体重測定の標準的な方法

はじめに

体重の正しい測り方(標準的な測定方法)を紹介します。

体重は食事,水分(運動や入浴による汗),衣服などの条件によって大きく変動するため,測り方を統一することが重要です。
また,第 54 回理学療法士国家試験(午後問題 25)でも出題されており,どれがスタンダードであるのかを確認しておく必要があります。

平成元年に文部省から出された「一般定期健康診断検査方法の手引き1)」が広く知られているようです。

体重測定の方法

体重計の設置と準備

硬い床面に置きます。

体重計は水平にします。
水平器がついている体重計であれば便利です。

体重計が動かないよう固定します。

キャリブレーション(ゼロ点校正)を行います。
キャリブレーションとは,体重計に何も乗っていない状態で,0 kg と表示されるようにすることです。
体重計によってやり方は異なります。

測定前の被験者の準備

測定前の約 1 時間は飲食させません。
また測定前に必ず排尿させます。

排便に関して,一般定期健康診断検査方法の手引き1)には記載がありません。
排便後に統一する方が誤差は出にくいのでしょうが,健康診断の前に確実に便を出してもらおうとすると,下剤を飲んでもらうことになりますので,現実的ではありません。

いつ測定するのか

午前 10 時ごろがもっともよいとされています。
日内変動の中間が午前 10 時ごろだからです。

衣服

裸体または薄着(もしくは測定用衣服)で測定します。
衣服を着たまま測定した場合は,衣服の重さを測定値から差し引きます。

以上のようなルールなのですが,衣服の重さを差し引くのであれば,薄着でなくてもいいはずです。
もしかすると,薄着や測定用衣服の場合は差し引かないのかもしれません。

体重計への乗り方

体重計毎に足の位置は決まっています。
決まりがなければ中央に乗ります。
端の方に乗ると,体重計が振動して測定値が定まらなくなるかもしれません。
また,転倒する恐れもあります。
乗る位置によって測定値が変わるわけではありません。
乗る位置によって測定値が大きく変わるのであれば,体重計が故障しているのかもしれません。

体重計の上では,できるだけ動かないようにし,呼吸も静かに行います。

数値の読み取り

針,あるいは数値が静止してから数値を読み取ります。

測定単位は kg とします。
小数点以下は一桁までとします。
小数点以下二桁以降がある場合は四捨五入します。

特殊の場合

超肥満者では,2 台の体重計に片足つづ乗ってもらいます。

立位保持が難しい場合は,手すり付きの体重計や車椅子に座ったまま測定できる体重計を用意します。

はかりの検定

取引や証明に使うはかりは,検定証印又は基準適合証印が付された特定計量器でなければならず,2 年毎の定期検査を受ける必要があります2)
取引とは,商売の量り売りなどのことです。
証明とは,健康診断書などのことです。

理学療法の通常の臨床ではあまり関係のないことです。
研究で精密な測定値が必要な場合には特定計量器が必要になります。

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おわりに

今回紹介した方法1)は健康診断における測定方法です。
別の測定方法もありえますが,教科書等3-6)ではだいたい同じことが書いてあります。

必ずしもこの方法に従う必要はなく,必要に応じて変更します。
ですが,測定誤差につながる条件は分かったうえで変えるべきであり,なんとなく大丈夫ではいけません。

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参考文献

1)一般定期健康診断検査方法の手引き
2)経済産業省ホームページ
3)千住秀明, 他(編). 理学療法学テキストII 理学療法評価法. 神陵文庫, 1998, pp32.
4)和才嘉昭, 嶋田智明: リハビリテーション医学全書5 測定と評価(第2版). 医歯薬出版, 1994, pp83-84.
5)森山英樹: 形態測定, 15レクチャーシリーズ 理学療法テキスト 理学療法評価学 I. 石川朗(編), 中山書店, 2013, pp33-42.
6)和田高士, 池田義雄: 身体測定の正しい方法-身長,体重,腹囲,体脂肪,血圧などの測定法とその意義. Medical Technology. 2009; 37: 18-22.

2021年4月8日

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