理学療法士国家試験問題(医療面接):解答と解説

はじめに

理学療法士国家試験の過去問より,医療面接に関する問題を集めました。
その解答と詳しい解説です。

医療面接の問題は,毎年ではありませんが,確実に出題されるようになっていますので,ちゃんと押さえておきたいところです。

基本的で教科書的な解説だけでなく,実際の医療面接を想定して,少し踏み込んだ解説もしています。

医療面接の用語が不確かな方は以下の記事をご参考にしてください。
医療面接の基本的な技術(PT・OT向け)

目次

第 57 回理学療法士国家試験

出題なし

第 56 回理学療法士国家試験

午後 18

80 歳の女性。夫と 2 人暮らし。認知症があり,MMSE は 13 点。自宅にて転倒し,救急搬送され大腿骨頸部骨折と診断されて人工骨頭置換術が行われた。その後,回復期リハビリテーション病棟へ転棟し,理学療法を開始したが消極的である。
理学療法中の患者の訴えへの返答で適切なのはどれか。

患者の訴え理学療法士の返答
1「あなたのお名前は?」と繰り返し聞かれた「さっきも答えましたよ」
2「今すぐ帰りたい」と繰り返し訴えた「帰りたいのですね」
3関節可動域運動中に術部に痛みを訴えた「我慢してください」
4「今日はやりたくない」と強く訴えた「やらないと歩けなくなりますよ」
5「財布を盗られた」と訴えた「財布は持ってきてはいけませんよ」

正解 2

解説

感情に関する訴えに対しては,まずは共感することが優先されます。
問題の患者は理学療法に対して消極的なのですが,共感によって患者の満足度があがり,理学療法に対しても積極的になることが期待できます。
共感を示すため基本的なテクニックは,相手が言ったことを繰り返すことです。

1.「さっきも答えましたよ」という返答は,「あなたは忘れています,記憶力が低下しています」と言っているのと同じです。
認知症の人は,自分の認知機能が低下していくことに恐怖を感じていたりします。
そんな人に,認知機能が低下していることを念押しするようなことを言ってはいけません。

名前を聞くことで何を得ようとしているのかは,問題からは分かりません。
仲良くなりたいのかもしれませんし,名前を知らないなどという失礼なことはしたくないのかもしれません。
いずれにしても,何らかの感情があるでしょうから,それに応える返答が求められます。

2.相手の言葉を繰り返すことで共感を示そうとしています。
基本通りの適切な返答です。

3.我慢させることが運動療法として適切かどうかは,問題からは分かりません。
我慢してもらうことが必要であるのなら,そんな大変なことをお願いする前に,まずは痛みという不快な気持ちに対する共感を示さないと,お願いは聞いてもらえません。

4.やらないと歩けなくなると分かっていても,それでもやりたくないときはあります。
そんな気持ちにまずは寄り添うことが大切です。
感情面で落ち着いていないと,やらないと歩けなくなるという理屈の話は聞くことができません。

それに,やりたくないということは,患者は何かつらい状況にあるということです。
そこに,歩けなくなるかもしれないという恐怖を上乗せしてしまうと,ますますつらくなります。

また,「やらないと歩けなくなる」という言い方は,恐怖で相手を支配しようとする方法であり,広い意味での暴力です。
その点でも不適切です。

5.「財布は持ってきてはいけませんよ」という返答は,財布を持ってきたあなたが悪いと言っていることになります。
実際,財布は持ってこずに金庫のようなところに保管しておくべきなのでしょうが,まずは財布がなくなって困っている気持ちに対応すべきです。

いわゆる物盗られ妄想では,財布をなくしてしまうほど認知機能が低下した自分を認めたくなくて,自分のせいではなく,誰かのせいにしたいという心理が働いている可能性があります。
そこにあなたが悪いというようなことを言ってしまうと,ますます状況は悪化していきます。

共感を示すのであれば「財布を盗られたんですね」などと返します。
「財布が無くなったんですね」と言い変えてもいいのかもしれませんが,物盗られ妄想をさりげなく修正することになり,逆効果かもしれません。

