医療面接の基本的な技術(PT・OT向け)

はじめに

医療面接における基本的な技術や用語について簡単にまとめてみました。

目次

傾聴 Listening

患者の話をよく聴くことです。
それだけで患者の満足度は上がるものです。
医療面接における最も重要な技術といえるかもしれません。

ただ,聴くだけでなく,患者が口に出せずにいることを積極的に引き出し,それを聴くという姿勢が大切です。

共感 Empathy

患者の感情を理解していることを言葉で伝えることです。
「それは大変ですね」とか「とても痛いのですね」というような言葉が典型的です。
本当にそう思っていることが大切で,心がこもっていとはすぐにバレてしまうものです。

共感によって,「分かってもらえた」と感じてもらえます。
情緒的な満足は,良好な関係を築き,問題解決に気持ちが向かうことを助けます。

繰り返し Repeat

患者が話した内容を繰り返すことです。
以下のようなやりとりです。

患者:歩き始めると右の膝が痛みます。
PT:歩き始めると痛むのですね。

話の内容を確認し,次の話を促すという働きがあります。
また,共感していることを伝える働きもあります。

ただ繰り返すだけですので簡単です。
繰り返しながら,頭の中で分析などを行うことができます。
しかし,「繰り返し」が続いてしまうと,別のことを考えていて,真剣に聞いていないと思われる可能性もあります。

沈黙 Silence

患者が黙ってしまったとき,それを見守り待つことです。
お互いに沈黙の時間を共有します。

患者が沈黙する理由は様々です。
何かを思い出そうとしていたり,考えを整理していたり,気持ちを整理していたりします。
話しかけてしまうと,それらを邪魔することになります。

促し Facilitation

患者が話を続けられるようにするための言葉や表情などのことです。
「それでどうなりましたか?」という問いかけや相づち,頷きなどが促しにあたります。

話が理解できたことや重要な話であるということを伝えれば,患者は話を続けやすくなります。

解釈 Interpretation

あいまいなところを,わかりやすく言い直したり,説明を加えることで内容を確認することです。

解釈が間違っていれば,患者から「そうではありません」と返ってくるはずですが,患者側からは否定的な話はしにくいこともあります。
「分かっていない」と苛立たせてしまうかもしれません。
良い関係ができていないと,「解釈」はうまくいきません。

理学療法士側の思い込みが強くて,間違った解釈が修正されないことがあります。
気をつけたいものです。

要約 Recapitulation

まわりくどくて,まとまりのない話の時に,それまでの話の内容をまとめて,患者に確認をとることです。
話が長い時にも,途中でまとめるといいでしょう。

要約によって重要な情報が抜け落ちてしまわないよう気をつけます。

直面化 Confrontation

患者自身がはっきりとは気づいていない感情や,あえて口に出さなかった感情を,言葉にして指摘することです。

リハビリテーションでは,障害を受容したり,目標を話し合ったりする過程で,自分の本当の気持ちに向き合うことが必要になることがあります。
そういう時に,直面化は有効です。
しかし,患者を傷つける可能性のある難しいテクニックです。

妥当化 Legitimization

患者は自分の持っている障害や,それに対する治療に対して,自分なりに判断し,行動し,様々な感情を抱きます。
そして,その判断,行動,感情が妥当なことであるという自信が持てず,不安や後悔の念を感じることがあります。
そんな不安や後悔の念などに対して,当然であると認め,受け入れることを伝えることです。
「同じ立場なら私だってそうします」とか「そう思うのは当然です」というような言葉です。

妥当化は本来は患者に安心してもらうために行うものですが,ときに,こちらの要求を通したり,患者の間違いを指摘する前に,まずは患者を認めるという形で使われることがあります。
そのような妥当化が続いてしまうと,「認められた後に嫌なことが待っている」と思われるようになります。

説明 Exposition

患者の訴えに対して理学療法学的な解釈を説明をすることです。
専門用語をできるだけ使わずに,分かりやすく説明します。

理学療法は,説明し,同意を得たうえで行うものですので,説明は必ず行っていると思います。
しかし,安心してもらうための説明という観点が忘れられがちです。
患者が知りたいと思っていることを患者が聞きたいタイミングで説明しなければなりません。

私も何度か失敗しましたが,共感してもらいたい時に説明をしてはいけません。
「なんでこんなに痛いの?」は,痛みの原因を説明して欲しいということだとは限りません。
「この辛さを分かって欲しい」という訴えであるかもしれません。

非言語的コミュニケーション Nonverbal Communication

表情やしぐさ,および準言語(トーン,イントネーション,ピッチなど)によるコミュニケーションです。
コミュニケーションは非言語的コミュニケーションが大半を占めているとされています。
とても重要なものですが,自分がどのような非言語的コミュニケーションをとっているのかを知り,それを制御することは,とても難しいことです。

