錐体路障害は錐体外路の障害で起こる?

はじめに

錐体路障害,錐体外路障害という用語にはややこしいところがあり,タイトルにありますように,錐体路と同時に錐体外路も障害を受けることで錐体路障害が生じるということになっています。
詳しく解説したいと思います。

随意運動の運動系経路1,3)

錐体路・錐体外路障害を理解するためには,まず,随意運動の運動系経路(図 1)を知っておく必要があります。

運動系の経路
図 1: 運動系の経路

直接賦活経路

いわゆる錐体路のことです。
皮質脊髄路と皮質延髄路が含まれます。

この経路の働きによって,意識的なコントロールのもとに行われる随意運動,特に熟練運動が可能になります。

間接賦活経路

いわゆる錐体外路のことです。
外側前庭脊髄路,内側前庭脊髄路,橋網様体脊髄路,延髄網様体脊髄路,視蓋脊髄路,赤核脊髄路が含まれます。

動作に伴う多くの自動的な運動において,筋の協調した収縮を潜在意識下で制御します。

統御回路

小脳の統御回路と基底核の統御回路の二つがあります。

小脳の統御回路

大脳皮質→橋→小脳→赤核→視床→大脳皮質というような回路です。

運動に際し,筋活動の協調をはかり,間違った運動の補正を行います。

基底核の統御回路

大脳基底核,大脳皮質,視床,中脳黒質による回路です。

学んで身につけた自動的な行為の遂行および筋緊張や姿勢の準備・保持に大きく関与します。

最終共通経路

α 運動ニューロンや γ 運動ニューロンなどの末梢神経です。

錐体路障害と錐体外路障害

錐体路障害と錐体外路障害について説明します。

錐体路障害2)

錐体路障害は運動麻痺の一つで,上位運動ニューロン障害とほぼ同義です。
典型的な症状は痙性麻痺です。

名前の通り,錐体路(直接賦活経路)の障害であり,皮質脊髄路や皮質延髄路の障害です。
でも,実際には,錐体路のみが障害を受けると,痙性麻痺ではなく弛緩性麻痺が起こります。
では痙性麻痺はどこの障害で起こるかというと,錐体路(直接賦活経路)と同時に錐体外路(間接賦活経路)が障害が受けた時に起こります。
つまり,痙性麻痺を伴う典型的な錐体路障害は錐体路と錐体外路の障害で起こるということです。

錐体外路障害

錐体路と錐体外路の障害で錐体路障害が起こるなら,錐体外路障害は何だ?となりますよね。

錐体外路障害は錐体外路の障害で起こるのですが,この場合の錐体外路が何を指しているかがポイントです。
パーキンソン病などの錐体外路障害は「基底核の統御回路」の障害で起こります
つまり,錐体外路障害というときの錐体外路は「間接賦活経路」ではなく「基底核の統御回路」を指しているということです。

おわりに

かなりややこしくなっています。
神経系の新しい知見が得られても,昔の呼び名が残っているという状況だと思います。

参考文献

1)中島喜代彦: 運動麻痺, 理学療法ハンドブック改訂第4版第1巻. 細田多穂, 柳澤健(編), 協同医書出版社, 2010, pp511-544.
2)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた改訂17版. 南山堂, 2014, pp165-166.
3)大西晃生, 他(訳): 臨床神経学の基礎 第 3 版 メイヨー医科大学教材. メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2001, pp155-194.

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