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第 53 回理学療法士国家試験

午後 50

問診で用いる質問の種類とその具体例の組合せで正しいのはどれか。

1.閉じた質問〈クローズド・クエスチョン〉—-「痛むのは膝内側ですか,外側ですか,それとも前ですか」
2.聞いた質問〈オープン・クエスチョン〉—-「今日の具合はいかがですか」
3.中立的質問〈ニュートラル・クエスチョン〉—-「痛みはありますか」
4.多項目の質問〈マルチプル・クエスチョン〉—-「膝の痛みについて詳しく教えてください」
5.焦点型質問〈フォーカスト・クエスチョン〉—-「お名前を教えてください」

正解 2

解説

1.膝内側,外側,前の 3 つの中から選んでもらうのは「多項目の質問」です。
「多選択肢の質問」ともいいます。

2.「今日の具合はいかがですか」という質問は,典型的な「開いた質問」の一つです。

今日の具合というテーマに焦点を絞った「焦点型質問」だという解釈も可能ですが,会話を始める合図のようなところもあり,答える内容に自由度がありますので「開いた質問」といえます。
例えば,「今日の具合は?」と聞かれて,「今日はいいことがありました。孫が見舞いに来てくれました」と答えたとしても,会話はある程度成り立っています。
「開いた質問」と「焦点型質問」の区別はときに困難です。

3.「痛みはありますか」という質問は,「はい」か「いいえ」で答える質問ですので,「閉じた質問」です。

ちなみにですが,例えば,「痛みはありますか」に対して「吐き気があります」というような答えが返ってくることがあります。
痛みがあってさらに吐き気があるのか,あるいは,痛みではなくて吐き気があるのかが分からなくなります。
質問する側も答える側も気をつけたいところだと思います。

4.膝の痛みにテーマを絞る質問は,「焦点型質問」です。

5.名前を尋ねるのは中立的な質問です。

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第 52 回理学療法士国家試験

午前 26

医療面接における自由質問法はどれか。

1. 「ご家族は何人ですか」
2. 「お名前を教えてください」
3. 「いつ頃から痛み出しましたか」
4. 「どのようなことでお困りですか」
5. 「痛いところは右ですか。左ですか」

正解 4

解説

自由質問法とは開かれた質問 Open-ended Question のことです2)

1, 2.家族の人数や氏名を確認するのは,中立的質問です。

3.痛みの経過に焦点を絞っていますので,焦点型質問です。

4.困っていることに焦点を絞っている焦点型質問であると解釈することもできますが,どの分野で困っているのか限定しておらず,比較的自由に答えることができますので,自由質問法(開かれた質問)です。

焦点型質問と自由質問法の区別はときに困難ですが,この問題では他の選択肢が明らかに自由質問法ではありませんので,消去法で自由質問法であると分かります。

5.選択肢を提示していますので,多選択肢の質問です。

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第 50 回理学療法士国家試験

午後 20

75 歳の女性。左変形性膝関節症。翌日に左側の人工関節置換術を施行予定のため,術前の理学療法評価を実施した。術前評価を終了した際に患者は「明日の手術が心配です」と訴えた。
理学療法士の対応として適切なのはどれか。

1.「手術をやめたいということですか」
2.「つらいのは 1 週間くらいなので,大丈夫ですよ」
3.「手術を頑張れば,膝関節の伸びがよくなりますよ」
4.「手術をすれば,今より楽に歩けるようになりますよ」
5.「手術を明日に控えて,いろいろと心配になりますよね」

解答 5

解説

訴えに対しては,まずは共感するのが基本です。
そして,心配することではないという言い方は,相手の心配する気持ちを否定することになりますので共感ではありません。

1.共感を飛ばして,患者の真意を探る問いになっています。
患者の気持ちをより正確に知ることは必要ですが,まずは共感を示すことで,本当の気持ちを話してくれやすくなります。

言い方によっては,「直前にキャンセルなんかされたら困ります」と責めるような問いになってしまいます。

患者が「本当は手術なんかしたくない」と思っているのであれば,共感的な言葉になる可能性はあります。

2.患者の気持ちを否定していますので,共感ではありません。

「大丈夫ですよ」という言葉は,「心配するようなことではない,あなたの気持ちは間違っている」と言っていることになります。
それに,そもそも,術後のつらさが心配だとは言っていません。
ただし,「心配です」の後に,「手術のあとはつらいと聞いたもので」と言おうとしていたのあれば,会話はうまくつながるかもしれません。

