手根骨の覚え方(語呂合わせと解剖学的な理解による暗記)

はじめに

手根骨 carpal bones の覚え方を解説します。
まずは定番の語呂合わせを紹介します。
次に,手根骨の解剖,触診,骨折などについて,基本的なところをまとめます。
解剖学的な,あるいは臨床的な理解を深めることによって,自然と覚えることができます。

手根骨の語呂合わせ

掌側から見た右手の手根骨
図 1: 右手根骨掌側

まずは手根骨の並び順の語呂合わせです。

「父さん,月収大小ありがとう,有効に使うよ」

父(豆状骨)
さん(三角骨)
月(月状骨)
収(舟状骨)
大(大菱形骨)
小(小菱形骨)
ありがとう(有頭骨)
有効(有鈎骨)

理学療法士国家試験では,各手根骨が他のどの手根骨と関節を形成するのかも覚えなければなりません。

例えば,舟状骨と接している手根骨は大菱形骨,小菱形骨,有頭骨,月状骨です。
それを覚える語呂合わせです。

「舟に乗った大人と小人が頭上の月を見る」

舟(舟状骨)
大(大菱形骨)
小(小菱形骨)
頭(有頭骨)
月(月状骨)

舟状骨は橈骨とも接していて橈骨手根関節を形成します。
ちなみに,橈骨の橈は「かい」とも読みます。
舟をこぐ「かい(櫂,オール)」の古い言葉です。
もし,これを知っていれば,さらに覚えやすいかもしれません。

手根骨の正確な位置関係

手根骨の説明として,近位手根骨列に 4 個,遠位手根骨列に 4 個というようなものが多く,4 個ずつ 2 列に整列しているというようなイメージをもってしまいがちです。
しかし,実際にはもう少し複雑です。
そこで,正確な位置関係をイメージしやすい見方を紹介したいと思います。

まず,豆状骨は並んでいるというよりも上に乗っかっています。
また,遠位の手根骨列では,大菱形骨は橈側にはみ出しているように見えます。
ですので,近位手根骨列は三角骨,月状骨,舟状骨の 3 つで,遠位手根骨列が,有鈎骨,有頭骨,小菱形骨の 3 つだと思ってしまえば,3 つずつ綺麗に並んているように,私には見えます。

別の見方もあります。
手根骨の中では有頭骨が一番大きくて,ちょうど真ん中にあります。
実際,手関節の 2 つの運動軸はどちらも有頭骨を通ります。
すると,手根骨は有頭骨を取り囲むようにして並んでいると見ることもできます。

どちらの見方も,私の見方であり,教科書的には間違いかもしれませんが,正確な位置関係をイメージしやすいと思っています。
個人の頭の中で考えるのは自由ですので,各自でイメージしやすいようにすればいいと思います。

各手根骨の特徴,触診

舟状骨 scaphoid

近位列で最も大きい手根骨です。

関節を作る骨:橈骨,大菱形骨,小菱形骨,月状骨,有頭骨

付着する筋:短母指外転筋

手根骨のなかでは,最も骨折しやすい骨です。
手関節の骨折としては,橈骨遠位端骨折の次に多い骨折です。
橈骨遠位端骨折が高齢者で多いのに比べて,舟状骨骨折はスポーツに関連して若年者で多い骨折です。
転倒時に手関節背屈位で手をついたときに受傷します。
舟状骨は遠位掌側側の靭帯付着部から血行を受けているため,また,近位部のほとんどが関節軟骨で覆われているため,骨折時に骨癒合が遅れたり,近位骨片が壊死したりすることがあります4)

触診:橈骨茎状突起の遠位で触れます。
タバコ窩(長母指伸筋腱と短母指伸筋腱の間)に指を入れ,手関節を尺屈すると舟状骨がとびだしてきます。
掌側では舟状骨結節を触れます。
手関節を背屈したときの手根部掌側で橈側にある膨らみは舟状骨結節と大菱形骨結節によるもので,より近位にあるのが舟状骨結節です。

舟状骨結節と大菱形骨結節は,屈筋支帯の橈側の付着部です。

月状骨 lunate

月の形に見えるのは外側から見たときで,レントゲン画像では,三日月状の月状骨はすぐ見つかります(図 2)。

側面(橈側)から見た月状骨
図 2: 月状骨の側面

関節を作る骨:橈骨(関節円板),三角骨,舟状骨,有頭骨(ときに有鈎骨)。

付着する筋:なし

キーンベック病は,月状骨の無腐性骨壊死症です5)
キーンベック病の原因は確定していませんが,原因の仮説として血行途絶があります。
月状骨は軟骨に覆われている部分が多いため,血流障害が起こりやすいという特徴があります。

