FIMの採点方法(基礎編)〜 まず初めに覚えるところ

はじめに

FIM(Functional Independence Measure 機能的自立度評価法)を使用するにあったって,まず最初に覚えることをまとめていきたいと思います。

最低限のことを覚えてしまえば,後は使いながら覚えていけると思います。
また,学生であれば,臨床実習直前の予習や,国家試験の勉強に役立つと思います。

目次

概要

実際に行なっている ADL(している ADL)での介助量を評価します。

項目数は 運動項目が 13 項目,認知項目が 5 項目あり,全部で 18 項目です。

  • 運動項目
    • セルフケア
      • 食事
      • 整容
      • 清拭(入浴)
      • 更衣(上半身)
      • 更衣(下半身)
      • トイレ動作
    • 排泄コントロール
      • 排尿管理
      • 排便管理
    • 移乗
      • ベッド・椅子・車椅子
      • トイレ
      • 浴槽・シャワー
    • 移動
      • 歩行・車椅子
      • 階段
  • 認知項目
    • コミュニケーション
      • 理解
      • 表出
    • 社会的認知
      • 社会的交流
      • 問題解決
      • 記憶

各項目を 1 点から 7 点の 7 段階で評価します。
最高点は 126 点,最低点は 18 点になります。

対象年齢は 7 歳以上3)です。

採点基準

介助量による採点です。
介助量で採点するということは,自立度(本人がしている量)で採点していることでもあります。
運動項目と認知項目では少し違いがありますが,基本は一緒です。

介助者がその場にいなければ 7 点もしくは 6 点です。
そして,介助者がその場にいれば 5 点以下です。
介助者が手を出さず,監視,指示,準備を行うだけであれば 5 点です。
介助者が手を出していれば 4 点以下で,本人がしている量で 4 点から 1 点となります。

FIM 採点の基本
図 1: FIM 採点の基本

次に,各点の定義(採点基準)です。

7 点:完全自立

一人で,補助具などを必要とせず,安全に,通常の時間で行なっていれば 7 点です。

6 点:修正自立

一人で行うのですが,補助具などを使っていたり,安全への配慮がされていたり,時間がかかっていれば 6 点です。
補助具,安全性,時間の 3 つの要素のうち一つでもあてはまれば 6 点です。
安全への配慮とは,誤嚥しにくい食事を提供することや,滑り止めマットを敷いておくことなどです。
通常よりも時間がかかっていると判断する目安は,通常の時間の 3 倍以上です。

認知項目では,課題をほとんどの場面でしている(軽度の困難をともなう)場合に 6 点をつけます。

5 点:監視・準備

介助者がその場にいますが,介助者の手出しは不要です。
介助者が行うことは,準備,監視,助言,指示,促し,後片付けのいずれかです。
採点する動作と,準備等に相当する動作との区別が重要になります。

認知項目では,口を出すこと自体が介助になってしまう場合など,助言・指示・促しと介助の区別が曖昧なため,上記の定義が使えないことがあります。
そこで,自分で行っている割合が 90% 以上 100% 未満を 5 点とします。

このあとも,「以上」「未満」が出てきますが,「超」「以下」と間違えないよう注意が必要です。

4 点:最小介助

動作全体のうち,自分で行っている割合が 75% 以上 100% 未満なら 4 点です。
3 / 4 以上としても同じです。

認知項目では,5 点の定義の変更にともない,自分で行っている割合が 75% 以上 90% 未満が 4点です。

3 点:中等度介助

自分で行っている割合が 50% 以上 75% 未満(1 / 2 以上 3 / 4 未満)なら 3 点です。

2 点:最大介助

自分で行っている割合が 25% 以上 50% 未満(1 / 4 以上 1 / 2 未満)なら 2 点です。

1 点:全介助

自分で行っている割合が 25% 未満(1 / 4 未満)なら 1 点です。

その他の採点ルール

採点者によって点数が異なる場合は,低い方の点数を採用します。

日内変動があれば低い方の点数を採用します。

各項目の採点基準

まずは各動作の定義(採点対象の動作)が重要です。
採点対象となる動作と,準備等にあたる動作と,採点対象外の動作を明確に区別します。
そうでなければ,点数が変わってしまいます。