3, 4.どちらも,「後でいいことがあるから我慢しなさい」と言っていることになり,患者の今の気持ちを否定することになります。
共感ではありません。

手術前の気持ちとして「よくなりたいから手術を選んだけれど,やっぱり心配」というのはよくあることです。
そんなときに,手術をすれば良くなるという内容の話をしても,「それはあなたに言われなくても分かっている」という反発を買う可能性が高いでしょう。
また,選択肢 1,2 と同様で,患者の気持ちを確かめないまま一方的に話を続けていることになり,いい会話にはなりません。

さて,モチベーションをあげるための,「後でいいことがあるから」とか「後で痛い目にあうから」という言い方は,たいていは効果がありません。
例えば,勉強した方がいい,運動した方がいい,食べ過ぎはよくないと分かっていても,勉強や運動はする気がおきないし,ついつい食べ過ぎてしまうものです。

「手術を頑張れば」という言い方は変です。
手術を頑張るのは医療スタッフであり,患者ではありません。
小さなことですが,積み重なると不信感につながることがあります。

5.相手が言ったことと同じ内容のことを繰り返すのは,共感を示すための基本テクニックです。

「理学療法士の対応として適切なのはどれか」という問いは言葉足らずのような気がします。
患者の訴えに対する最初の発言として適切なのはどれかを問うている問題です。
対応全体のなかでは,正解の選択肢以外の発言も使われる可能性が十分あります。

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第 49 回理学療法士国家試験

午後 79

「治る見込みがないのにリハビリテーションを続けるのはとても苦しいです」という訴えへの共感的な対応はどれか。

1.「それは誤った考えですね」
2.「もう少し頑張りましょう」
3.「つらく感じているのですね」
4.「なぜそのように思うのですか」
5.「続けることにより効果が現れてきます」

解答 3

解説

1.否定しており,共感的ではありません。

「苦しい」は感情であり,考えではありません。
そして,感情は正しいか誤っているかを決められるものではありません。
ですので,筋と通らない暴力的な言葉になっています。

2.「もう少し頑張りましょう」は,患者の頑張りが足りないというメッセージになります。
患者を否定することになり,共感的ではありません。

「もう少し頑張りましょう」と言えるときは,あともう少し頑張ればいい結果が得られる可能性がとても高いときで,そのことを患者が実感しているときです。
問題文の患者の心はもうほとんど折れています。
心が折れていればもう頑張れませんので,頑張れと言っても意味はありませんし,頑張れない自分を責めるようになってさらに苦しくなります。

3.「苦しい」を「つらく」に変えていますが,相手の言ったことを繰り返しており,共感を示す言葉としては典型的なものです。

4.叱るときに「どうしてそんなことをするの」みたいな言い方がよく使われます。
ですので,「なぜそのように思うのですか」は,叱られているような否定的な感じのする言葉です。
そして,選択肢 1 の「それは誤った考えですね」に近い意味になります。
否定的な意味にとられなくても,理由を聞いているだけであり,共感的ではありません。

5.苦しいという感情のもとになっている認識を正そうとする発言であり,共感的ではありません。
効果が見込めるのであれば,それを患者に理解してもらう必要があります。
でも,その話をするのは,とても苦しいという訴えに応えてからです。

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第 47 回理学療法士国家試験

午前 20

新人の理学療法士が「医療面接の際にはもっと焦点型質問(focused question)を増やすとよい」との助言を受けた。
焦点型質問に相当するのはどれか。

1.「昨晩はよく眠れましたか」
2.「それはどのように痛むのですか」
3.「何か気になることはありませんか」
4.「装具で歩きやすくなりましたか」
5.「今の説明でわからない点はありますか」