雑談 Free Talking

理学療法とは直接関係のない会話です。
良好な人間関係を築いていくためには雑談も必要です。

場の雰囲気を和らげる効果がありますが,不自然な雑談は逆効果になることもあります。

質問

ここからは,医療者から患者(理学療法士から対象者)への質問の種類(分類)について解説します。

中立的質問 Neutral Question

名前,生年月日,職業,住所などを尋ねる質問です。
答えは一つだけです。

「中立的」ですので,特に問題のない質問なのかもしれませんが,職業,住所を尋ねることは,場合によっては相手を不快にさせることがありますので気をつけましょう。

開かれた質問 Open-ended Question

相手が自由に答えられる質問です。
何についてどう話すのかは,相手にまかせます。
「どうされましたか?」が典型的な開かれた質問です。

会話の最初に使うといい質問です。
相手にまずは自由に話してもらい,その話を邪魔せずに熱心に聞く態度を見せることで,信頼関係を作っていきます。

理学療法における開かれた質問の典型例を考えてみたのですが,どうも思いつきません。
理学療法士が,「どうされましたか?」と聞くことはあまりありません。
例えば「ケアマネージャーからだいたいの話は聞いていますが,訪問リハを始めることになった経緯を○○さんの言葉で教えていただけませんか」というような話が開かれた質問です。
他に「他に気になることはありますか?」とか「一番お困りのことは何ですか?」とか「お風呂にはどのようにして入っていますか?」というのも開かれた質問です。
後で出てくる「焦点を絞った質問」との区別はやや曖昧です。

閉じられた質問 Closed Question

相手が「はい」か「いいえ」で答えることになる質問です。
例えば「一人で外出しますか?」と質問すれば,相手は「はい」か「いいえ」で答えます。

一つの質問で一つの情報しか得られないことが多く,情報収集の効率は悪くなります。
しかし,ピンポイントで重要な情報を確認したい時には閉じられた質問が役にたちます。

閉じられた質問が続いてしまうと,質問を受ける側が「聞かれたことにだけ答えたらいい,自分から話をしなくてもいい」と感じてしまうことがあります。
つまり,受動的な態度に陥りがちになります。
リハビリテーションは患者(対象者)の積極的な参加が重要です。
閉じられた質問の使いすぎには注意しましょう。

焦点を絞った質問 Focused Question

特定のテーマに焦点を絞った質問です。
閉じられた質問よりは自由に答えることができますが,テーマが限られていますので,開かれた質問ほどには自由に答えることはできません。
「分野を絞った開かれた質問」ともいえます。

例えば,「一人で外出できないということですが,具体的にどんな手助けが必要なのかを教えていただけますか?」と言った質問が焦点を絞った質問です。

障害構造を分析したり,治療対象を明確にしていくような質問であり,医療面接ではよく使われる質問です。

重複型の質問 Double Question

一度に2つ以上の内容を尋ねる質問です。

「食事とトイレとお風呂はどうしていますか?」というような質問です。

何を尋ねられたかが分からなくなることも多く,相手を困惑させてしまう質問です。
尋ね直すことになって効率が悪くなりがちです。
よって,出来るだけ使わないほうがいい質問です。

多選択肢の質問 Multiple Choice Question

何通りもの答えがあるのに,その中からいくつかを取り出して選択を迫る質問です。

「痛むのは膝の内側ですか?外側ですか?」というような質問です。

相手に当てはまらない選択肢をあげてしまうと,「分かってない」という不信感が生じることがあります。
一方,うまく当てはまっていれば,信頼につながるかもしれません。

どのような答えを期待しているかの例として選択肢をあげることで,相手の理解を助けることができます。
一方,多選択肢の質問をたたみかけてしまうと,「期待した答えが返ってこず,イライラしている」というような雰囲気になってしまうことがあります。
気をつけて使う必要があります。

誘導的な質問 Leading Question

あらかじめ予測した答えを相手に言って,同意を取り付けようとする質問です。

例えば,ずっと痛みが続いていると相手が言ったあと,「ビリビリする痛みですね」というような質問です。
実際にビリビリする痛みなのであれば,話は効率よく進むことになりますし,信頼を得ることもできます。
ビリビリに近い痛みだとどうなるでしょう。
ビリビリとはちょっと違うけど「まあ,そんな感じです」などと答えてしまうかもしれません。
このような会話になってしまうと,正しい情報を得ることはできません。

また,多選択肢の質問と同じで,高圧的な口調になってしまいがちな質問です。
あまり使わないほうがいいでしょう。

解釈モデル Explanatory Model を尋ねる質問

例えば,「楽に歩けるようになるまでに,どれくらいの期間が必要だと思いますか?」というような質問です(こんな直球で尋ねることは少ないかもしれませんが,,,)。

障害構造や治療方法などに対する,患者(対象者)の考えや信念を確認する質問です。
セラピストと患者(対象者)の間で極端に食い違っていると,リハビリテーションの進行を妨げることがありますので,確認しておく必要があります。

クロージング Closing

医療面接の終わりには,言い残したことがないかを尋ねます。
また,面接終了後に話したいことが出てきたらどうすればいいのかを伝えます。
そうすることで,「全部話せていない」という不満を少なくすることができます。

おわりに

理屈だけでは,医療面接はうまくいかないという面はあります。しかし,以上のような知識があれば,自分の医療面接技術を分析する時に,とても役にたつと思います。
理学療法士国家試験にも出題されています。

参考文献

1)福井次矢: メディカル・インタビューマニュアル – 医師の本領を生かすコミュニケーション技法(第3版). インターメディカ, 2002, pp21-49.
2)田村康二: 医学的面接のしかた-聞き上手,話し上手になる技術. 医歯薬出版, 2000.

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