解剖生理

肝臓とは(最初に覚えること)

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肝臓について,理学療法士としてまず最初に覚えるべきことをまとめていきます。

肝臓の働き

肝臓は消化管に開口する腺です。
肝臓の働きには様々なものがありますが,まずは以下の3つを覚えておくといいでしょう。

  • 胆汁の合成
  • 栄養物の合成,貯蔵
  • 毒物などの分解

胆汁は脂肪の消化と吸収において重要な役割を果たします。
肝臓によるアルコールの代謝は有名ですね。

肝臓の形と位置

図1は消化器の概観です。
前から見た肝臓の形,位置関係,特に他の臓器との位置関係が重要です。

消化器の概観
図1 消化器の概観(文献1を参考にして作図)

ポイントを挙げていきます。

とにかく大きな器官です。
ヒトの体内で最大級の器官で,体重の約1/50にあたります(900 g 〜 1300 g)。

右上腹部にあり,右側が大きくなっています。
前にあるとも言えます(厚みがあって単純に前とは言いにくいのですが,,,)
剣状突起の下で触れることができます。

上面で横隔膜と癒着し,横隔膜を介して心臓と肺に接しています(図には描かれていません)。

下面で胆嚢,胃,十二指腸,結腸(右結腸曲),腎臓,副腎と接しています。

後面を下大静脈が肝実質に埋もれた状態で走行します(図2)。

肝臓の脈管

図2に肝臓を出入りする血管の概要を示しています(細かい分岐と胆管が省略されています)。

肝臓の血管
図2 肝臓の血管(文献2を参考にして作図)

固有肝動脈

図2の総肝動脈が分岐して固有肝動脈になります。
肝臓を栄養する動脈です。

門脈

胃,小腸,大腸,膵臓,脾臓からくる静脈が合流してできます。
消化管で吸収した栄養分や解毒する必要のある成分を含んだ静脈血が肝臓に流れ込みます。

肝硬変などの肝臓疾患で門脈から肝臓に血液が流れにくくなると(門脈圧亢進),行き場を失った血液が他の静脈に流れます。
その結果,食道静脈瘤などの様々な症状を引き起こします。

肝静脈

固有冠動脈と門脈から入った血液は肝静脈から出ていきます。
肝静脈は下大静脈につながっています。

胆管

肝細胞から分泌された胆汁を運ぶ管です(図1)。

肝門

肝臓下面の中央がくぼんでいて,そこから門脈,固有肝動脈,肝管,神経,リンパ管が出入りします。
そこを肝門と呼びます。

肝腎陥凹(モリソン窩)

肝臓と周囲の器官との間にできる凹みの一つです。
肝臓と右腎臓の間にあります。
背臥位で腹腔の最下部になるため,腹水などがたまりやすいところです。
回復術後のドレーン留置部位になります。

大まかだけど正しいイメージの大切さ

このブログの他の記事でも繰り返し書いているのですが,解剖学では大まかだけど正しいイメージを持つことが大切です。

正しいとは言いにくいのですが,焼き鳥のレバーを思い出してください。
特に最後に一切れだけ残っている状態です。
レバー(肝臓)に刺さっている串をみて下大静脈を連想したら正解(?)です。
肝臓の後ろの方に下大静脈が刺さっているイメージです。
これがあれば以下の問題に正解できるかもしれません。

第55回理学療法士国家試験午前問題56

下大静脈に直接入るのはどれか。2つ選べ。
1. 肝静脈
2. 胃静脈
3. 脾静脈
4. 空回腸静脈
5. 腎静脈

正解は肝静脈と腎静脈です。
肝静脈の正確な走行を知らなくても,下大静脈が肝臓に刺さっているイメージがあり,肝臓と下大静脈が接していることを覚えていれば,肝静脈が正解かもと予測できます。

理学療法士養成校の最終学年で国家試験勉強を始めた時点で,上の問題を解けなくても,肝臓と下大静脈の位置関係を思い出せた人は,現役合格する見込みがあるような気がします。

参考文献

1)越智淳三(訳): 解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001, pp302-340.
2)本間研一(監修): 標準生理学 第9版. 医学書院, 2019, pp839.
3)金子丑之助: 日本人体解剖学下巻(改訂19版). 南山堂, 2008, pp350-361.

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2020年9月23日

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