採点基準を覚えていれば,理論上は採点可能です。
しかし,「自分で行っている割合」という考え方を当てはめにくい場合があります。
そこで,各項目毎に特別ルールがあります。
この特別ルールは確実に覚えておく必要があります。
また,各点に当てはまる典型例も示されていますので,代表的なものは暗記しておいた方がいいでしょう。

食事

食事が適切に用意された状態で,適当な食器を使って食べ物を口に運ぶ動作から咀嚼し嚥下するまでが含まれます。
食べ物を運ぶ動作には,食べ物まで手を伸ばすこと,食べ物をすくうことも含まれます。

配膳,下膳は採点対象外です。
箸の使用も採点対象外です。

準備の例として,エプロンをかける,その場で食べ物を切り分ける,ソースをかける,食べこぼしの後始末などがあります。

調理場でやわらかな食形態にすることは,嚥下に関する食形態の配慮ですので,6点になります。
もし,嚥下しやすいよう加工するのが食事場面であれば,介助者が準備をしたことになり,5点になります。

最後に食器に残った食べ物をかき集めてもらうところだけ介助してもらっているなら 4 点です。
この場合のように,何か一つだけ介助してもらっているなら 4 点というパターンがあります。
必ずそうなるわけではないのですが,覚えておくといいでしょう。

食事を口に運ぶことと,嚥下することは同じ比重でなく,口に運ぶことの方が主な動作と考えます。
咀嚼や嚥下は可能だが,食べ物を口に運ぶことは全くしないのであれば 1 点です。

整容

口腔ケア,整髪,手洗い,洗顔,髭剃りまたは化粧の 5 項目のみを採点します。

例えば,爪切りは含まれません。

歯磨き粉をつけるのは準備です。

5 項目のうち何項目行なっているかで,自分で行っている割合を計算できます。
5 項目のうち,もともと必要とせず,全く行っていない項目があれば採点から除外します。
例えば化粧をする習慣が全くないのであれば,化粧を採点対象外とし,残りの 4 項目で採点します。

5 項目のうち 1 項目を行っているのであれば,20%(1 / 5)を自分で行っていると考え,25% 未満ですので 1 点です。
2 項目を行っていれば,同じように考え 40% で 2 点,3 項目なら 60% で 3 点,4 項目なら 80% で 4 点です。
下の図のようなイメージがあると分かりやすいかもしれません。

5 項目と点数の関係
図 2: 5 項目と点数の関係

上記の計算方法は,項目毎に「してる / していない」と判定できる場合にしか使えません。
多くの場合,項目毎で自分で行っている割合が異なります。
その場合には,項目毎の点数の平均を出せばいいのですが,概算で構いません。
4 項目は半分を自分でしていて,1 項目は 1 / 4 くらいしか自分でしていないとします。
(0.5+0.5+0.5+0.5+0.25)/ 5 = 0.45 と計算してもいいのですが,計算しなくても 25% 以上 50%未満になるのは確実なので,2 点になります。

ざっくりと足すだけでいい場合もあります。
例えば,髪が短くて整髪を行わないため,4 項目で採点するとします。
4 項目のうち 1 項目だけで介助が必要で,残りの 3 項目は介助なしで行っているのであれば,自分でしている割合は,残りの 1 項目の介助量に関わらず,75% 以上になることは確実ですので,4 点になります。

この後も,採点する動作をいくつかの項目に分け,足し合わせたり,平均を出したりすればいいという話がでてきますので,同じように考えてください。
ただし,気をつけなければならないことがあります。
いくつかの項目に分けて,低い方の点数をとるというパターンも出てきます。
採点する動作を細分化した時に,足すのか,低い方をとるのかを覚える必要があります。

