベル:低,推奨レベル:強)」となっています。

エビデンスレベルは低になっていますが,これにエビデンスはいらないのかもしれません。
運動や活動的な生活は筋量の維持に有用であることはほぼ間違いないことでしょうから。
また,運動によってサルコペニア発症リスクが高まることを示唆するエビデンスもなかったそうです。

サルコペニアの治療としての運動療法

「サルコペニアを有する人への運動介入は,四肢骨格筋量,膝伸展筋力,通常歩行速度,最大歩行速度の改善効果あり,推奨される。(エビデンスレベル:非常に低,推奨レベル:弱)」となっています。

また「サルコペニアを有する人へのレジスタンストレーニングを含む包括的運動介入と栄養療法による介入は、単独介入に比べサルコペニアの改善に有効であり,推奨される。しかしながら,長期的アウトカム改善効果は明らかではない。(エビデンスレベル:非常に低,推奨レベル:弱)」となっています。

エビデンスレベルは非常に低く,推奨レベルも弱です。
まだまだ分かっていないことが多いということのようです。

ガイドラインには書かれていませんでしたが,一次性サルコペニアは加齢による病態であり,廃用による筋萎縮とは異なる2,3ため,単純に筋力増強運動を増やすだけではいけないのだと思います(廃用性筋萎縮との違いについてはこちらでまとめています)。

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あわせて読みたい

サルコペニアの定義と診断(AWGS 2019)

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指輪っかテストの方法,判定,結果の解釈

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参考文献

1)Chen LK, Woo J, et al.: Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020; 21: 300-307.
2)千田益生, 堅山佳美, 他: サルコペニアとリハビリテーション. Jpn J Rehabil Med. 2017; 54: 609-616.
3)後藤亜由美, 町田修一: サルコペニア研究の現状と臨床への応用. 理学療法学. 2018; 45: 332-341.

2021 年 1 月 25 日 改訂版の内容を追加
2020 年 5 月 19 日
2019 年 7 月 9 日
2018 年 11 月 18 日
2018 年 1 月 18 日

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