解答 2  

解説

1・4.「はい・いいえ」で答えてもらう質問ですので,閉じられた質問です。

2.痛みの性質にテーマを絞った質問ですので,焦点型質問です。

3・4.「ありませんか」「ありますか」と聞かれたら,「はい・いいえ」で答えることができますので,閉じられた質問です。
しかし,気になることや,分からない点があれば,それについて話してもらう質問ですので,気になることや分からない点に焦点を絞った焦点型質問のようでもあります。
あるいは,「気になることはありませんか」と聞かれたら,かなり広い範囲で答えることができますし,他に話したいことがあればなんでも言ってくださいという意味合いも含まれていますので,開かれた質問であると考えることもできます。

問題文で気になるところがあります。
「新人の理学療法士が(中略)との助言を受けた」のくだりですが,ほとんどいらないのではないでしょうか?
「医療面接における焦点型質問に相当するのはどれか」だけで,同じ問題として成り立つと思います。

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午前 81

面接における傾聴的な態度はどれか。

  1. 相づちを打つ。
  2. 行動の理由を説明させる。
  3. 事実関係を正確に確認する。
  4. 患者の感情に焦点を当てない。
  5. 話が途切れそうになったら新たな話題を提供する。

解答 1

解説

傾聴的な態度とは,相手の話をよく聞くということであり,相手の話したいことを話してもらうということです。
話を促すために,相づちを打ったり,「それで」というような言葉をかけたりします。
相手の話を遮ったりはしません。
より積極的に聞くために,話を引き出すための質問をすることもあります。

1.相づちがあれば相手は話しやすくなりますので,傾聴的な態度です。

2・3.解釈が難しい選択肢です。
行動の理由や事実関係を知りたいと思ったのが聞き手で,聞き手がその話をするようお願いしたのであれば,傾聴的な態度ではありません。
しかし,話し手が理由や事実関係を話したがっているのを聞き手が察知して,話をするよう促したのであれば,傾聴的な態度です。

4.話す内容を限定することになりますから,傾聴的な態度ではありません。

5.話が途切れそうになるのは,何かを思い出そうとしていたり,考えや気持ちを整理しようとしているのかもしれません。
そこで新たな話題を出すことは,相手が話そうとしていることを邪魔することになり,傾聴的な態度ではありません。
沈黙は傾聴のための基本的な技術の一つです。

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第 46 回理学療法士国家試験

午前 20

70 歳の女性。上腕骨近位端骨折の治療後に肩関節拘縮を生じたために理学療法を開始した。理学療法を開始した翌日に「昨夜は肩が痛くて眠れませんでした」と訴えた。
理学療法士の対応で共感的態度はどれか。

1.「私の治療法が悪かったとお考えなのですか」
2.「肩の炎症が痛みの原因であると考えられますね」
3.「昨日が理学療法初日だったから痛かったのでしょう」
4.「痛みで眠れないということは大変つらかったでしょうね」
5.「痛み止めの薬を出してもらえるよう医師に相談しますね」

解答 4

解説

1.自分が悪いのかどうかをまず確認しようとしており,患者のつらさには寄り添っていませんので,共感的態度ではありません。

2・3.どちらも痛みの原因について話しています。
患者の訴えは,常識的に解釈すれば,「つらかった」という訴えです。
その感情に対応していませんので,共感的態度ではありません。
ただし,もしかすると患者は「心配だから早く痛みの原因を解明して欲しい」と訴えているのかもしれません。
そうであれば,痛みの原因の説明は,共感的な要素を持つことになります。

「初日だから」という説明は,「初日はみんな痛みがでるんです」という意味になります。
このような発言は患者の「私は特別だ」という気持ちをないがしろにすることになります。