触診:有頭骨とリスター結節の間で,手関節を掌屈すると突出してきます。

三角骨 triquetrum

関節を作る骨:関節円板(橈骨),月状骨,有鈎骨,豆状骨

付着する筋:なし

触診:手根部の背側で,尺骨茎状突起の遠位にある骨隆起が三角骨です。
橈屈すると触れやすくなります。

豆状骨 pisiform

最も小さい手根骨です。
尺側手根屈筋の腱の中にできた種子骨です。
豆状骨は屈筋支帯の尺側の付着部です。

関節を作る骨:三角骨

付着する筋:尺側手根屈筋,小指外転筋

触診:手根部の尺側にある隆起が豆状骨です。
簡単に触れて動かすことができます。

大菱形骨 trapezium

関節を作る骨:第 1 中手骨,第 2 中手骨,小菱形骨,舟状骨

付着する筋:長母指外転筋,短母指屈筋,短母指外転筋,母指対立筋

触診:舟状骨と第 1 中手骨の間で触れることができます。
タバコ窩で舟状骨に触れてから第 1 中手骨に向かって指をずらしていき,手根部の外側で大菱形骨に触れます。
また,手関節を背屈したときの手根部掌側で橈側にある膨らみは舟状骨結節と大菱形骨結節によるもので,より遠位にあるのが大菱形骨結節です。

小菱形骨 trapezoid

骨折が少ない手根骨です6)

関節を作る骨:舟状骨,大菱形骨,有頭骨,第 2 中手骨

付着する筋:短母指屈筋

触診:最も触れにくい手根骨です。
背側で,大菱形骨,第 2 中手骨,有頭骨,舟状骨で囲まれたところで触れます。
掌側では,母指球筋に覆われているため,さらに触れにくくなります。

有頭骨 capitate

手根骨のなかでは最大です。
近位部が丸くなっており,それが有頭骨の名前の由来です。

有頭骨と第 3 中手骨による手根中手関節は可動性がほとんどなく,一つの列として機能します。

関節を作る骨:舟状骨,月状骨,小菱形骨,有鈎骨,第 2 〜 4 中手骨

付着する筋:短母指屈筋,母指内転筋

触診:橈骨のリスター結節と第 3 中手骨の間で,手根部背側の中央で凹んでいるところにあります。
手関節を掌屈すると出てきますが,はっきりと感じられるのは月状骨です。

有鈎骨 hamate

有鈎骨鈎が突出しているのが特徴であり,名前の由来です。
有鈎骨鈎,豆状骨,豆鈎靭帯で囲まれた管がギヨン管で,尺骨神経と尺骨動脈が通ります。
有鈎骨鈎は屈筋支帯の尺側の付着部です。

関節を作る骨:第 4・5 中手骨,有頭骨,三角骨,月状骨

付着する筋:尺側手根屈筋,短小指屈筋,小指対立筋

触診:手根部背側で,第 4・5 中手骨と三角骨の間で触れます。
有鈎骨鈎は,豆状骨の斜め上(母指と示指の間の方向)にあります。
検者の母指の IP 関節を豆状骨におくと,母指先端のあたりが有鈎骨鈎です。

おわりに

国家試験などでは,語呂合わせで機械的に覚えていれば十分ですし,速く答えることもできます。
しかし,臨床で実用的に使えるようになるためには,各手根骨の特徴もセットで覚えた方がいいでしょう。
また,理学療法士であれば,手根骨のモビライゼーションができなければいけませんので,触診が重要になってきます。
また,触診をしながら覚えた知識は,試験では圧倒的に有利です。
試験中に目の前にある実物を触りながら思い出すことができます。

参考文献

1)越智淳三(訳): 解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001, pp63-64.
2)金子丑之助: 日本人体解剖学上巻(改訂19版). 南山堂, 2002, pp73-77.
3)嶋田智明, 平田総一郎(監訳):筋骨格系のキネシオロジー. 医歯薬出版, 2005, pp189-202.
4)納村直希: 舟状骨骨折. MB Med Reha. 2020; 244: 35-40.
5)村田景一: キーンベック病の病態・診断とその治療. MB Orthop. 2016; 29: 65-43.
6)川崎恵吉, 上野幸夫, 他: 手根骨骨折(舟状骨を除く)の診断と治療方針. MB Orthop. 2019; 32: 61-71.
7)野島元雄(監訳): 図解 四肢と脊椎の診かた. 医歯薬出版, 2000, pp61-68.
8)津山直一, 中村耕三(訳): 新・徒手筋力検査法(原著第9版). 協同医書出版社, 2015, pp464-468.

2021年3月10日

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