清拭

身体を洗い,すすいで,拭いて乾かすところまでを採点します。

風呂おけ,シャワー,スポンジ浴,ベッド浴のいずれでも構いません。

身体を10ヵ所に分けて採点します(図 3)。
洗う範囲に,頭部と背中は含まれません。

清拭で評価される 10 ヶ所
図 3: 清拭で評価される 10 ヶ所

10 ヶ所ですから,1 ヶ所 10% として採点します。
例えば,7 ヶ所を自分で洗っていれば,70%で 3 点です。

シャワーの温度調節は準備です。

洗うことは乾かすことよりも重視されます。
例えば,80% 洗うが,すすぎと乾かしはすべて介助者が行うのなら 3 点です。

更衣(上半身・下半身)

上半身の更衣は腰より上の更衣です。
下半身の更衣は腰より下の更衣で,ズボンまたはスカート,パンツ(下着),靴下,靴が含まれます
義肢,装具,自助具の着脱も含みます。

着ることと脱ぐことが採点対象です。

服の取り出し,服をしまうことは,準備,後片付けになります。

普段着ている服で採点します。
ただし,社会的に受け入れられる衣服でなければなりません。

入浴前後の更衣は特殊な状況での更衣と考えて採点対象外とします。
しかし,入浴前後しか着替えない場合は,入浴前後の更衣を採点します。

動作を分解し,分解した動作のうちいくつしているかで採点できます。
着衣と脱衣で分けることができます。
かぶりシャツであれば,右腕を通す,左腕を通す,頭を通す,裾を引き下げるの 4 動作に分けます。
下半身では,ズボンまたはスカート,パンツ,靴下,靴の 4 動作に分けることができます。

ボタンがとめられないからかぶりシャツを着ているとしても,減点はされず,かぶりシャツで採点します。
一方で,改造した服であれば減点します。

義肢,装具,自助具の着脱が介助であっても 5 点までしか下がりません。
おむつは装具と考えます。

市販のベルクロ留めのスニーカーを使うことは減点の対象とはなりません。
「医療費などの特別な負担がかからないものを使うことでは減点にならない」と覚えておくとよさそうです。

自宅で,尿器を使いやすいという理由で病院用寝間着しか着ていなければ,社会的に受け入れられる衣服の着脱を行なっていないことになり 1 点です。

トイレ動作

服を下げる,拭く,服を上げるの 3 動作です。
生理用品の扱いも含まれます。
おむつに排泄している場合,おむつを取り替える際の,服を下げる,拭く,服を上げるの 3 動作を採点します。

拭くための紙を渡してもらうことは,準備にあたります。

水を流す動作は含まれません。

採点では, 3 動作のうちいくつ行なっているかで採点できます。
排尿と排便で差があるときは,低い方の点をつけます。
夜間は介助量が増える場合,これも低い方の点をつけます。

ウォシュレットは補助具ではないと考えます。

ズボンのジッパーの上げ下ろしだけを手伝ってもらっているのなら 4 点です。
拭いたり,着衣を直すときにバランスを崩さないよう支えてもらっているのなら 4 点です。

トイレへの移動,トイレへの移乗,排尿管理,排便管理との違いに注意します。

排尿管理・排便管理

排尿・排便のコントロールが採点対象で,排尿コントロールに必要な器具や薬剤の使用も含まれます。
コントロールするということは,尿や便を出したいときに出し,出したくないときには出さないということです。
もう少し具体的には,括約筋を緩めることが採点する動作です。

採点は,「失敗」と「介助量」の二つの側面で行います。
その二つの得点の低い方をとります。

失敗とは衣服やシーツなどを汚してしまうことです。
尿や便が意図せずに出てしまう失禁は採点対象ではありません。
おむつに失禁をしても,そのおむつの処理を自分で行っていれば,失敗ではありません。
便を受けたおむつの取り替えの介助をしてもらっているなら,失敗とみなします(特別ルールです)。

