はじめに
嗅神経(第 I 脳神経 olfactory nerves)は嗅覚を司る感覚神経です。
働きは嗅覚のみであり,脳神経の中では覚えやすい神経です。
しかし,その位置がうろ覚えになってしまいがちです(私がそうでした)。
嗅神経の正確な位置について,適度に詳しくまとめてみたいと思います。
嗅神経の位置と走行
嗅神経のおおまかな位置
嗅神経は鼻腔の上部にあります。
脳底部ではありません(この後,説明します)。
嗅神経の起始核
鼻腔上部の粘膜ににおいを感受する嗅細胞が集まっていて,嗅部と呼ばれています。
嗅細胞を図 1 に示します。
嗅細胞には 2 つの突起があります。
鼻腔側(末梢)に伸びる突起が嗅覚の受容器です。
そして,頭蓋側(中枢)に伸びる軸索が嗅神経です。
つまり,嗅神経は鼻腔上部の粘膜にあるということです。
嗅部の位置
嗅部の位置を図 2 〜 4 に示します。
嗅部は鼻中隔の上部から上鼻甲介の上部にかけて,鼻腔の天井部部分を覆っています。
ヒトの嗅部は他の動物と比べると狭いそうです。
嗅神経の走行
嗅細胞から出た軸索が集まり,片側に内外 2 列で 12 〜 15 本の神経束となります。
その神経束は篩骨篩板の孔を通って,頭蓋腔に入ります(図 4)。
篩骨篩板を通り抜けたところには嗅球があります。
嗅球にある僧帽細胞(嗅覚伝導路の二次ニューロン)につながって嗅神経は終わります。
脳底部にあるものを再確認
嗅球とそこから続く嗅索を図 5 に示します。
解剖学のテキストでは,このような図がよく載っています。
この図を見て嗅球が嗅神経の起始核で,嗅索が嗅神経の軸索であると勘違いしてしまうことがあります。
前述の通りで,嗅球は嗅神経の終止核で,嗅索は僧帽細胞(嗅覚伝導路の二次ニューロン)の軸索です。
おわりに
理学療法士だと,嗅神経とか鼻腔についての知識を使う機会はあまりないかもしれませんが,立体的で具体的なイメージがないと,様々な知識がつながりにくくなります。
ある程度は覚えておきたいところです。
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スポンサーリンク参考文献
1)金子丑之助: 日本人体解剖学上巻(改訂19版). 南山堂, 2002.
2)金子丑之助: 日本人体解剖学下巻(改訂19版). 南山堂, 2008.
3)越智淳三(訳): 解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001.
4)秋田恵一(訳): グレイ解剖学(原著第4版). エルゼビア・ジャパン, 2019.
2021 年 6 月 12 日
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