疾患

錐体路障害は錐体外路の障害で起こる?

投稿日:2018年1月4日 更新日:

錐体路・錐体外路障害という用語にはややこしいところがありますので,整理してみたいと思います。

まず,随意運動の運動系経路を確認します。

直接賦活経路
いわゆる錐体路のことです。
皮質脊髄路と皮質延髄路が含まれます。

間接賦活経路
いわゆる錐体外路のことです。
外側前庭脊髄路,内側前庭脊髄路,橋網様体脊髄路,延髄網様体脊髄路,視蓋脊髄路,赤核脊髄路が含まれます。

統御回路
小脳と基底核の二つがあります。

小脳の統御回路
大脳皮質→橋→小脳→赤核→視床→大脳皮質というような回路です。

基底核の統御回路
大脳基底核,大脳皮質,視床,中脳黒質による回路です。

最終共通経路
α運動ニューロンとそれに支配される筋繊維群のことです。

次に,錐体路障害と錐体外路障害について説明します。

錐体路障害
錐体路障害は運動麻痺の一つです。
上位運動ニューロン障害とほぼ同義です。
痙性麻痺になります。
名前の通り,錐体路(直接賦活経路)の障害であり,皮質脊髄路や皮質延髄路の障害です。
でも,実際には,錐体路のみが障害を受けると,痙性麻痺ではなく弛緩性麻痺が起こります。
では痙性麻痺はどこの障害で起こるかというと,錐体路(直接賦活経路)と同時に錐体外路(間接賦活経路)が障害が受けた時に起こります。
ややこしいです。
典型的な錐体路障害である痙性麻痺は錐体路と錐体外路の障害で起こるということです。

錐体外路障害
錐体外路障害といえば,パーキンソン病が有名です。
普通に考えれば,錐体外路障害は錐体外路の障害で起こると思いますよね。
それでいいのですが,この場合の錐体外路が何を指しているかが問題です。
先に書いた随意運動の運動系経路の分類でいうと,錐体外路障害は基底核の統御回路の障害で起こります。
錐体外路(間接賦活経路)の障害ではありません。
錐体外路障害と言う時の錐体外路は基底核の統御回路を指しているんですね。
これもまたややこしい。

ついでですので,運動麻痺に関して間違って覚えてしまいがちなところをもう少し書いておきます。

さっきの錐体外路障害ですが,これは運動麻痺ではありません。
運動麻痺の文脈の中で出てくることが多いため,勘違いすることがあります。

不全麻痺とは,完全に随意性を失った完全麻痺に対して,完全麻痺ではない麻痺のことです。
随意的に不十分にしか動かせない状態で,完全麻痺に近い程度から正常に近い程度まで幅広く使われます。
学生は知らないことが多いような気がします。

弛緩性麻痺は筋緊張の低下を伴う麻痺です。
筋緊張の亢進(痙性)を伴うのは痙性麻痺です。
完全麻痺の状態を指して弛緩性麻痺という人がいます。
どちらも「だらん」としていますので。
弛緩性麻痺と完全麻痺は別物です。

弛緩性麻痺は英語でflaccid paralysisです。
日本では「フラッシード」と読みますが,辞書で確認すると「フラクシッド」と読むのが正しいようです(厳密にはカタカナで説明すれば,それも間違いですが,,,)。
発音に関しては,アメリカとイギリスで違ったりもしますし,言葉は少しづつ変わっていくものです。
「フラッシード」が間違っていると言い切る自信はありません。

参考文献
中島喜代彦: 運動麻痺, 理学療法ハンドブック改訂第4版第1巻. 細田多穂, 柳澤健(編), 協同医書出版社, 2010, pp511-544.
田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた改訂17版. 南山堂, 2014, pp165-166.

2018年1月4日

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