排尿・排便の失敗の採点はその頻度により行われます(表 1)。

得点失敗頻度
7失敗しない
5月 1 回未満
4週 1 回未満
31 日 1 回未満
2毎日
表 1: 排尿・排便の失敗の採点

毎日失敗があっても 1 点にはなりません。

介助量による 4 〜 1 点の採点は,分かりやすい例があまりありません。
尿器を支えてもらってあとは自立していれば 4 点です。

排便の介助には,坐薬の挿入,摘便,排便中に身体を支える,おむつを替えるなどがあります。

常におむつの中に排泄し,取り替えの依頼はできず,取り替え時に協力もなければ 1 点です。

自尿と排尿介助(導尿など)の比率による採点基準もあります(表 2)。

得点排尿介助
7なし
5週 1 回以下
41日1回未満,または,毎日:自分でする回数 > してもらう回数
3毎日:自分でする回数 = してもらう回数
2自分でする回数 < してもらう回数
1毎日:してもらうのみ
表 2: 導尿など,排尿の介助の採点基準

排尿の失敗が週 1 回未満,月 1 回以上で,尿器を準備してもらえればあとは自立しているとします。
失敗に関しては,表より 4 点です。
介助量では準備だけですので 5 点です。
低い方をとることになっていますので,4 点になります。

坐薬の使用に関する採点基準もあります(表 3)。

得点使用頻度
7坐薬を使っていない,または,自分で坐薬を使っている(月2回以下)
6自分で坐薬を使っている(月2回より多い)
5坐薬を挿入してもらっている(週2回以下)
4坐薬を挿入してもらっている(隔日または毎日)
表 3: 坐薬の使用に関する採点基準

座薬を入れてもらう頻度がどんなに多くても,4 点までしか下がりません。

人工透析で自尿がないなら7点です。

72時間以内に排便がない場合は,いったん未評価とし,その後の排便時に採点します。

移乗:ベッド・椅子・車椅子

ベッド,椅子,車椅子の間での移乗です。
臥位から起きあがって座位になり,立ち上がり,椅子または車椅子に移る動作全体を採点します。
主な採点対象はある座位から違う位置の座位に移る部分です。
起き上がりの比重は少なくなります。

往復を採点します。
往復で点数が違う場合には,低い方の点数をとります。

介助量による採点の典型的なパターンがあります(表 4)。

得点介助量
7何も使わずに乗り移る。
6手すりを使って一人で乗り移る。
5助言されつつ一人で乗り移る。
4もしものときに支えてもらうよう,手を触れていてもらう。
3立ち上がる際に引き上げてもらう。
2立ち上がりと身体を回すのと,ともに介助してもらう。
1自分では何もしない,または二人介助
表 4: 移乗の得点の典型例

このパターンは,次のトイレ,浴槽・シャワーでの移乗の採点でも使えます。

車椅子の位置を整えることは準備にあたります。

ベッドからの起き上がりが完全介助で,乗り移りが完全自立であれば 3 点です(乗り移りの方が比重が大きい)。

移乗:トイレ

便器に移ることおよび便器から離れることです。
トイレに近づくまでのことは移動であって,移乗ではありません。

ベッド・椅子・車椅子での移乗と,採点の基本は同じで,表 4 が使えます。

便座を高くする改造が行われていれば 6 点ですが,病院のすべての便座が一律に高く改造されているのであれば 7 点です。
その一方で,たまたまトイレに手すりがついていて,それにつかまっている場合でも,手すりを使っていれば6点です。

ベッド脇のポータブルトイレで自立しているのなら 6 点です。

差し込み便器を使っていて移乗を行わないのであれば 1 点です。

移乗:浴槽・シャワー

浴槽の出入り,またはシャワー椅子への移乗が採点対象です。
浴槽をまたぐ動作の往復と,しゃがんで風呂に浸かる動作,立ち上がって風呂から上がる動作があります。

浴槽のそばまでの移動は採点対象外です。

移乗の採点は共通の表(表 4)が参考になりますが,動きが少し異なるため,分かりにくくなっています。
持ち上げてもらえば 3 点,回るのも手伝ってもらえば2 点です。