4.「つらかったでしょうね」は,共感的態度を示す,典型的な発言です。

5.痛みには対応していますが,「つらかった」という気持ちには対応しておらず,共感的な態度ではありません。

患者が「痛かった」と言っただけで,薬が必要だと考えるのは,明らかに変です。
評価をしないと分からないはずです。

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第 45 回理学療法士国家試験

午前 20

80 歳の男性。右大腿骨骨折の手術後 4 週で回復期リハビリテーション病棟に転棟した。初回訓練時の理学療法士(PT)と患者との会話を以下に示す。
PT (1)「こんにちは。○○太郎さんですか。担当する理学療法士の△△花子と申します」
患者「はい,○○太郎です。よろしくお願いいたします」
PT (2)交通事故で右の太ももの骨を骨折されて本当に大変でしたね」
患者「はい」
PT (3)骨を固定する手術を受けてから 4 週間が過ぎましたが,右膝関節拘縮と筋力低下を起こし,歩行障害となっているのですね」
患者「まだ足をついてはいけないと言われています」
PT (4))今日はこれから右膝の関節を柔らかくする運動と足の力を強くする運動,右足に体重を乗せないで歩く練習を行います。関節を曲げるときに少し痛いかもしれませんが,我慢ができないときには遠慮なさらずにおっしゃってください」
< 運動実施>
患者「少し痛いのですが」
PT (5)「すみませんでした。もう少し優しく行うように配慮いたします。運動の前に関節を温めておきますと痛みが少なくて済むことがありますので,担当医とよく相談して許可を得るようにいたします」
理学療法士の発言で適切でないのはどれか。

1.(1)
2.(2)
3.(3)
4.(4)
5.(5)

解答 3

解説

1.本人確認をして,自己紹介をしているだけですので,不適切ではありません。

ただし,この PT の発言は,挨拶,本人確認,自己紹介の 3 つを 1 回の発言で行なっており,分かりづらい発言です。
患者は「こんにちは」と挨拶された直後に挨拶を返そうとしたはずですが,次の質問がきたために挨拶することができませんでした。
「こんにちは」と言えなかったと思いながら,名前が合っていると答えていますので,理学療法士の名前は覚えれらなかったりするでしょう。
また,患者の発言をさえぎったことになりますので,失礼な態度です。
ですので,どちらかというと適切な発言ではないと,私は思います。

2.まず共感的な態度を示すのは大切なことです。

しかし,会話の流れはやや不自然だと私は感じます。
ちなみに,患者の背景は様々で,医療者が共感的な態度は大事だと習うことを知っている場合があります。
そういう人の場合,共感を示す言葉が不自然だと,「かたちだけの共感だな」と思われる可能性があります。

交通事故で受傷した方で,被害者意識が強いと,痛みをより強く感じてしまうことがあります。
交通事故のことには触れない方が無難かもしれません。

3.専門用語を使っていることが不適切です。

そのあとの患者の発言が,「まだ足をついてはいけないと言われています」となっており,噛み合っていません。
つまり,患者は PT の発言の意味が分からなかったということです。

4.ただの説明ですので,問題はなさそうです。

しかし,「我慢ができないときには遠慮なさらずにおっしゃってください」と伝えていますが,これは「ちょっとぐらいは我慢してください」と言っていることにもなります。
我慢強い患者だと,痛いとは言ってくれなくなりますので,あまりいい発言ではありません。

5.適切かどうかを判断しにくい発言ですが,選択肢 3 が明らかに不適切ですので,これは適切だということになります。

患者の訴える痛みに対して,評価もせずに「優しく行う」とか「温めた方がいいかも」という介入を決めてしまっています。
問題文の中のシナリオなのですから,少々の矛盾は気にしなくてもいいのでしょうが,かなりの違和感が残ります。

また,「担当医と相談して許可を得る」という発言は,「温めた方がいいのだけど,医師の許可が必要だ」というような意味にも取れます。
それで,許可がおりなければ,PT の判断は間違っていたことになり,患者に不信感が生まれます。

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おわりに

医療面接の問題は,実際の場面を想像すればするほど,答えが分からなくなります。
国家試験では,教科書的で典型的な発言であれば,それでよしとすることになります。
実際の医療面接のスキルアップをしたいのであれば,いろんな場合を想定して,訳が分からなくなるくらいで,ちょうどいいと思います。

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参考文献

1)福井次矢: メディカル・インタビューマニュアル – 医師の本領を生かすコミュニケーション技法(第3版). インターメディカ, 2002, pp21-49.
2)竹村洋典: エビデンスに基づいたわが国における患者とのよりよいコミュニケーションとは. 薬局. 2012; 63: 128-131.

2021 年 3 月 15 日

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