老年医学

フレイルの定義と診断基準

投稿日:2017年12月1日 更新日:

フレイルとは何かについて,基本的なところをまとめてみたいと思います。

フレイルの定義や診断基準などは十分に統一されていませんが,本邦では,日本老年医学会によるものが広まっているようです。
そもそも,Frailty の日本語訳であるフレイルという言葉は日本老年医学会が提唱したものです1)

フレイルとは1,2)

フレイルとは,加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態で,体重減少,疲労感,活動量の低下,筋力低下,動作速度の低下などが生じた状態です。

歳をとり,少し衰えてきた状態と言ってもいいと思います。

しかし,フレイルは,老化とは違って,適切な介入によって健常な状態に戻すことができる状態です。

そして,生活機能障害、要介護状態、死亡などの重篤な状態に到る前の中間的な段階です。
フレイルから生活機能障害や要介護状態に移行すれば,フレイルではなくなるということです。
しかし,生活機能障害や要介護状態に移行した方は,多くの場合,次に説明するフレイルの診断基準に該当してしまいます。
この点について,定義や診断基準には明記されていません。

身体的フレイルだけでなく,認知的フレイルや社会的フレイルがあります。

認知的フレイルは,身体的フレイルと認知機能障害(認知症の疑いのレベル)が共存する状態です。

社会的フレイルは,外出頻度、友人の訪問、家族との接触などに関しての問題がある状態です。

ここまでの説明では具体的なイメージが湧きませんね。
次は具体的な診断基準です。

日本版CHS基準(J-CHS)3)

Fried らによる Cardiovascular Health Study Index(CHS基準)の日本語版です。

以下の5項目のうち,3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはプレフレイルと判断します。

1)体重減少:「6ヶ月間で2〜3 kg 以上の(意図しない)体重減少がありましたか?」に「はい」と回答した場合

2)倦怠感:「(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする」に「はい」と回答した場合

3)活動量:「軽い運動・体操(農作業も含む)を1週間に何日くらいしていますか?」及び「定期的な運動・スポーツ(農作業を含む)を1週間に何日くらいしていますか?」の2つの問いのいずれにも「運動・体操はしていない」と回答した場合

4)握力:(利き手における測定)男性26kg未満,女性18kg未満の場合

5)通常歩行速度:(測定区間の前後に1mの助走路を設け,測定区間5mの時間を計測する)1m / 秒未満の場合

CHS基準原法4)

日本語版があるので,使われることが少なくなりそうですが,参考までに紹介します。
訳は私が行いました。

以下の5項目のうち,3項目以上該当するfrailty、1または2項目だけの場合にはprefrailtyと判断します。

1)体重減少:意図しない体重減少が直近の1年間で4.5kg以上,あるいは5%以上。

2)疲労感:以下のいずれかのように感じた日が直近の1週間で3〜4日以上。

  • 何をするにも努力が必要だった(I felt that everything I did was an effort)。
  • 動き出すことができなかった(I could not get going)。

3)筋力低下:握力で判定。性別とBMIでカットオフ値を層別化。

男性

BMI握力(kg)
≤ 24≤ 29
24.1–26≤ 30
26.1–28≤ 30
> 28≤ 32

女性

BMI握力(kg)
≤ 23≤ 17
23.1–26≤ 17.3
26.1–29≤ 18
> 29≤ 21

4)歩行速度の低下:性別と身長でカットオフ値を層別化

男性

身長(cm)秒 / 15 feetm / 秒
≤ 173≥ 7≤ 0.653
>173≥ 6≤ 0.762

女性

身長(cm)秒 / 15 feetm / 秒
≤ 159≥ 7≤ 0.653
>159≥ 6≤ 0.762

5)活動性の低下:Minnesota Leisure Time Activity questionnaire のショートバージョンで,1週間での活動が男性で383kcal未満,女性で270kcal未満(静かに座っているか,1日の大半を臥床している状態に相当5))。

新・徒手筋力検査法原著第9版5)にも Fried らによるCHS基準が載っています。
しかし,省略されていたり,単位が間違っていたりします。
そして,フレイルという言葉は使っておらず,虚弱(frailty)としています。

参考文献

1)フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント
2)日本サルコペニア・フレイル学会 フレイル診療ガイド
3)フレイルの進行に関わる要因に関する研究
4)Linda P. Fried, Catherine M. Tangen: Frailty in Older Adults: Evidence for a Phenotype. J Gerontol Med Sci. 2001; 56A: M146-M156.
5)津山直一, 中村耕三(訳): 新・徒手筋力検査法原著第9版. 協同医書出版社, 2015, pp14.

2020年5月22日
2019年4月21日
2017年12月1日

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