浴槽をまたぐときに片足だけを介助してもらうのなら 4 点で,両足を介助してもらうのなら 3 点です。

浴槽に入れず,シャワーのみで済ますことで点数が上がることがあります。
矛盾していますが,FIM ではしている ADL を評価するのが原則です。

移動:歩行・車椅子

歩行あるいは車椅子のどちらかで,主に行なっている方で評価します。

入院時と退院時で採点する場合,退院時に主に用いている手段で入院時の点数をつけます。
入院時は車椅子で,退院時は歩いているなら,入院時の点数は歩行でつけます。
ですので,入院時には歩行と車椅子の両方の点数をつけておきます。

平地での移動を評価します。

採点では介助量だけでなく移動距離によっても採点します。

まず 50 m 移動しているのかを考えます。

50 m を,介助者なしで,補助具などを必要とせず,安全に,通常の時間で移動していれば 7 点です。

50 m を介助者なしで移動するが,杖や車椅子を使っていたり,安全への配慮がされていたり,時間がかかっていたりすれば 6 点です。

車椅子は電動でもかまいません。

50 m を歩いているが,介助者が必要な場合は,以下のフローチャートにしたがって採点します。

介助者ありで50 m 移動している場合の採点の流れ
図 4: 介助者ありで50 m 移動している場合の採点の流れ

50 m は歩いていない,あるいは,50 m 歩くときに自分でしている割合が 1 / 2 未満であれば,以下のフローチャートにしたがって採点します。

15 m の移動での採点の流れ
図 5: 15 m の移動での採点の流れ

15 m なら自立して移動していれば 5 点です。
15 m の場合は,歩行補助具を使っていても,介助者がいなければ 5 点です。

自分で行う割合が 1 / 2 未満であれば,15 m の移動で採点します。
50 m は移動していないけど 15 m は移動しているという場合,介助量が少なくても,3 点や 4 点はつきません。
また,15 m を移動するのに,監視や助言等が必要な場合は 2 点です。
15 m 以上を移動することがなければ 1 点です。

歩行での介助量と点数の典型例があります。
よろけたら支えようと介助者が手を触れている状態で 50 m 以上歩いていれば 4 点です。
介助者に支えてもらいながら 50 m 以上歩いているなら 3 点です。
介助者に支えてもらっても 50 m 以上歩くことはないが,15 m 以上なら歩いていれば 2 点です。
2人介助で歩いているのなら 1 点です。

車椅子での介助量と点数の典型例もあります。
狭い角を曲がるときや段差のみ介助してもらっても 50 m 移動していれば 4 点です。
50 m 移動しているけど,まっすぐしか進めず,曲がるたびに介助してもらっていたら 3 点 です。

這って自立しているなら 5 点で,6・7 点はつけません。
徘徊を監視するために,警報機を身につけていれば 6 点で,介助者が一緒に歩いていれば 5 点です。

移動:階段

屋内の 12 〜 14 段の階段を昇降することです。
12 〜 14 段は 1 フロアーの昇降に相当します。

階段昇降を行う機会がないことがあります。
その場合は,階段昇降を検査として行わせてもかまいません。
している ADL ではなく,できる ADL をテストしていいのは,階段だけです。

12 〜 14 段の階段がない場合は,4 〜 6 段の階段を反復して昇降するのを採点してもかまいません。

1 段の高さが低くても,12 〜14 段で評価し,12 〜 14 段以上の段数では評価しません。

上りと下りで点数が異なれば,低い方の点数をとります。

エレベーターや階段昇降機は補助具としては捉えません。
エレベーターで自力で昇降していても6点にはなりません。

採点は,「移動:歩行・車椅子」と似ています。
歩行・車椅子での 50 m を階段の 12 〜 14 段に,15 m を 4 〜 6 段に置き換えます。

12 〜 14 段の階段昇降を介助者なしで,補助具などを必要とせず,安全に,通常の時間で行っていれば 7 点です。

12 〜 14 段の階段を介助者なしで昇降するが,補助具を使っていたり,安全への配慮がされていたり,時間がかかっていたりすれば 6 点です。
手すりを必要する場合が,典型的な 6 点です。

