MMT の基本 – 抵抗をかける方向

はじめに

徒手筋力検査(MMT)の基本である抵抗をかける方向について考えることができる国家試験問題があります。

第54回理学療法士国家試験の午後問題2で,「Daniels らの徒手筋力テストにおける段階4の検査法で正しいのはどれか1)」という問題です。

以下の図(図 1)に注目してみましょう。
股関節屈曲の検査で,ちょうど正解の選択肢の図です(他の選択肢は省略)。

股関節屈曲のMMT,段階4・5の抵抗
図1: 文献1)より,一部改変

力の分解

さて,MMT で抵抗をかけるときは,検査する運動に対抗する力を加えるのですから,運動軸に対して直角の方向に抵抗をかけます。
斜めになっていれば,加えた力が分散してしまいます。

図 1 では,股関節は最終域まで屈曲していますが,抵抗の矢印は真下を向いています。
ですので,大腿に対して斜めに抵抗をかけていることになり,大腿を長軸方向に押し込むことにもなります。
ちょっと物理学的な言い方をすると,検者の抵抗は大腿の運動に対抗する力と大腿を股関節に対して押し付ける力に分解されてしまいます。

検者が加える力の強さが同じでも,まっすぐに抵抗をかけたときと比べて,斜めに抵抗をかけたときには,運動に対抗する力は弱くなっています。
斜めのときには,より強い抵抗を加えることになり,筋力の判断を誤ることになります。

別の運動を誘発

抵抗が斜めになっていると,別の運動を誘発してしまうことがあります。

図 1 では,検者が股関節を内転する方向にも抵抗をかけているように見えなくもありません。
もし,内転する方向に抵抗をかければ,被験者は股関節を外転する方向に力を入れてしまいます。
それだと,別の運動の検査になってしまいます。

図の修正

図 2 は矢印と抵抗をかける検者の手を修正したものです。
ただし,前腕の位置が変われば,手の形も変わるのでしょうが,そこまで細かくは描写していません。

股関節屈曲のMMT,抵抗の方向を修正
図2

ちなみに,MMT の教科書2)では,抵抗の方向についてあまり詳しく書かれていないようです。
ですが,抵抗の方向は大事です。
MMT だけでなく,他の検査や治療でも,力を加えるときには,その方向が大切です。
理学療法の基本技術といってもいいでしょう。

図をみても気づかないことについて

話は横道にそれます。

実際に正しく抵抗をかけることができるのに,図をみて抵抗の方向がおかしいとは気づかない人がいるのではないでしょうか?

なぜ気づかないのかはよく分かりませんが,図を描く能力や図を読み取る能力には,けっこうな個人差があるのかもしれません。

臨床家としては,まずは正しく抵抗をかけることが求められます。
でも,図を使ってコミュニケーションをとる場合があります。
住宅改修をしている建築士の方が,「セラピストが示す図面(スケッチ)が分かりにくい」と嘆いていたことがありました。

おわりに

学生で,今回の国家試験の図に違和感を覚えたのなら,いいセンスを持っていると言えるのかもしれませんね。

参考文献

1)第54回理学療法士国家試験、第54回作業療法士国家試験の問題および正答について
2)津山直一, 中村耕三(訳): 新・徒手筋力検査法(原著第9版). 協同医書出版社, 2015.

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