12 〜 14 段の階段で,介助者が必要な場合は,以下のフローチャートにしたがって採点します。

介助者ありで12 〜 14 段昇降している場合の採点の流れ
図 6: 介助者ありで12 〜 14 段昇降している場合の採点の流れ

12 〜 14 段の昇降は行っていない,あるいは,12 〜 14 段の昇降で自分でしている割合が 1 / 2 未満であれば,以下のフローチャートにしたがって採点します。

4 〜 6 段の昇降での採点の流れ
図 7: 4 〜 6 段の昇降での採点の流れ

4 〜 6 段を自立して昇降していれば 5 点です。

12 〜 14 段の昇降を自分で行う割合が 1 / 2 未満であれば,4 〜 6 段 の昇降で採点します。
12 〜 14 段の昇降は行っていないけど 4 〜 6 段 の昇降は行っているという場合,介助量が少なくても,3 点や 4 点はつきません。
4 〜 6 段 の昇降すら行っていなければ 1 点です。

12 〜 14 段の昇降で,介助者にバランスをとってもらっていたら 4 点です。
12 〜 14 段の昇降で,介助者に支えてもらったり,次の段に足を進めてもらっていたら 3 点です。

理解・表出

理解とは,聴覚あるいは視覚によるコミュニケーションの理解です。
相手の言ったことを耳に入れ,それを日本語として聞き取るところまでが採点範囲です。
聞き取った内容をどのように解釈・判断するかは含みません。

表出とは,はっきりとした音声,あるいは音声によらない言語表現です。
書字または会話増幅装置も含みます。
自分が言おうとしたことを表出し,それが相手に伝わるところまでが採点範囲です。
何を表出しようと考えるかは含まれません。

被検者の母国語で評価します。

7・6 点と 5 点以下では聞き取る / 表出する内容が変わります。

7・6 点では,複雑・抽象的な内容で採点します。
複雑・抽象的な内容としては,集団での会話,テレビ・新聞の話題,ドラマの筋,冗談,金銭問題などがあります。

5点以下では,基本的欲求に関する内容で採点します。
基本的欲求に関する内容とは,食事,飲み物,のどの渇き,排泄,清潔,睡眠などに関することです。

理解・表出の介助例を列挙します。

  • ゆっくり話す / 話させる
  • 非常に大きな声で話す / 話させる
  • 繰り返す / 聞き返す
  • 強調する / 念を押す
  • 文字で書く(筆談)
  • ジェスチャー
  • Yes-No を用いる
  • 内容を推察する

理解・表出度と介助量から総合判断します。

理解・表出度では,結果的に何パーセント理解・表出したのかを評価します。
うまく理解・表出できたのは10 回のうち何回かと数えます。
介助量では,理解 / 表出してもらうために,介助者が使った労力や手間を評価します。

認知項目の採点では,5 点は 90% 以上 100% 未満,4 点は75% 以上 90% 未満で,運動項目の採点とは異なりますので,注意が必要です。

採点の典型例を挙げていきます。

複雑・抽象的な内容を理解・表出するのに問題がなければ 7 点です。
複雑・抽象的な内容を理解・表出するのに手助けはいらないが,軽度の困難を伴ったり,大きめの声で話すなどの配慮が必要であったりすれば 6 点です。

複雑・抽象的な内容を理解・表出するのに手助けが必要なら,5 点以下です。
複雑・抽象的な内容を理解・表出するのに手助けが必要でも,基本的欲求に関する理解・表出であれば問題がなければ 5 点です。
また,大きめの声で話すなどの配慮が必要であっても 5 点です。

完全な文での会話を行なっているが,難しい敬語や複雑な構造の文は使わないのなら 4 点です。

「痛みますか?痛い?」などのように,文ではなく短い句を混ぜて話す必要があれば 3 点です。

一語のみ,ジェスチャーのみであったり,Yes / No で答える会話の限定されていたりしたら 2 点です。

理解してもらうために,毎回非常に大きな声で話していれば 1 点です。

社会的交流

治療の場,あるいは社会生活の場において,他人と折り合っていくことです。
自分の要求とともに,他人の要求をどう処理するかということであり,相手に迷惑をかけているか,自分の言動が人にどう思われているかがわかることです。

交流機会が何回あって,そのうち適切に交流しているのは何回かを考えて採点します。
適切な交流の割合を 5 〜 1 点の採点基準にあてはめます。

適切ではないとする行為の例です。

  • 治療を拒む
  • かんしゃく
  • 暴力
  • 悪態
  • 挨拶を無視する
  • 車椅子で暴走する
  • 過剰な泣き笑い
  • 過度に引きこもる

6 点の分かりやすい例は,投薬により適切な交流を保っている場合や,新しい環境に適応するのに時間がかかる場合です。
わずかな困難を伴うときも 6 点なのですが,次の 5 点との区別が曖昧です。

文献には,他にも採点例が載っていますが,なぜその点数になるのかが分かりにくいため,ここでは省きます。

問題解決

日常生活上の,金銭的,社会的,個人的な出来事に関して,合理的かつ安全にタイミングよく決断し,問題を解決するための行動を開始し,継続し,自分で修正していくことです。
自分で修正するというのは,人に頼むことも含まれます。

7・6 点は複雑な問題の解決を採点します。
複雑な問題とは,退院計画に参加して計画を立てる,薬を自己管理する,対人トラブルの処理などです。
採点基準は定義通りです。

複雑な問題の解決に手助けが必要であれば 5 点以下になります。

5 点以下では,日常の問題をどう解決しているかを採点します。

日常の問題の解決とは,こぼした飲み物の処理を頼む,一人では危ないことを自覚して介助者を呼ぶ,歯ブラシの使い方がわかる,などです。

日常生活で遭遇する問題のうち,何%を自分で解決しているかを評価し,5 〜 1 点の採点基準にあてはめます。
社会的交流の採点と同じ流れです。

日常の問題を全て,指示や促しなどもなく,自分で解決していても 5 点です。

記憶

日常行うことを覚えている,よく出会う人がわかる,他人の依頼を実行する,の 3 つを採点します。

他人の依頼を実行するとは,その間に依頼を覚えているということです。
また,3 段階の無関係な命令・指示を覚えて実行することが想定されています。

3要素のうち 1 要素をしているなら 33% で 2 点, 2 要素をしているなら 67% で 3 点です。

メモリーノートを用いることは 6 点です。
さて,記憶に問題のない健常者でも,手帳などを使いますが,手帳がなくても,日常行うことは概ね覚えているものです。

メモリーノートを使うことを思い出させてもらっていれば 5 点です。

よく出会う人を認識し,日課を思い出せるが,命令に従えるのは 1 段階までであれば 4 点です。
これは,採点の定義に則って計算することができます。
前述の通り,2 要素はできているので 67 %はできています。
そして,3 段階のうち 1 段階の命令に従えるのですから,1 要素 33% の 1 / 3 である,11% はできていると考えます。
67% と 11% を足して 78% ができているので,4 点です。

おわりに

最低限覚えることでも結構な量になってしまいましたが,これだけ覚えていればある程度は実用的に使えるようになると思います。

国家試験にもなんとか対応できるはずです。
余裕があれば,文献 2 などの採点の具体例に取り組めばいいと思います。

こちらもおすすめ

理学療法士国家試験問題 解答と解説(FIM 編)

Barthel Index(バーセルインデックス)の詳細

スポンサーリンク

参考文献

1)千野直一(編): 脳卒中患者の機能評価 SIASとFIMの実際. シュプリンガー・フェアラーク東京, 1997, pp61.
2)千野直一, 椿原彰夫, 他(編著): 脳卒中の機能評価-SIASとFIM[基礎編]. 金原出版, 2018, pp93.
3)永井将太, 園田茂: Functional Independence Measure(FIM):機能的自立度評価法, 臨床評価指標入門 適用と解釈のポイント. 内山靖, 小林武, 他(編), 協同医書出版社, 東京, 2013, pp271-278.

2021 年 1 月 21 日

コメント

タイトルとURLをコピーしました